転生聖女は攻略先を絞りたい 逆ハーレムから始まる異世界性活

在江

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予想の斜め上だった 2 *

 背後へ回り込まれ、否応なしに髪を払われる。

 パノレアは、わたしの抵抗に気づかない様子で、周囲にシャボン玉が飛ぶほど、たっぷりとした泡を立て、ゴシゴシと背中を擦り出した。

 「擦っていて、気持ちの良い肌ですね~」

 上機嫌の声にも、撫でさする手にも、悪意は感じない。
 世話係の神官は、壁際に下がってこちらを見守る風である。
 わたしに危害が加えられるのを感じたら、動いてくれると期待したい。

 「パノレア‥‥は、ブルー師長と婚約、結婚したのかしら?」

 物理的に距離を取れない代わりに、丁寧口調で恐る恐る探りを入れる。

 「とんでもない。師長は独身ですよ。英雄の上にあの見た目ですから、縁談山積みですけどね。職場でもサリディア先輩とか‥‥ゲフンゲフン‥‥私はむしろ遠くから堪能したい性格で」

 思い出した。
 悪役魔術師の名前は、サリディアだった。
 パノレアは、悪役ではない。

 ほっとしたところで、脇の下から両手が生えた。

 「はあっ。何て柔らかいの。聖女様は、おっぱいまで優しいのですね」

 泡だらけの手が、むんずとわたしの乳房をつかみ、揉みしだいた。背中には、あの尖った胸が押し付けられる。

 わたしは完全に、油断していた。
 ぞくぞくっ、と前から後ろへ電流のように快感が走る。

 「ひゃ。待て。待って。前は自分で洗うから。お返しに、あなたの背中を洗うわ」

 同性に揉まれて気持ち良いなんて、どれだけ敏感なのだ、聖女の体。それとも、パノレアに特殊技能があるのか。
 モブなのに。

 混乱しつつ、どうにか位置の入れ替えに成功した。
 仕返しに、パノレアの尖塔巨乳も揉んでやった。しっかりとした揉み応えのある乳だった。

 「あんっ。聖女様ってば、体を洗うのもお上手ですう」

 パノレアが妙な声音で褒めるから、乳首を指で弾いてしまった。
 それ以上は神官の目も意識して、何とか自分を抑えた。

 乙女ゲーム分類の『みつつぼ』に、百合シーンはなかったけど、巫女の能力自体は男女を区別しない。
 いくらゲームの世界でも、男しか救えない巫女では問題がある。

 シナリオが終わった今、そういう世界に目覚める将来があるかもしれない。
 想像しただけで、少し濡れた気がした。

 しかも、前を洗っている時、脚の付け根にキスマークがあることに気付いた。
 師匠の仕業だ。

 昨夜の痴態を思い出すと、子宮が疼くのを感じた。
 パノレアや神官の前で、股から糸を垂らす粗相そそうは避けたい。
 当面の間は、自分で体を洗うことにしよう。


 就寝前の祈りは、時刻も時間も定まっていない。

 問題は、ゲイトニアの主任神官よりも、続き部屋のパノレアがいつ就寝するか、であった。

 彼女の立場では、巫女の秘術も聖女の巡行の意味も知らないと考えて良い。

 聖女が夜中に主任神官の部屋へ忍び入るところを目撃されたら、面倒なことになる。
 この先の旅を無難に続けるためにも、初日から揉め事は避けなければならない。

 自室へ案内された際、扉越しにパノレアがいる気配を感じられた。
 起きて動き回るか、寝入っているかの違い程度は、聞き取れそうだった。

 わたしは、ベッドへ横たわり、隣室の気配にひたすら耳を澄ませた。
 護衛なら、聖女が寝るまでは眠らないだろう。寝たふり作戦である。

 神殿のベッドは寝心地が良かった。
 うっかり目を閉じたら、朝まで寝入ってしまうところだった。

 はっと目覚めた時、まだ夜中の空気を感じて、わたしはほっと息をついた。
 扉の向こう、続き部屋は静かである。
 どこからかイビキが聞こえるのは、マノロスかもしれない。

