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番外編 『未明の月 尽くしの巫女は煩悩に抗う』逆ハーレムルート 魔王のダンジョン 中編 *
「いやあああっ!」
「アイナ!」
「待てこの野郎!」
「くそっ!」
「深追いするな! 一旦退け!」
魔王を倒すため、いよいよ本拠地らしいダンジョンに潜ったわたし達は、罠を避けたり魔物を蹴散らしたりしながら、奥へと進んでいた。
今、ダンジョンの中で、わたしは一人だった。
ゴブリンの群れに攫われたのだ。
襲撃を受け、他の皆が戦う後ろで回復の祈りを捧げていたら、挟み込まれた。最初から、待ち伏せしていたかもしれない。
ゴブリン共は、わたしをねぐらに連れ込むと、両手を縛り上げ、壁際に吊るした。ぎりぎり足先が付く高さだった。これでは両足が自由でも、踏ん張りが効かない。
途中で気を失ったから、元いた位置からどのくらい離れたか、どれほど時間が経ったか曖昧だ。
逃げる心配がないと思われたみたいで、見張りもいない。ちょっと手首を動かしてみただけで、痛くて諦めた。爪先立ちを続けるのも、疲れる。
セイヤ達は、どうしているだろう。
怪我を負っていないと良いけど。
今頃は、わたしを探しているに違いない。
わたしを助けようとしたせいで、魔王討伐に失敗したら、と思うと、また別の意味で落ち着かない。
最悪なのは、討伐もできず、セイヤが死んで、わたしが生き残った場合だ。
死刑になる未来しか見えない。
その時は、逃げよう。
「+¥@=$#=¥@!」
「※@∵@※#×¥+¥@~」
ゴブリンが次々とやってきた。手に手に器に山盛りの何かを捧げ持っていた。
生臭い臭いが鼻につく。こわごわ薄目で見ると、鱗のついた塊や、鉤爪のついた手足らしき物体が見分けられた。
わたしを肴に、宴会を始めるつもりみたいだ。
というか、その通り最後には、わたしも食べられてしまうのでは?
嫌だ。
奴らが楽しげに食べ物と席を定めるのを横目に、手首を必死で動かす。皮膚が擦れるだけで、縄は全く緩まない。
縄を擦り切ろうにも、吊るされた高さと縄の長さがそれを許さない。
ここで派手に動くのは、死を早めるだけだった。
わたしは疲れもあって、一旦逃げるのを諦めた。
「+∬##!」
「∀*$+⊆@*$&~!」
宴会は始まっていて、ゴブリン共は食べる方に夢中だった。わたしの奮闘に気付いた様子はない。
宴会を楽しむゴブリン共は、食べ物は違えど人間に通じるところがあった。
「女神イナリア様、わたしを悲惨な死からお救いください」
食べられるにしても、先にサクッと死なせて欲しかった。
巫女は、魔王を倒すために選ばれた存在であり、無条件で巫女の願いが叶う訳ではない、と神官長から教わった。
だから、我が儘を言ってはいけないのだ。
「$&∵#⊆@☆×¥+¥#**?」
つん、と乳房を突かれた。
「へ?」
「∞@☆∵@$@*」
「&∵#∀*∬&⊆@☆∵@⊆#∵&」
たちまち、わらわらとゴブリンが群がって、わたしの体をつつき始めた。
意外にも痛くない、というか、くすぐったい。
「ちょっと。そんなにつつかないでってば。ひゃはっ」
「☆∵@×¥+¥@」
「∞&∵&$&○=¥#∵+」
奴らはだんだん図々しくなって、尻の間から手を差し込んできた。
「だだだ、ダメってば」
蹴飛ばしたいのに、足が上がらない。思ったより体力を消耗したみたいだ。
ぬちょ。
「∀+∵#¥#$*¥@」
わたしの体から、愛液が染み出してきた。ゴブリン、指技上手すぎ?
