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帝国編

感覚的な意識と体験

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 この世界で通貨を使ったところ、銅は100円くらいの感覚で使っている。
 主に串焼きで身に付いたと言っても過言ではないが、店によっては1本銅2~3枚で消費している・・・安くするにも1枚以下にはできないだろう。
 どの道どんなに貯えたとしても墓場には持ってはいけない・・・前世のお金もこの世界にはないことで意味を成さなかった。
「フィオナどうしよう!お金が底を尽きそうだよ!」
 とはいえ今使う分までないのは少々問題だろう・・・現在を切り詰めて未来の医療や福祉施設に使うのも結果的に自分を救うものでもないが現在進行形でないのも大した差はない。
「姉様は食費はまだしも投射器の記憶板に使い過ぎかもです・・・安いものではなかったはずですが」
 帝都で記憶板・・・SDカードみたいなのは銀貨3枚くらいだが、共和国では1枚ということで委託料みたいなものだろう。
 1枚1時間で銀貨3枚・・・1時間で3000円と考えるとコスパは最悪だろう、酒や煙草もびっくりな値段だ。
 1万の課金やギャンブルに躊躇しないのにステーキ1000円以上は躊躇する、価値観は人それぞれだが身を滅ぼすという意味に変わりもない。
 記憶板1枚フレイヤでステーキとデザート食べでもお釣りがくるとアイリにそれとなく伝える。
「分かってるんだよ・・・分かってるけれど・・・!」
 依存や中毒は自分ではコントロールし辛いだろう、できたら依存など起きはしない・・・指摘して怒らない分まだ引き戻せるだろう。
 感覚的な意識や体験・・・クオリアは人によって異なる、科学的に引き起こされる中毒も生物的に人や物に依存する引き金も他者の意識で別物になる。
「そうだ!ギルドに行こう!」
「討伐依頼ならミリーとユラに話を・・・」
 母マリナに似て時々周りが見えなくなるアイリに、宿から引っ張り出されたのだった。

 帝都の冒険者ギルドの周辺は市場のような側面もあり、一般の人達も利用しているようだ。
 東城下町の中心にギルドがあるのだが、国民の間の通称はギルド街と呼ばれている。
 東口と西口があり建物の中心に受付がある作りで、東側と西側にそれぞれ階段があり2階に行けるようになっているようだ。
「ゴールドランクなんですけど、討伐依頼とかありませんか!」
 アイリが前のめりで受付嬢に問い掛ける、王都に居たときはここまで依頼に執着したりはしなかったのだが。
 娯楽の一種に触れて少し価値観が変わっていってるように感じる、前世で例えるならテレビが無い時代に映像を流すとどうなるかと言った感じだろうか。
 文明に放り出された原始人という言い方もある、この世界に元々ない概念に触れたアイリも例外ではないようだ。
 ミリーが最初に見たのは映像を記録できるアーティファクトだったことから、世間全体に広がるものではなかったはずだろう。
「は、はぁ・・・討伐依頼自体はたくさんありますが・・・」
 各地の討伐依頼は多いが、ランクの高い冒険者はギルドの諸事情で特定の地域に派遣しているそう・・・アーシルの件はミスリル以上で請け負っている。
 ゴールドランク以下の討伐依頼は総合学院の実地訓練の名目なりで行っているが、大森林地帯の魔物は増殖傾向・・・どこも人手不足みたいだ。
「学院生の同伴となると、現在少人数での申請は断るようギルドマスターと学院の方から通達されていまして・・・」
 王都の学院と違い実地訓練の内容も少し異なるようだが、アイリと私を見てこの発言は勘違いされたのだろう。
「私は王都の学院卒業済みなのです、ゴールドの冒険者なのでお気になさらず」
「し、失礼しました・・・大森林地帯の依頼が主ですが、西鉱山と南鉱山の討伐依頼が多数ございます」
 大森林は間に合っているが2つの鉱山までは手が回っていない、という意味にも取れそうな言い回しだ。
 正確には違うだろう、大森林地帯はアーシル側にも影響することであちらでも対処はしているかもしれない。
 その分西側と南側の討伐依頼が増えている、鉱山麓の村や採掘の護衛もあり討伐まで行き届かないのだろう。
「因みに鉱山までどのくらい掛かります?」
 大森林地帯まで3時間掛かることで今から向かってから討伐だと夜になりそうだ。
 アイリ1人なら杖に乗せ一緒に飛んでいけば夜になる前に戻れそうではあるが。
「西鉱山も南鉱山どちらも2日以上は掛かります、大森林中心付近で結晶種も確認されたとの報告も受けていますので・・・」
 少なくとも鉱山の選択肢はないな・・・今から野営までして討伐はアイリの目的からもズレる。
「姉様、今からだと大森林でも遅くなるですよ?装備を作っててまだ何も食べてないので今日のところは・・・」
「うーん、フィオナ・・・私乗せて飛べる?暗くなる前には帰るようにするから!」
 ジオ用追加装備のトンファーガンブレードの製作中だったのだが、息抜きついでにアイリを大森林へと連れて行くのだった。
 
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