徒然なるままにしてたら玉の輿になってました

猫桜

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悠理、玉の輿にのる

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何故、こんなことになった?
悠理は東宮絢人あやひとを前に立ちつくしていた。

”それでっていった?それでって・・・聞き間違いじゃないよね。男性だから東宮妃になったところで、皇子を産むことはできないと暗に匂わせたのをこれ以上、どう説明しろと?解ったよ、してさしあげましょうとも“

と悠理が口を開こうとした寸前に東宮は

「東宮妃にはなれないといわれるが、後継などはお気にせずとも皇嗣という手段もあります」

「はぁ・・・そうですか・・・」

東宮に先手を打たれた感に悠理は何も言えなくなった。
悠理は逃げ道を塞がれていく気がする。

「これでもまだ東宮妃にはなれないとおっしゃるか」

おっしゃるもなにも・・・悠理は啞然とした。
そこまで用意周到にお膳立てしてたのかと呆れる。
これでも東宮妃になれないのかと問われても悠理は頷くことも直ぐに反論することもできない。
ただ、貴成がしつこいくらいに叫んでいた、「出家」と「浄土」の文字がお互いに手を取り合い、悠理の頭の中でスキップしているだけだ。

”・・・このままじゃマジでヤバいんですけど・・・回避するために何かないか、ご宣託作戦?・・・”

悠理は考えに沈んだ。

「懇意にしているその道の方から、父が聞いたところによりますと、東宮妃になってはならぬとの御告げがあったそうにございます」

悠理:ここでよよよと泣き崩れる。

「胡散臭すぎる。宰相と告げた者を連れて来てください」

東宮:眉間に皺を寄せ、厳しい表情となる。

「えっ?」 

「詮議した後、謀ったとなれば断罪とします。東宮妃となられる貴方と私を騙したとなれば、終生投獄、余罪があれば死罪。たちの悪い輩は罰します。宰相も宰相です。一国の宰相ともあろう人物が情けない。宰相をここへ」

東宮:苛立ちを隠せず、付人に命を下す。

「と、東宮、これはどうしたことで・・・」

「宰相の任、この場にて解く」

貴成:東宮の前でわけも分からず解任される。

悠理:作戦ミスに呆然と立ちつくす。

”だぁーっ、詰んだ・・・“

あわてて悠理は想像を掻き消した。
収拾がつかなくなること請け負いだ。
それに、そんなことになれば、父、貴成の心臓が持たない。
連日連夜の残務処理と東宮のムチャ振りでいい加減に弱っているだろう心身にとどめを刺すこと間違いない。
悠理は頭を抱えたくなった。
視界の端では、物凄い形相をした細雪が部屋の隅からこちらを睨んでいるのが見えた。
私の老後を潰さないでくださいませ!と口パクで言っている。

”細雪、こんな時まで・・・ご宣託はダメだ“

八方塞がりとはこの事かと悠理はちらりと東宮の背中を見た。
威圧感が半端ない。
適当なことを言ったら即座に問い詰められ、叱られそうだ。

“・・・小手先に騙されてくれそうにないよなぁ・・・“

悠理は意を決し、声を振り絞っていった。

「・・・想う人がいます」

東宮が感情のない声で問う

「想う人と言われたか」

「はい。あることで知り合い、今回の事件でも一緒にいた方です。いつも飄々として優しくて頼りになるけど・・・人の気持ちなんか全然わかってない唐変木の鈍感で心の内を見せてくれない酷く連れないひとです」

「唐変木の鈍感・・・」

断られることにプライドが傷ついたのか、苦虫を噛み潰したような東宮の声がした。
少しばかり大袈裟に言ったほうがいいだろうと悠理は声を張りつめさせた。

「あくまでも私を東宮妃に望まれるのなら、出家します。出家し、その人を忍び、念仏三昧でひっそりと暮らします。出家した私を無理にも還俗させるのであれば、その時は・・・想いを胸に浄土へ旅立たせていただきます」

この話の流れで出家と浄土がでてくるなど考えていなかったのか東宮は虚をつかれ、口ごもった。

「出家、浄土・・・ぐっ」

「東宮殿下、この通りです。何卒、東宮妃はご容赦を」

ここは押しどころと悠理は額づいて許しを請うた。
東宮が踏み出した気配がする。
頭を下げている悠理の目に爪先がり、東宮が跪いた。

「ククッ・・・ここで出家し、念仏三昧とか浄土とか・・・ククッ・・・相変わらず君という人は」

東宮は楽しそうに声をひそめて笑った。
弾かれたように顔を上げた悠理は東宮を見た途端、目を見開いき、口をパクパクとさせた。

「二度も私の前から消えたのに・・・つれないのはどっちなんだろうね、ユーリ」

その台詞を聞くや悠理は下げていた頭をガバリと上げた。

「ハ、ハルミヤ・・・」

ものも言えずに固まっている悠理にハルミヤこと東宮、絢人は悪戯が成功した子供のようにニヤリと笑ったのだった。



「東宮御所で会ったときに話してくれれば良かったと思うんだけど」
悠理は恨めしげに絢人を横目にする。

「悠理には驚かされてばかりだったからね」

絢人が拐うように悠理を膝に乗せ、

「あの朝も後処理の指示を出し、部屋に戻ってみると悠理はいなかったし・・・どれだけ私が焦ったか」

嫌味っぽく言って笑う。

「少しばかり意趣返ししても、罰は当たらないと思うけど」

「うっ、」

「さて、悠理、返事は?」

「・・・」

一騒動も二騒動もあるだろうが、女装し女性として東宮妃になるのではなく、ちゃんと男性として隣に立てる。
上手くすれば、これを機に波風を立てることなく、男性として生きてもいける。
東宮妃として息が詰まりそうになったら、ユーリとしてハルミヤと一緒に御所を抜け出し、つかの間、冒険者をすればいい。
何より好きになった相手から求婚されているのだ。
ハッピーエンドで終わりそうだ。
部屋の隅に目を向けると、涙を浮かべた細雪が両手を合わせ、天に祈っている。

”ああ、あれきっと、悠理様が東宮妃になれば私の老後は安泰、悠々快適バラ色の老後です。神様、仏様、ご先祖様ありがとうございます“

とか言ってるんだろうと思うと、悠理は一人笑いを洩らした。
悠理は声をひそめ尋ねた。

「これって、知らないうちに玉の輿になってたってこと?」

絢人は微笑み、口づけで返事を返したのだった。















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