「あっ、ダメ。もう殺して」
ゴブリンにイカされてしまう。
「=$@@×¥+!」
遠くで悲鳴が上がった。割れ目と突起を弄んでいたゴブリンの指が、さっと引っ込む。
「=¥@∵#=¥@@*¥+∞&○=¥@∀&!」
さっきまで宴会気分で盛り上がっていたゴブリン共が、たちまち恐怖で混乱した。
その間にも、悲鳴が段々近付いてくる。
セイヤ達が、助けに来た!
わたしは、ほっとして力を抜いた。皆がここを制圧したら、一回気持ち良くしてくれないかなあ。
「+=$@@×¥+!」
ゴブリンの死体が、部屋の中に飛び込んできた。
続いて現れたのは、全裸の大きな図体に、牙の生えた口。
仲間どころか、人間ですらなかった。
オーガだ。
「☆@@@@×¥+!」
ゴブリン共が逃げ惑うのを、千切っては投げ、暴れ回る。食べかけのご馳走も蹴散らされ、ぐちゃぐちゃだ。
しかもオーガは、丸太みたいなぶっとい男根をおっ立てていた。
目が合った。
「くっ、殺して~」
嫌な予感が的中した。オーガはゴブリンを放り出し、わたし目がけてまっしぐらに駆け寄った。
はあ、はあ、はあ、と荒い呼吸で吹き付けられる息が、生臭い。
挿れる気だ。死ぬ。あんなモノ挿れられたら、間違いなく悲惨な死が。
「殺して。殺してからにして」
必死で訴えたけど、言葉が通じる筈もなく、オーガはわたしを吊り下げる縄を掴んだ。
ぶちっ。一瞬で千切れる縄。
「刺突電撃!」
ビシャーン!
雷が落ちたみたいな眩しさと衝撃のあと、オーガはゆっくりとこちらへ倒れ込んできた。
わたしは慌てて地面に届いた足を動かす。腕を振ると、オーガに握られた縄の切れ端が、すっぽ抜けた。
ズシン、と地響きを立ててうつ伏せになった向こうに、ブルーの姿を認めた。
視界が暗くなる。
わたしがゴブリンに攫われてから、戦闘の時の立ち位置が少し変わった。
場所に余裕があれば、わたしを真ん中に入れて、狭ければ誰かがわたしの側につく。
「そこまでやらなくても‥‥最悪、魔王を先に倒してから来てもらえれば」
わたしの頭の中には、どうしても処刑がちらつくのだ。
「アイナなしじゃ、やる気出ねえよ」
「回復なしで、魔王を倒せるとは思えないな」
「そうだ。女神イナリア様の選びし巫女は、必須の戦力だ」
「どうせ僕達、アイナを探しちゃうから、そうならないように守るのが、手っ取り早いでしょ」
確かにブルーの言う通りではある。
なるべく足を引っ張らないように、気をつけなくちゃ。
それなのに。
「ああっ。ごめんなさい!」
わたしだけが、罠にかかってしまった。
床の敷石が一枚だけ剥がれた通路に差し掛かったところだった。
ちゃんと魔法や剣で確認した後、セイヤとハルトくんに続いて、通り過ぎようとしたところだった。
皆と同じように脇へ避けて足早に進んだのに、わたしが横へ来た途端、床と周辺の壁まで崩れた。
奥からピンク色のヌメヌメした細長い物が何本も伸びてきて、わたしを絡め取ったのだ。
ヌメヌメは皆の方にも伸びたけど、全員避けた。
「何だ? このイソギンチャクみたいな奴」
ハルトくんが剣で斬りつけると、一本落ちた。
すると、そこから二本のヌメヌメが生えてきた!
