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1章 異世界オタクと物語の始まり
1話 駄目人間
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ー自宅 健人の部屋ー
「眠い」
昨日寝たのは夜の九時だったが。
「疲れた」
一日中、寝転んでいたけど。
「暇だ」
解決すべき課題は山積みだが。
俺は自室のベッドの上でゴロンと寝転んだ。白色の蛍光灯が鼠色のスウェットを照らす。
俺は和田健人。大学生の筈だった。
過去形なのは勿論、今はそうではないからだ。
昔は俺もキラッキラのキャンパスライフという奴を目指して、血の味を舐めるような努力をしたことはあった。何度心が折れそうになったが、それでも俺は志望校目指して頑張った。
受験期間は辛くも充実していた。
そして俺は見事受験に打ち勝ったのだ。
期待したさ、これから始まる新生活に。
夢を見たさ、共に青春を駆ける友の夢を。
俺は意気揚々と、四月の桜に満たされながらあの憧憬の門に足を踏む入れた。
だが、そこで見たものはーー
「ま、現実そう、うまくいかねえよな」
……ああ、心配しなくても良いぜ。今は今で楽しくやってる。
最近じゃ部屋に居ながら金を稼ぐ手段も確立してきた。
俺は親に迷惑をかけない引きこもりだ。
こうやって物語の冒頭に引きこもりアピールするのは異世界転生ものっぽいが、俺は断言する。
「異世界転生なんてくそ喰らえ」
火星にいるイキリオタク共の話によると、異世界っていうのは一応あるらしい。
あいつらは、観測しただけとかほざいていたけどよ、多分行っちゃってるんだろーな。21世紀から生きてる長老組とか異世界発見会見の時にホクホクしてたし。
「オタク共は良いよなぁ」
あいつらには未来がある。先を進んでいる感がある。対して、俺らはロストテクノロジーの復活をするので精一杯だ。
「まっ、社会のことを考えてもしゃあない」
そんなことより、一番の議題はこれからどうするかである。
仕事は論外。だとすると寝るか、食うか、アニメ見るか、ラノベ読むか。
俺の行動の選択肢はこれだけだ。
おい、お前もオタクじゃねぇかって言った奴、ぶっ殺すぞ。俺をあんなイジメられたから戦争して地球出た奴らと一緒にすんな。
俺はオタじゃない。俺は清潔感のあるオタだ。
清潔感っていうのが肝である。これがなけりゃ、隠れオタか、キモオタになっちまうからな。
「飯を食うか」
架空の観客と漫才するのは楽しいのだが、ずっとやってると腹が減る。漫才は戦だ。
昔の人も、腹が減ってはノリツッコミは出来ぬとか言ってたしな。
待ってろ、文系共が理系の十倍くらい時間をかけて復活させた冷凍パスタ!!
俺は冷凍庫の中を開ける。そこにぎっしり収納されているのは、各種冷凍食品達。
「今日はボンゴレにしよう」
ふん、ふふん♪ さて、外袋をはずして……。
視界が揺れる。酷い頭痛や耳鳴りが電流のように駆け巡った。
頭をおさえて俺はその場にうずくまった。
なにが……。
その瞬間、俺の意識は暗転した。
ー謎の草原ー
頬に触れる涼やかな風。
鼻をくすぐる草の香り。
俺は静かに目蓋を開いた。
目に映るのは、どこまでも続く大空。
美しい蒼穹は抜けるように澄んでいる。
だが、おかしいな。俺はさっきまで自分の部屋に居たはずなんだが。
俺は慌てて起き上がり、辺りを見渡した。
草原。
草原しか見えない。