 わたしは、そっとベッドから降りた。
 ふかふかの絨毯じゅうたんを、抜き足差し足で進み、細心の注意を払ってドアノブを回す。

 手入れの行き届いた扉は、音もなく開いた。抜け出すことを想定して、最初から鍵を掛けなかった。

 主任神官の寝室は、大体の見当をつけていた。
 灯りもなく真っ暗な通路を、夜目を頼りに進む。

 近くまで来て初めて、気配に吸い寄せられていたと気付いた。前方に、うっすらと明るい箇所がある。

 「ああん、キリロス様。もっと突いて」

 冷んやりした夜気に乗って聞こえた声に、わたしの足が止まった。

 「イクッ、イクッ。イッちゃうからっ!」

 「激しいっ。イイッ。キリロス様!」

 全身くさりで縛られているのに、巨大な磁石に引っ張られるような気分だった。

 明らかに矛盾した体の動きを、制御できない。
 見たくない、見たくないけど。
 わたしは強張った足が、じりじりと歩を進めるのを止められなかった。

 グチョン、グチョン。

 神殿の廊下に、普段聞くことのない、しかしわたしにはお馴染みの、あの音が漏れ出る。

 「ああっ」

 「ダニエル」

 とうとう目当ての扉まで来て、わたしは心臓が止まるかと思った。

 パノレアが、口に人差し指を当てて、立っていたのだ。
 あんまり暗かったのと、音に気を取られて、これほど近くに来るまで全く認識できなかった。

 「キリロス様。今度は、僕の番です」

 「イったばかりで、無理をしないで。う」

 ちゅばっ、ちゅばっ、と、高らかな音が、わたしとパノレアの間に流れた。

 「うふふ。もう、こんなに大きくして。あ」

 「ダニエルは、お尻も可愛いのですね」

 わたしたちは、再び交わり出した二人の愛欲の様を並んで立ち聞きした後、盛り上がってきたところで、静かに部屋まで戻ってきた。


 「やっぱり、主任神官はでしたね」

 何故かわたしの後について部屋へ入ったパノレアが、扉を閉めるなり、興奮した様子で口を開いた。

 「はい?」

 もちろん、前世現代日本人だったわたしは、彼女の言わんとする意味を理解した。
 でも、この中世世界に、BL用語が存在するのか、自信がなかった。
 わたしの解釈は、果たして正しいのか?

 『みつつぼ』に、男キャラ同士が愛し合う場面はない。だって、乙女ゲームだもの。

 「ブルー師長みたいな雰囲気あったから、イケると思ったんですけど、まさかキリロス様がお相手とは意外でした。思わぬ拾い物です。この先、旅の楽しみができました」

 「イケるって‥‥?」

 そういえばゲーム上、ブルーは年下あざと系男子だった。ゲイトニアの美少年神官と同じ系統に分類できなくもない。

 「あ。いえ、見て称えるだけですよ。そんな、恐れ多い」

 パノレアはどうやら、BL好きのブルー推しらしい。
 巡行中、わたしの命を狙う心配はなさそうである。

 がっかりしたのは、主任神官もキリロスも諦めねばならないことだった。
 聖女が希望したからと言って、嫌がる男を抱いたり、まして結婚したりするのは女神イナリアも許すまい。

 「私の理想は、ブルー師長とレッド団長の組み合わせなんです。聖女様が同志でいらしゃるとは、望外の喜びです」

 いや、同志ではない。前世も今世も、全然そっちに興味ない。

 「もう遅いから、やすみましょう。続き部屋への鍵を開けるわ」

 話が長くなりそうな気配がした。わたしは、扉に手をかけた。

 「聖女様。いつか、師長と団長の組み合わせについて、お話を伺いたいです。討伐のエピソードとか」

 ブルーとレッドに、セイヤを加えたら、前世の推しグループカラーが揃う。
 わたし的には、三人がワンセットである。もちろん、BL的な意味はない。
 その中の騎士と魔術師が並んでも、特に思うところはなかった。

 「特に話はないわ。それに、わたしはあなたの趣味の同志ではない」

 「隠さなくても」

 彼女の背を押すようにして、素早く扉を閉めた。

 パノレアは、わたしが鍵を閉めると諦めたようだった。
 あちらから鍵を開けることは出来ない。

 わたしはベッドへ潜り込み、目を閉じた。
 浴室で感じたたかぶりは、いつの間にか鎮まっていた。

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