「ブルー、魔法で一本潰してみろ。二本以上攻撃するな。増えたらまずい!」
セイヤがヌメヌメ越しに、指示を出した。ブルーとレッドはわたしの後ろにいて、分断された形になっていた。
「炎撃渦!」
ブルーはすぐさま魔法を放った。炎が一本の触手にまとわりつき、くるくると蔓みたいに巻きついて伸びた。
じゅうじゅうと煙を上げて、黒ずむ触手は、間もなく燃えかすとなって崩れ去った。
そして、新しい触手が即座に伸びてきた。
「これではキリがない。ハルト、そのイソギンチャクとかいう奴の弱点は?」
「‥‥見た目が似ているだけで、全然違う生物だ。参考にならん」
「アイナ!」
ブルーの声に、触手の動きが変化した。
ピンクの触手共は、わたしの手足だけでなく、両乳にまで一本ずつ絡みついて、先端が絶妙な距離で乳首を刺激するのだ。
更に、別の触手が両脚の間へ入り込んで、性器の周辺をずりずりと這い回る。
また別の触手が顔に迫ったかと思うと、口に突入したので、一瞬呼吸が苦しくなったのだった。
鼻で呼吸したら、ブルーとキスした時の記憶と重なった。
「このままでは、アイナが」
セイヤの苦悩する声も聞こえる。あっ、あそこに挿入ってきたのは、セイヤの淫棒に似ている。
「思い出した! こいつは、チリチェリコリフォだ!」
レッドが叫んだ。
「女の‥‥その、匂いに反応して‥‥体液を搾り取る」
体に絡みつく力強さが、騎士らしく頼もしい。
「レッド! 倒し方を言え」
ハルトくんが、怒鳴り声で促した。でも、乳首に触れる手は、優しく気持ち良い。
「チリチェリコリフォなら、真棒を壊せば死ぬ」
「ちん○! ちん○を切るんだ!」
セイヤとレッドが同時に言った。
「どれが真棒?」
ブルーが冷静に訊く。
嫌だわ。真なる棒は、子種を注ぐ穴へ入るに決まっているじゃないの。
「んぐ、んうっ」
「えっと、確か餌を絶頂に導くって書いてあった気がする。今挿入っている触手とは限らない」
「アイナがイクまでわからないってことか!」
「けしからん。触手の癖に」
ハルトくんとセイヤが呻いた。
皆に気持ち良くしてもらうって、凄い。あっ、抜かないで。
「いやあん」
「アイナ、耐えろ! いや、耐えたら真棒がわからなくなる。くっ」
セイヤが戸惑いながらも、挿入してくれた。
違った。これはブルーの杖だわ。
セイヤはキスに回ったのね。
ああっ。レッドがお尻を舐めている。
ハルトくんは、乳房を揉んでいるわ。
「イクんじゃないか。あれが真棒か?」
レッドが早くも剣に手を掛ける。お尻を舐めながら、何て器用な騎士。
「待て。慎重に見極めろ。アイナがイったら、ブルーは周囲の邪魔な触手を凍らせるんだ」
セイヤが指示を出す。唇の感触が気持ち良いわ。
「わかった。どれくらい保つかはわからないよ」
「構わん。ハルトとレッドに登らせる。レッドが真棒を斬って、ハルトがアイナを残りの触手から解放しろ。私がアイナを受け止める」
「ヤバそうだったら、そうする」
あああっ。盛り上がってきた。あっ。そんなに激しく。
「ブルー。アイナを取り戻したら、奴を燃やせるか?」
「やってみるよ」
あんっ。ダメ。ダメじゃない。気持ち良い!
口が塞がっているから、わたしの言葉は形にならない。でも、皆はわかってくれているみたいだった。
イクッ!
