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6.ラストスパート?
翡翠山トラバース(前編)
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神太「翡翠山…本当にここなのか!?」
どんよりとした暗い曇り空のもと針底湿原を進んでいた二人だが、抜けたと同時に天候が吹雪に変わっていた。
神太「視界が全くないぞ!!どうするんだこれ!!」
友真「そう思うだろ?もう少し待てば面白いものが見れるぞ」
神太「え!?なんだって?風が強くて良く聞こえないぞ!!」
と叫んだ瞬間、ピタリと風が止んだ。
神太「風が!?急に消えた…!!」
友真「空を見てみろよ」
神太「空?」
神太が空を見上げるとさっきまで目が開けられないほど降っていた雪が完全に止んでいた。
それどころか雲に穴が空いた?と思ったら急速に広がっていき、10秒と経たずに快晴になった。
神太「うぉおおお!すげぇえええ!!天気が一瞬で変わったぞ!!」
友真「リアクションが派手で嬉しいよ」
太陽が差して雲が無くなったことにより、山の全貌が見えるようになった。
神太「これが翡翠山…眩しっ!!」
突如目の前に表れたその山は氷と雪のミックスで形成されており、太陽が当たると光が乱反射して目が開けられないほどに光輝いていた。
神太はあまりの眩しさに目を背けた。
友真「これがギミックなのさ」
神太「え?どういうこと?」
友真「ここでは一定時間おきに天候が晴天と吹雪で入れ替わるギミックがあるんだ」
友真「晴天時には凍った山肌が反射し、眩しさで視界が奪われる」
友真「また雪が凍ることで足が滑ってまともに進めなくなる」
神太「うへぇ…」
友真「吹雪時には雪で視界が奪われる」
友真「また言うまでもなく猛スピードで降り続く雪に足が奪われてまともに進めなくなる」
神太「うはぁ…」
友真「という、このシャドウワールド内では最も高難易度のエリアになっているな」
神太「それは…」
友真「うん」
神太「どうやって進むんだ?」
友真「道具がないとまずムリだろうな」
神太「おぃいいいいい!!折角ここまで来たのに!!!」
友真「まぁ待て。俺に一応考えがある」
友真「神太は四次元クーラーボックスによって好きな道具が出せるという話だったな?」
神太「なんだよ四次元クーラーボックスって…」
神太「まぁ似たようなものだが…登山なんてやらないならそういった類いの道具は出せないぞ」
友真「それはわかってる」
友真「自分を縛れるような道具は何か出せないか?」
神太「自分を縛るって…!いやそんな性癖ないから!!」
神太「持ってないって!!」
友真「すまん、言い方が悪かったわ」
必死で言い訳をする神太を見ながら友真は半笑いで話を続けた。
友真「ビニール紐でも何でもいいんだ」
友真「長くて巻けるような道具あるか?」
友真「ただ出来るだけ痛くない方がいいな」
神太「言い方!!まぁビニール紐ならある」
神太「あと、縄跳び用の縄も確かあるな」
友真「お、いいじゃないか。それにしよう」
友真「あと、自分が乗れる板のようなものあるか?」
神太「板?んー…なんだろ…まな板は乗れないだろうし…」
神太「シンプルに風呂桶とか?」
友真「それだ!全部出してくれ」
神太「一体何するのさ…」
友真「神太を乗せて風呂桶ごと俺が引っ張り上げる」
神太「は!?」
神太「いやいや、無理だろう!!」
友真「かなりキツいが…いけないことも無いだろうよ」
友真「忘れたのか?俺はギミックの影響を受けないんだ」
神太「あっ…確かに。ということはどうなんだ?」
友真「勘が悪いな…」
友真「俺から見えてる世界では常に曇りに見えている」
友真「路面の凍結も雪も関係ないんだ」
神太「つまり…?」
友真「神太が晴天でも吹雪でも、引っ張っていけば関係なく正しいルートに誘導できる」
友真「体力面の心配はあるが、神太を自由に歩かせて遭難するよりはましだろ?」
神太「なるほど…」
神太「それなら単純に俺を紐で縛って正しい道に誘導してくれればいいんじゃないか?」
友真「それが出来たら好ましいのだけれど」
友真「雪と氷の混在した坂道を道具無しで登れるかやってみな?」
神太「お、おう…」
神太「うわっ!!!」
神太は足のグリップが効かず、盛大にこけた所を辛うじて肘で着地した。
神太「痛ぇ…くそぉ~!!」
神太「坂道でなくてもツルツルじゃんか!」
友真「まともに歩けないだろ?」
友真「だから選択肢はそれしかないんだ」
神太「ぐぬぬ…」
神太「じゃあ…無理ない範囲で頼むよ」
友真「仕方ないな」
友真は冗談ぽく笑った。
友真「じゃあ、始めるぞ。道具を出してなるべく自分を風呂桶に固定するんだ」
神太は言われたとおり風呂桶、縄跳び、そして固定用のガムテープをクーラーボックスから取り出して固定してみせた。
神太「うわ!また吹雪いてきたぞ!!」
友真「行くぞ!ちゃんと捕まってろ!!」
神太は自分に巻かれた縄跳び用の縄にしっかりしがみついた。