え、おいおい、嘘だろ。いや、確かに異世界行きそうな雰囲気はしてたよ。でも、本当にそうしなくても良くない? ていうか転移の方法がさ、意識無くなるみたいでめっちゃ怖かったんだけど。もっと旅の扉みたいな感じにしようよ。フワンフワンってさ。
俺は一通り文句を上げた後、冷静になった。
落ち着くんだ、健人。俺は琴線に触れると騒ぎまくるイキリオタでもないし、夏は海とか言ってBBQ始めるリア充でもない。クールだ。俺は暁美ほ●らになるんだ。
「……ていうか、本当に異世界なのか?」
周りを見渡してみる。
青い空。白い雲。
飛んでいるのは大きなトカゲ。
「……」
うん、これ異世界だわ。あのサイズのトカゲが空を飛ぶなんて魔法でもなけりゃ無理だわー。てかドラゴンでしょ? あれ。
あー、やってらんね。
俺は、地べたに座り込む。俺の立っている所は背の低い牧草地のような草原だ。RPGだったら始まりの草原って名前つけられそう。
にしても転移か。うーん。
俺は一つ思い当たる節があった。俺は空を見上げて、叫んだ。
「おーい、オタク共ー。どうせ見てるんだろぉー。出てこいよー。一緒にごち●さ談義しようぜー」
そう、これはオタク共が計画したものではないか、という疑念だ。
普通、これで答える馬鹿は居ない。だが、相手はヲタだ。常に同族に飢えている寂しがり屋達だ。
反応はすぐだった。天の声みたいに話声が響く。
『おい、ご●うさ談義だってよ。拙者、結構行きたい味が強いんだが』
『いやいや、駄目だろ常考。っていうか、スピーカーONになってるじゃん!』
バッチリ聞こえてるぜ。俺は、ぐっと親指を上に向けた。
『うわぁ、あの人絶対気付いてるよ。だってグッジョブだぜ。もうこれ行っても良いんじゃね?』
『それでも駄目だ。おい、コラ。止め……行くなー!!』
なんか急にヤコブの梯子が降りてきて、小太りの天使が降臨した。
「難民キャンプはここですか?」
違います。
「ええー。ごちう●談義って言ったじゃん」
撒き餌に決まってるだろ。っていうか、ナチュラルに心を読むなよ。
「ご●うさについて話そうぜー。お前はチマメ隊誰押し?」
マヤ、っていうかその議論は戦争を呼ぶからやめろよ。
「マヤかぁ。リゼとの絡み良いよな」
お、分かってるじゃん。ごちうさっていうのは、テーマとして夢とか将来に悩む少女達っていうのがあるからな。マヤちゃんがリゼに進路相談するところとかぐっとくる。
お前は?
「チノ」
確かに可愛いしな、チノ。誰との組み合わせが好きなの?
「リゼの特訓」
やっぱリゼは誰と合わしても良いってことだな。
「だよなー」
うんうん。
って、そうじゃねぇよ!
「ん? どーしたの、急に騒いで」
いや、騒いでないし。俺、結局異世界開幕から一言も喋ってないし。
そ、れ、よ、り、も。
質問があるんだよ、質問が。
「チノちゃんの携帯の機種?」
ちげえよ。なんでそれだと思ったんだよ。
ソニーに決まってるだろ! 見たやつなら誰でも知ってるわ!!
そうじゃなくてよ。なんで、俺はここに飛ばされたんだ? いくらお前らが頭おかしいヲタだとしても、流石に通りに合わないと思うんだが。
事実上、拉致だぜ?
「許可はもらってるよ」
許可だぁ? 誰の許しを貰ってるんだよ。
「君自身の」
はぁ、どういう……あ、待て。言わなくていい。分かったぞ、未来の俺に聞いたんだな?
「よく分かったな! 流石、地上の大オタクと呼ばれる和田健人だわ」
巫山戯んな。俺はオタクじゃねえ。
「へえ、噂通り否定するんだ」
ったく。それで、お前らの目的はなんだ? わざわざ俺を異世界転移させる理由を言えよ。
なんかごちうさ談義してたら異世界感がさっきから薄れてるけどよ。
「うーん。実験?」
言えねって訳か?