「行けブルー!」
「凍結固定!」
瞬間的に、周囲の温度が下がった。全身濡れ濡れのわたしは、肌寒さを感じる。
「この偽ちん○!」
レッドの掛け声と共に、ずるりと抜け落ちる感覚があった。
「あ~ん。まだ‥‥」
「アイナ、しっかりしろ」
ぎゅっと抱き上げられて、ハルトくんの顔が見えた。こっちが本物だ。
うわあ。
わたし、皆の前でイキ狂っていた。恥ずかしい。
それぞれと寝ていても、一対一の時とは別物だよ。
「くそっ。滑る」
わたしに付着したぬるぬるに加えて、足元の氷のせいで、バランスを取るのが難しいみたいだ。
「崩れ始めたぞ!」
レッドは既に降りていた。
「ハルト、アイナを落とせ! ブルーは早く燃やすんだ! こいつは、切れ端から再生するぞ」
セイヤの焦り声の直後、下に炎の輪が発生した。みるみる溶け出す氷。
「受け取れ!」
わたしは空中に投げ出された。
「ハルトくんは?」
見返った先に、小さくなる勇者の姿があった。炎の壁が高く伸びる。
「だめえ、ハルトくん!」
わたしは、待ち構えていたセイヤの腕に落ちた。
「心配ない。アイナ、勇者を信じろ」
王子が耳元で囁く。
ジュッと音がして、目の前に豪炎が立ち上った。炎の壁より色が濃い。
わたし達は、熱風に押されて後退った。
黒っぽく見える炎の中で、一瞬だけ更に黒い物がうねっては崩れ落ちていく。
不意に、炎が消えた。
そこには、黒い大きな穴がぽっかり空いていた。
細い煙が幾筋も立つ向こうに、ブルーとハルトくんが立っていた。
「ずるいよね。勇者固有の魔法があるなんて」
「使い勝手は悪いぞ」
わたしはほっとして、力が抜けた。
「それにしても、チリチェリコリフォなどという希少種を、よく覚えていたな。ほとんど目撃例がなかった筈だ」
セイヤがレッドを褒めた。でも、そういう王子も知識は持っていた訳だけど。
「『実録 生殖系魔物全集』に載っていた。言っておくが、兄貴が友人から借りて来たのを見せられただけだからな」
レッドは、何故か言い訳がましい態度をとった。セイヤが、ああ、と思い出したように言った。
「なるほど。そう言えば、青少年有害図書に指定されていた」
「エロ本かよ!」
ハルトくんが、突っ込んだ。
「内容は真っ当な図鑑だったよ。媚薬の原材料を調べるのに、読んだことがある」
ブルーが庇った。
つまり、読む方の心持ちが問題だってことみたいだ。
神殿にはなさそうな本だけど、もし無事に戻れたら、どうにかして見てみたい。
「アイナ!」
「待てこの野郎!」
「くそっ!」
「深追いするな! 一旦退け!」
魔王を倒すため、いよいよ本拠地らしいダンジョンに潜ったわたし達は、罠を避けたり魔物を蹴散らしたりしながら、奥へと進んでいた。
今、ダンジョンの中で、わたしは一人だった。
ゴブリンの群れに攫われたのだ。
襲撃を受け、他の皆が戦う後ろで回復の祈りを捧げていたら、挟み込まれた。最初から、待ち伏せしていたかもしれない。
ゴブリン共は、わたしをねぐらに連れ込むと、両手を縛り上げ、壁際に吊るした。ぎりぎり足先が付く高さだった。これでは両足が自由でも、踏ん張りが効かない。
途中で気を失ったから、元いた位置からどのくらい離れたか、どれほど時間が経ったか曖昧だ。
逃げる心配がないと思われたみたいで、見張りもいない。ちょっと手首を動かしてみただけで、痛くて諦めた。爪先立ちを続けるのも、疲れる。
セイヤ達は、どうしているだろう。
怪我を負っていないと良いけど。
今頃は、わたしを探しているに違いない。
わたしを助けようとしたせいで、魔王討伐に失敗したら、と思うと、また別の意味で落ち着かない。
最悪なのは、討伐もできず、セイヤが死んで、わたしが生き残った場合だ。
死刑になる未来しか見えない。
その時は、逃げよう。
「+¥@=$#=¥@!」
「※@∵@※#×¥+¥@~」
ゴブリンが次々とやってきた。手に手に器に山盛りの何かを捧げ持っていた。
生臭い臭いが鼻につく。こわごわ薄目で見ると、鱗のついた塊や、鉤爪のついた手足らしき物体が見分けられた。
わたしを肴に、宴会を始めるつもりみたいだ。
というか、その通り最後には、わたしも食べられてしまうのでは?