傾斜がつくと上げられなくなるので迂回しつつゆっくりではあるが、友真は神太ごと山を登り始めた。
→18話につづく
どんよりとした暗い曇り空のもと針底湿原を進んでいた二人だが、抜けたと同時に天候が吹雪に変わっていた。
神太「視界が全くないぞ!!どうするんだこれ!!」
友真「そう思うだろ?もう少し待てば面白いものが見れるぞ」
神太「え!?なんだって?風が強くて良く聞こえないぞ!!」
と叫んだ瞬間、ピタリと風が止んだ。
神太「風が!?急に消えた…!!」
友真「空を見てみろよ」
神太「空?」
神太が空を見上げるとさっきまで目が開けられないほど降っていた雪が完全に止んでいた。
それどころか雲に穴が空いた?と思ったら急速に広がっていき、10秒と経たずに快晴になった。
神太「うぉおおお!すげぇえええ!!天気が一瞬で変わったぞ!!」
友真「リアクションが派手で嬉しいよ」
太陽が差して雲が無くなったことにより、山の全貌が見えるようになった。
神太「これが翡翠山…眩しっ!!」
突如目の前に表れたその山は氷と雪のミックスで形成されており、太陽が当たると光が乱反射して目が開けられないほどに光輝いていた。
神太はあまりの眩しさに目を背けた。
友真「これがギミックなのさ」
神太「え?どういうこと?」
友真「ここでは一定時間おきに天候が晴天と吹雪で入れ替わるギミックがあるんだ」
友真「晴天時には凍った山肌が反射し、眩しさで視界が奪われる」
友真「また雪が凍ることで足が滑ってまともに進めなくなる」
神太「うへぇ…」
友真「吹雪時には雪で視界が奪われる」
友真「また言うまでもなく猛スピードで降り続く雪に足が奪われてまともに進めなくなる」
神太「うはぁ…」
友真「という、このシャドウワールド内では最も高難易度のエリアになっているな」
神太「それは…」
友真「うん」
神太「どうやって進むんだ?」
友真「道具がないとまずムリだろうな」
神太「おぃいいいいい!!折角ここまで来たのに!!!」
友真「まぁ待て。俺に一応考えがある」
友真「神太は四次元クーラーボックスによって好きな道具が出せるという話だったな?」
神太「なんだよ四次元クーラーボックスって…」
神太「まぁ似たようなものだが…登山なんてやらないならそういった類いの道具は出せないぞ」
友真「それはわかってる」
友真「自分を縛れるような道具は何か出せないか?」
神太「自分を縛るって…!いやそんな性癖ないから!!」
神太「持ってないって!!」
友真「すまん、言い方が悪かったわ」
必死で言い訳をする神太を見ながら友真は半笑いで話を続けた。
友真「ビニール紐でも何でもいいんだ」
友真「長くて巻けるような道具あるか?」
友真「ただ出来るだけ痛くない方がいいな」
神太「言い方!!まぁビニール紐ならある」
神太「あと、縄跳び用の縄も確かあるな」
友真「お、いいじゃないか。それにしよう」
友真「あと、自分が乗れる板のようなものあるか?」
神太「板?んー…なんだろ…まな板は乗れないだろうし…」
神太「シンプルに風呂桶とか?」
友真「それだ!全部出してくれ」
神太「一体何するのさ…」
友真「神太を乗せて風呂桶ごと俺が引っ張り上げる」
神太「は!?」
神太「いやいや、無理だろう!!」
友真「かなりキツいが…いけないことも無いだろうよ」
友真「忘れたのか?俺はギミックの影響を受けないんだ」
神太「あっ…確かに。ということはどうなんだ?」
友真「勘が悪いな…」
友真「俺から見えてる世界では常に曇りに見えている」
友真「路面の凍結も雪も関係ないんだ」
神太「つまり…?」
友真「神太が晴天でも吹雪でも、引っ張っていけば関係なく正しいルートに誘導できる」
友真「体力面の心配はあるが、神太を自由に歩かせて遭難するよりはましだろ?」
神太「なるほど…」
神太「それなら単純に俺を紐で縛って正しい道に誘導してくれればいいんじゃないか?」
友真「それが出来たら好ましいのだけれど」
友真「雪と氷の混在した坂道を道具無しで登れるかやってみな?」
神太「お、おう…」
神太「うわっ!!!」
神太は足のグリップが効かず、盛大にこけた所を辛うじて肘で着地した。
神太「痛ぇ…くそぉ~!!」
神太「坂道でなくてもツルツルじゃんか!」
友真「まともに歩けないだろ?」
友真「だから選択肢はそれしかないんだ」
神太「ぐぬぬ…」
神太「じゃあ…無理ない範囲で頼むよ」
友真「仕方ないな」
友真は冗談ぽく笑った。
友真「じゃあ、始めるぞ。道具を出してなるべく自分を風呂桶に固定するんだ」
神太は言われたとおり風呂桶、縄跳び、そして固定用のガムテープをクーラーボックスから取り出して固定してみせた。
神太「うわ!また吹雪いてきたぞ!!」
友真「行くぞ!ちゃんと捕まってろ!!」
神太は自分に巻かれた縄跳び用の縄にしっかりしがみついた。
傾斜がつくと上げられなくなるので迂回しつつゆっくりではあるが、友真は神太ごと山を登り始めた。
→18話につづく
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