「いや、そうじゃなくて。説明があったんだけどその時寝てた」
おいおい高校生じゃないんだから、ちゃんとしろよ。よくそれで首にならねえな。
「うちの会社、そういうのないからね」
甘ったれた社会だな。
「それな!」
俺らがそうやって楽しくお喋りしている間、このオタクの相方の難民じゃない方のオタクがずっと叫んでいたが、俺らは聞こえないふりをして、結局夜になるまで話は続いた。
ーーーー
ーー
ー
「じゃあな! 兄弟。強く生きろよ」
オタクが天に昇りながら、ブンブンと手を振る。
俺もそれに応えて泣きながらブンブンと腕を振る。
「じゃーなぁー。お前、オタクだげど良い奴だったよ。おで、おで頑張るがら゛」
「元気でなー」
「まだ会おゔなー」
俺はオタクとお別れをした。さっきから光が差していた空から、明るさが消えて本来の夜の暗さに戻る。
天の声も聞こえない。
「あいつら、良い奴だったな」
ごちうさ談義からそのアニソンと色々と話が飛んでいって、最終的に運命を信じるかどうかなんて哲学的論議に変わったことは今でも不思議で仕方ないが、楽しい時間だった。
「さて、これから頑張るか」
俺の異世界生活が、始まる。
「眠い」
昨日寝たのは夜の九時だったが。
「疲れた」
一日中、寝転んでいたけど。
「暇だ」
解決すべき課題は山積みだが。
俺は自室のベッドの上でゴロンと寝転んだ。白色の蛍光灯が鼠色のスウェットを照らす。
俺は和田健人。大学生の筈だった。
過去形なのは勿論、今はそうではないからだ。
昔は俺もキラッキラのキャンパスライフという奴を目指して、血の味を舐めるような努力をしたことはあった。何度心が折れそうになったが、それでも俺は志望校目指して頑張った。
受験期間は辛くも充実していた。
そして俺は見事受験に打ち勝ったのだ。
期待したさ、これから始まる新生活に。
夢を見たさ、共に青春を駆ける友の夢を。
俺は意気揚々と、四月の桜に満たされながらあの憧憬の門に足を踏む入れた。
だが、そこで見たものはーー
「ま、現実そう、うまくいかねえよな」
……ああ、心配しなくても良いぜ。今は今で楽しくやってる。
最近じゃ部屋に居ながら金を稼ぐ手段も確立してきた。
俺は親に迷惑をかけない引きこもりだ。
こうやって物語の冒頭に引きこもりアピールするのは異世界転生ものっぽいが、俺は断言する。
「異世界転生なんてくそ喰らえ」
火星にいるイキリオタク共の話によると、異世界っていうのは一応あるらしい。
あいつらは、観測しただけとかほざいていたけどよ、多分行っちゃってるんだろーな。21世紀から生きてる長老組とか異世界発見会見の時にホクホクしてたし。
「オタク共は良いよなぁ」
あいつらには未来がある。先を進んでいる感がある。対して、俺らはロストテクノロジーの復活をするので精一杯だ。
「まっ、社会のことを考えてもしゃあない」
そんなことより、一番の議題はこれからどうするかである。
仕事は論外。だとすると寝るか、食うか、アニメ見るか、ラノベ読むか。
俺の行動の選択肢はこれだけだ。
おい、お前もオタクじゃねぇかって言った奴、ぶっ殺すぞ。俺をあんなイジメられたから戦争して地球出た奴らと一緒にすんな。
俺はオタじゃない。俺は清潔感のあるオタだ。
清潔感っていうのが肝である。これがなけりゃ、隠れオタか、キモオタになっちまうからな。
「飯を食うか」
架空の観客と漫才するのは楽しいのだが、ずっとやってると腹が減る。漫才は戦だ。
昔の人も、腹が減ってはノリツッコミは出来ぬとか言ってたしな。
待ってろ、文系共が理系の十倍くらい時間をかけて復活させた冷凍パスタ!!
俺は冷凍庫の中を開ける。そこにぎっしり収納されているのは、各種冷凍食品達。
「今日はボンゴレにしよう」
ふん、ふふん♪ さて、外袋をはずして……。
視界が揺れる。酷い頭痛や耳鳴りが電流のように駆け巡った。
頭をおさえて俺はその場にうずくまった。
なにが……。
その瞬間、俺の意識は暗転した。
ー謎の草原ー
頬に触れる涼やかな風。
鼻をくすぐる草の香り。
俺は静かに目蓋を開いた。
目に映るのは、どこまでも続く大空。
美しい蒼穹は抜けるように澄んでいる。
だが、おかしいな。俺はさっきまで自分の部屋に居たはずなんだが。
俺は慌てて起き上がり、辺りを見渡した。
草原。
草原しか見えない。
え、おいおい、嘘だろ。いや、確かに異世界行きそうな雰囲気はしてたよ。でも、本当にそうしなくても良くない? ていうか転移の方法がさ、意識無くなるみたいでめっちゃ怖かったんだけど。もっと旅の扉みたいな感じにしようよ。フワンフワンってさ。
俺は一通り文句を上げた後、冷静になった。