嫌だ。
奴らが楽しげに食べ物と席を定めるのを横目に、手首を必死で動かす。皮膚が擦れるだけで、縄は全く緩まない。
縄を擦り切ろうにも、吊るされた高さと縄の長さがそれを許さない。
ここで派手に動くのは、死を早めるだけだった。
わたしは疲れもあって、一旦逃げるのを諦めた。
「+∬##!」
「∀*$+⊆@*$&~!」
宴会は始まっていて、ゴブリン共は食べる方に夢中だった。わたしの奮闘に気付いた様子はない。
宴会を楽しむゴブリン共は、食べ物は違えど人間に通じるところがあった。
「女神イナリア様、わたしを悲惨な死からお救いください」
食べられるにしても、先にサクッと死なせて欲しかった。
巫女は、魔王を倒すために選ばれた存在であり、無条件で巫女の願いが叶う訳ではない、と神官長から教わった。
だから、我が儘を言ってはいけないのだ。
「$&∵#⊆@☆×¥+¥#**?」
つん、と乳房を突かれた。
「へ?」
「∞@☆∵@$@*」
「&∵#∀*∬&⊆@☆∵@⊆#∵&」
たちまち、わらわらとゴブリンが群がって、わたしの体をつつき始めた。
意外にも痛くない、というか、くすぐったい。
「ちょっと。そんなにつつかないでってば。ひゃはっ」
「☆∵@×¥+¥@」
「∞&∵&$&○=¥#∵+」
奴らはだんだん図々しくなって、尻の間から手を差し込んできた。
「だだだ、ダメってば」
蹴飛ばしたいのに、足が上がらない。思ったより体力を消耗したみたいだ。
ぬちょ。
「∀+∵#¥#$*¥@」
わたしの体から、愛液が染み出してきた。ゴブリン、指技上手すぎ?
「あっ、ダメ。もう殺して」
ゴブリンにイカされてしまう。
「=$@@×¥+!」
遠くで悲鳴が上がった。割れ目と突起を弄んでいたゴブリンの指が、さっと引っ込む。
「=¥@∵#=¥@@*¥+∞&○=¥@∀&!」
さっきまで宴会気分で盛り上がっていたゴブリン共が、たちまち恐怖で混乱した。
その間にも、悲鳴が段々近付いてくる。
セイヤ達が、助けに来た!
わたしは、ほっとして力を抜いた。皆がここを制圧したら、一回気持ち良くしてくれないかなあ。
「+=$@@×¥+!」
ゴブリンの死体が、部屋の中に飛び込んできた。
続いて現れたのは、全裸の大きな図体に、牙の生えた口。
仲間どころか、人間ですらなかった。
オーガだ。
「☆@@@@×¥+!」
ゴブリン共が逃げ惑うのを、千切っては投げ、暴れ回る。食べかけのご馳走も蹴散らされ、ぐちゃぐちゃだ。
しかもオーガは、丸太みたいなぶっとい男根をおっ立てていた。
目が合った。
「くっ、殺して~」
嫌な予感が的中した。オーガはゴブリンを放り出し、わたし目がけてまっしぐらに駆け寄った。
はあ、はあ、はあ、と荒い呼吸で吹き付けられる息が、生臭い。
挿れる気だ。死ぬ。あんなモノ挿れられたら、間違いなく悲惨な死が。
「殺して。殺してからにして」
必死で訴えたけど、言葉が通じる筈もなく、オーガはわたしを吊り下げる縄を掴んだ。
ぶちっ。一瞬で千切れる縄。
「刺突電撃!」
ビシャーン!
雷が落ちたみたいな眩しさと衝撃のあと、オーガはゆっくりとこちらへ倒れ込んできた。
わたしは慌てて地面に届いた足を動かす。腕を振ると、オーガに握られた縄の切れ端が、すっぽ抜けた。
ズシン、と地響きを立ててうつ伏せになった向こうに、ブルーの姿を認めた。
視界が暗くなる。
わたしがゴブリンに攫われてから、戦闘の時の立ち位置が少し変わった。
場所に余裕があれば、わたしを真ん中に入れて、狭ければ誰かがわたしの側につく。
「そこまでやらなくても‥‥最悪、魔王を先に倒してから来てもらえれば」
わたしの頭の中には、どうしても処刑がちらつくのだ。
「アイナなしじゃ、やる気出ねえよ」
「回復なしで、魔王を倒せるとは思えないな」
「そうだ。女神イナリア様の選びし巫女は、必須の戦力だ」
「どうせ僕達、アイナを探しちゃうから、そうならないように守るのが、手っ取り早いでしょ」
確かにブルーの言う通りではある。
なるべく足を引っ張らないように、気をつけなくちゃ。
それなのに。
「ああっ。ごめんなさい!」
わたしだけが、罠にかかってしまった。
床の敷石が一枚だけ剥がれた通路に差し掛かったところだった。
ちゃんと魔法や剣で確認した後、セイヤとハルトくんに続いて、通り過ぎようとしたところだった。
皆と同じように脇へ避けて足早に進んだのに、わたしが横へ来た途端、床と周辺の壁まで崩れた。
奥からピンク色のヌメヌメした細長い物が何本も伸びてきて、わたしを絡め取ったのだ。
ヌメヌメは皆の方にも伸びたけど、全員避けた。
「何だ? このイソギンチャクみたいな奴」
ハルトくんが剣で斬りつけると、一本落ちた。
すると、そこから二本のヌメヌメが生えてきた!
「ブルー、魔法で一本潰してみろ。二本以上攻撃するな。増えたらまずい!」
セイヤがヌメヌメ越しに、指示を出した。ブルーとレッドはわたしの後ろにいて、分断された形になっていた。
「炎撃渦!」
ブルーはすぐさま魔法を放った。炎が一本の触手にまとわりつき、くるくると蔓みたいに巻きついて伸びた。
じゅうじゅうと煙を上げて、黒ずむ触手は、間もなく燃えかすとなって崩れ去った。
そして、新しい触手が即座に伸びてきた。
「これではキリがない。ハルト、そのイソギンチャクとかいう奴の弱点は?」
「‥‥見た目が似ているだけで、全然違う生物だ。参考にならん」
「アイナ!」
ブルーの声に、触手の動きが変化した。
ピンクの触手共は、わたしの手足だけでなく、両乳にまで一本ずつ絡みついて、先端が絶妙な距離で乳首を刺激するのだ。
更に、別の触手が両脚の間へ入り込んで、性器の周辺をずりずりと這い回る。
また別の触手が顔に迫ったかと思うと、口に突入したので、一瞬呼吸が苦しくなったのだった。
鼻で呼吸したら、ブルーとキスした時の記憶と重なった。
「このままでは、アイナが」
セイヤの苦悩する声も聞こえる。あっ、あそこに挿入ってきたのは、セイヤの淫棒に似ている。
「思い出した! こいつは、チリチェリコリフォだ!」
レッドが叫んだ。
「女の‥‥その、匂いに反応して‥‥体液を搾り取る」
体に絡みつく力強さが、騎士らしく頼もしい。
「レッド! 倒し方を言え」
ハルトくんが、怒鳴り声で促した。でも、乳首に触れる手は、優しく気持ち良い。
「チリチェリコリフォなら、真棒を壊せば死ぬ」
「ちん○! ちん○を切るんだ!」
セイヤとレッドが同時に言った。
「どれが真棒?」
ブルーが冷静に訊く。
嫌だわ。真なる棒は、子種を注ぐ穴へ入るに決まっているじゃないの。
「んぐ、んうっ」
「えっと、確か餌を絶頂に導くって書いてあった気がする。今挿入っている触手とは限らない」
「アイナがイクまでわからないってことか!」
「けしからん。触手の癖に」
ハルトくんとセイヤが呻いた。
皆に気持ち良くしてもらうって、凄い。あっ、抜かないで。
「いやあん」
「アイナ、耐えろ! いや、耐えたら真棒がわからなくなる。くっ」
セイヤが戸惑いながらも、挿入してくれた。
違った。これはブルーの杖だわ。
セイヤはキスに回ったのね。
ああっ。レッドがお尻を舐めている。
ハルトくんは、乳房を揉んでいるわ。
「イクんじゃないか。あれが真棒か?」
レッドが早くも剣に手を掛ける。お尻を舐めながら、何て器用な騎士。
「待て。慎重に見極めろ。アイナがイったら、ブルーは周囲の邪魔な触手を凍らせるんだ」
セイヤが指示を出す。唇の感触が気持ち良いわ。
「わかった。どれくらい保つかはわからないよ」
「構わん。ハルトとレッドに登らせる。レッドが真棒を斬って、ハルトがアイナを残りの触手から解放しろ。私がアイナを受け止める」
「ヤバそうだったら、そうする」
あああっ。盛り上がってきた。あっ。そんなに激しく。
「ブルー。アイナを取り戻したら、奴を燃やせるか?」
「やってみるよ」
あんっ。ダメ。ダメじゃない。気持ち良い!