落ち着くんだ、健人。俺は琴線に触れると騒ぎまくるイキリオタでもないし、夏は海とか言ってBBQ始めるリア充でもない。クールだ。俺は暁美ほ●らになるんだ。
「……ていうか、本当に異世界なのか?」
周りを見渡してみる。
青い空。白い雲。
飛んでいるのは大きなトカゲ。
「……」
うん、これ異世界だわ。あのサイズのトカゲが空を飛ぶなんて魔法でもなけりゃ無理だわー。てかドラゴンでしょ? あれ。
あー、やってらんね。
俺は、地べたに座り込む。俺の立っている所は背の低い牧草地のような草原だ。RPGだったら始まりの草原って名前つけられそう。
にしても転移か。うーん。
俺は一つ思い当たる節があった。俺は空を見上げて、叫んだ。
「おーい、オタク共ー。どうせ見てるんだろぉー。出てこいよー。一緒にごち●さ談義しようぜー」
そう、これはオタク共が計画したものではないか、という疑念だ。
普通、これで答える馬鹿は居ない。だが、相手はヲタだ。常に同族に飢えている寂しがり屋達だ。
反応はすぐだった。天の声みたいに話声が響く。
『おい、ご●うさ談義だってよ。拙者、結構行きたい味が強いんだが』
『いやいや、駄目だろ常考。っていうか、スピーカーONになってるじゃん!』
バッチリ聞こえてるぜ。俺は、ぐっと親指を上に向けた。
『うわぁ、あの人絶対気付いてるよ。だってグッジョブだぜ。もうこれ行っても良いんじゃね?』
『それでも駄目だ。おい、コラ。止め……行くなー!!』
なんか急にヤコブの梯子が降りてきて、小太りの天使が降臨した。
「難民キャンプはここですか?」
違います。
「ええー。ごちう●談義って言ったじゃん」
撒き餌に決まってるだろ。っていうか、ナチュラルに心を読むなよ。
「ご●うさについて話そうぜー。お前はチマメ隊誰押し?」
マヤ、っていうかその議論は戦争を呼ぶからやめろよ。
「マヤかぁ。リゼとの絡み良いよな」
お、分かってるじゃん。ごちうさっていうのは、テーマとして夢とか将来に悩む少女達っていうのがあるからな。マヤちゃんがリゼに進路相談するところとかぐっとくる。
お前は?
「チノ」
確かに可愛いしな、チノ。誰との組み合わせが好きなの?
「リゼの特訓」
やっぱリゼは誰と合わしても良いってことだな。
「だよなー」
うんうん。
って、そうじゃねぇよ!
「ん? どーしたの、急に騒いで」
いや、騒いでないし。俺、結局異世界開幕から一言も喋ってないし。
そ、れ、よ、り、も。
質問があるんだよ、質問が。
「チノちゃんの携帯の機種?」
ちげえよ。なんでそれだと思ったんだよ。
ソニーに決まってるだろ! 見たやつなら誰でも知ってるわ!!
そうじゃなくてよ。なんで、俺はここに飛ばされたんだ? いくらお前らが頭おかしいヲタだとしても、流石に通りに合わないと思うんだが。
事実上、拉致だぜ?
「許可はもらってるよ」
許可だぁ? 誰の許しを貰ってるんだよ。
「君自身の」
はぁ、どういう……あ、待て。言わなくていい。分かったぞ、未来の俺に聞いたんだな?
「よく分かったな! 流石、地上の大オタクと呼ばれる和田健人だわ」
巫山戯んな。俺はオタクじゃねえ。
「へえ、噂通り否定するんだ」
ったく。それで、お前らの目的はなんだ? わざわざ俺を異世界転移させる理由を言えよ。
なんかごちうさ談義してたら異世界感がさっきから薄れてるけどよ。
「うーん。実験?」
言えねって訳か?
「いや、そうじゃなくて。説明があったんだけどその時寝てた」
おいおい高校生じゃないんだから、ちゃんとしろよ。よくそれで首にならねえな。
「うちの会社、そういうのないからね」
甘ったれた社会だな。
「それな!」
俺らがそうやって楽しくお喋りしている間、このオタクの相方の難民じゃない方のオタクがずっと叫んでいたが、俺らは聞こえないふりをして、結局夜になるまで話は続いた。
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「じゃあな! 兄弟。強く生きろよ」
オタクが天に昇りながら、ブンブンと手を振る。
俺もそれに応えて泣きながらブンブンと腕を振る。
「じゃーなぁー。お前、オタクだげど良い奴だったよ。おで、おで頑張るがら゛」
「元気でなー」
「まだ会おゔなー」
俺はオタクとお別れをした。さっきから光が差していた空から、明るさが消えて本来の夜の暗さに戻る。
天の声も聞こえない。
「あいつら、良い奴だったな」
ごちうさ談義からそのアニソンと色々と話が飛んでいって、最終的に運命を信じるかどうかなんて哲学的論議に変わったことは今でも不思議で仕方ないが、楽しい時間だった。
「さて、これから頑張るか」
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