口が塞がっているから、わたしの言葉は形にならない。でも、皆はわかってくれているみたいだった。
イクッ!
「行けブルー!」
「凍結固定!」
瞬間的に、周囲の温度が下がった。全身濡れ濡れのわたしは、肌寒さを感じる。
「この偽ちん○!」
レッドの掛け声と共に、ずるりと抜け落ちる感覚があった。
「あ~ん。まだ‥‥」
「アイナ、しっかりしろ」
ぎゅっと抱き上げられて、ハルトくんの顔が見えた。こっちが本物だ。
うわあ。
わたし、皆の前でイキ狂っていた。恥ずかしい。
それぞれと寝ていても、一対一の時とは別物だよ。
「くそっ。滑る」
わたしに付着したぬるぬるに加えて、足元の氷のせいで、バランスを取るのが難しいみたいだ。
「崩れ始めたぞ!」
レッドは既に降りていた。
「ハルト、アイナを落とせ! ブルーは早く燃やすんだ! こいつは、切れ端から再生するぞ」
セイヤの焦り声の直後、下に炎の輪が発生した。みるみる溶け出す氷。
「受け取れ!」
わたしは空中に投げ出された。
「ハルトくんは?」
見返った先に、小さくなる勇者の姿があった。炎の壁が高く伸びる。
「だめえ、ハルトくん!」
わたしは、待ち構えていたセイヤの腕に落ちた。
「心配ない。アイナ、勇者を信じろ」
王子が耳元で囁く。
ジュッと音がして、目の前に豪炎が立ち上った。炎の壁より色が濃い。
わたし達は、熱風に押されて後退った。
黒っぽく見える炎の中で、一瞬だけ更に黒い物がうねっては崩れ落ちていく。
不意に、炎が消えた。
そこには、黒い大きな穴がぽっかり空いていた。
細い煙が幾筋も立つ向こうに、ブルーとハルトくんが立っていた。
「ずるいよね。勇者固有の魔法があるなんて」
「使い勝手は悪いぞ」
わたしはほっとして、力が抜けた。
「それにしても、チリチェリコリフォなどという希少種を、よく覚えていたな。ほとんど目撃例がなかった筈だ」
セイヤがレッドを褒めた。でも、そういう王子も知識は持っていた訳だけど。
「『実録 生殖系魔物全集』に載っていた。言っておくが、兄貴が友人から借りて来たのを見せられただけだからな」
レッドは、何故か言い訳がましい態度をとった。セイヤが、ああ、と思い出したように言った。
「なるほど。そう言えば、青少年有害図書に指定されていた」
「エロ本かよ!」
ハルトくんが、突っ込んだ。
「内容は真っ当な図鑑だったよ。媚薬の原材料を調べるのに、読んだことがある」
ブルーが庇った。
つまり、読む方の心持ちが問題だってことみたいだ。
神殿にはなさそうな本だけど、もし無事に戻れたら、どうにかして見てみたい。
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※全11話 2万字程度の話です。
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