異世界生活に求めるはただ幼女と共にあることのみ

ジェロニモ

文字の大きさ
8 / 23

7話

しおりを挟む
 「女神様が救ってくれた命、何か意味があるのかもしれません。
どうも悪人というわけでも無さそうです。ローガンさんはどう思いますか?」

 やっとこさ現実世界に戻ってきたアーラさんがコホンと咳払いをして姿勢を正した。心なしか顔が少し赤らんでいる。

「まぁ大丈夫なんじゃないですかね。少なくとも何かあったら対処可能なレベルでしょう。裏表があるずる賢いタイプでもなさそうだ。」

 これは褒められているのだろうか。ローガンさんの評価が思ったよりもプラス気味で意外だった。

「まぁそうですね。魔素もないので丸腰にさせておけば問題なく対処できるでしょう。」

「魔素?」

 僕は新しく出てきたワードに思わず口を挟んだ。
僕のそんなつぶやきにアーラさんはきょとんとした顔で返事をした。

「ああ。異世界には無いのでしたね。いわゆる私達が魔法を使う為の原料といったところでしょうか。こんな風に。」

 そう言ってアーラさんはピンと人差し指を立てた。そしてそこに青い火が灯る。
おー。カッコいい。

「魔法は私達が暮らす上で必要不可欠な存在ですからね。
 普段から当たり前に使っている魔法を見せるだけでこうも驚かれると変な感じです。
視線が少しくすぐったいです。」

アーラさんは顔を赤くしてクスッと微笑んだ。
白い肌のキャンバスが薄っすらとピンクに染めあげる様は絵的に良く映える。

「僕はそれが無いと。」

自分で聴いておいてなんだが、少し嫌な予感がしてきた。

「そうですね。信じられませんが。
普通生きとし生きるもの全てに、果てには無機物ですら魔素を宿しています。ですが貴方にはそれが無い。
私とローガンさんがアミティちゃんを見つけた時のことを覚えていますか?」

「ええまあ。まだ日も跨いでいませんから。」

「おかしいと思いませんでしたか?
 居場所もわからないアミティを私達は一日と立たず見つけることができたということについて。」

 言われてみればそうだ。あの時はひどい豪雨で状況は最悪。森の中から人をピンポイントで探すなんて、そうそうできることでも無い。けれど彼女達は雨が治り始めてからすぐに僕たちのところまで来た。

 僕が歩いて来た村までの距離から考えて、彼女達は豪雨の中で探しに来ていたはずなのだ。
視界も悪い中、いくらなんでも早すぎる。

「私達は周りにある魔素を感じ取ることができます。私は森でアミティの魔素を見つけて、貴方達が雨宿りしていた所まで駆けつけたんです。ですがそこに貴方の反応はなかった。」

「俺が最初おめぇに矢を向けちまったのもそれがあったからなんだよ。いもしねぇ奴がアミティちゃんのすぐ後ろに居たんだからな。普通ありえねぇ。

しかもほぼ全裸ときたもんだ。
言い訳ってわけじゃないが、それくらいあの時のおめぇは異質な存在だったんだよ。」

少し顔をしかめて、申し訳なさそうにローガンさんが言った。
確かにそれは僕という存在がご迷惑をおかけしました。

「探査も万能というわけではありませんけどね。
魔素を感知できる範囲には限りがあって、個人差もあるんです。
これでも私は村の中で1番広いんですよ。それでアミティの捜索に協力したという次第です。」

「まぁそうは言っても俺と5メートルも変わらないくらいの差ぁだったんだが、姐さんが死んでも自分も行くって……」

「ローガンさん。余計なことは言わないように。」

 アーラさんが話しているローガンさんを物凄い眼で睨みつけていた。
 小動物くらいなら殺せるんじゃないかという殺気がピリピリと伝わってくる。
 
「へ、へぇ。わかりゃした。」

ローガンさんが裏返った声で返事をした。額にじわっと汗が浮かんでいる。多分あれは脂汗だろう。触ったらヌメッととしているに違いない。

 それにしてもなるほど。魔素を感知できる範囲が広くなかったアミティちゃんは村までの帰り道が分からなかったということか。

アーラさんが気を取り直すようにゴホン!と大きめのわざとらしい咳をした。

「おそらくこの世界で、貴方は魔素という観点から見ると存在していないようなものなのでしょう。
 目には映る、触れもする。けれど魔素で感知しようとした時、貴方は透明人間になる。と、そのように考えておけば良いと思います。

まぁ心配せずとも大丈夫ですよ。魔素が無い環境で正常に暮らしていたというのなら、問題ないでしょう。こうしてちゃんと貴方はここに生きていますから。」

アーラさんはそう言って僕の肩をポンと触った。

「そうだな。道中はナイフの柄で散々小突きまわせたしな!
難しいことは良く分かんねぇけんど、
おめぇさんはここにちゃんと居る。それだけゃ確かだ。」

ローガンさんも声を出して笑いながら僕の背中をバシバシと痛いくらいに叩いてきた。

 そんな2人の行動に、なんだか胸の奥がじんわりと暖かくなる。

 普通二度目の人生などあり得ない。
やはりこの世界は全て僕が見る夢なんじゃないかと、心のどこかで不安がっている自分がいた。
 死んだはずが生き返って異世界から来たという話を1番信じられていなかったのは僕自身だったのだ。

けれど僕はこうしてここに生きていると認めてくれる人がいる。
 それだけで僕の中から不安や疑いが綺麗に消え去った。
胸のところに溜まっていたモヤモヤがすーっと消えて、視界の色彩も鮮明になっていく。
ようやくこの世界が僕にとって現実に変わったのだった。


そういえば僕には魔素がないとい聴いて一つ気になっていることがある。聴きたくはないがここで聴かなければ絶望を先送りにするだけである。

「あの。そういえば僕って魔法使えるんですかね。こう炎ボワーって出したり……。」

「それはその……。まぁ魔法が使えなくても死ぬわけじゃないですからね!」

アーラさんは目を盛大に泳がせながら言った。

『魔法は私達が暮らす上で必要不可欠・・・・・な存在ですからね。』

 『普段から当たり前に使っている・・・・・・・・・・魔法を見せるだけでこうも驚かれると変な感じです。』

 ふと僕の頭の中で先ほどのアーラさんの言葉が繰り返された。

この世界で僕はまったくの役立たずの無能だった。

僕は涙が零れ落ちそうになるのを必死に堪えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

没落港の整備士男爵 ~「構造解析」スキルで古代設備を修理(レストア)したら、大陸一の物流拠点になり、王家も公爵家も頭が上がらなくなった件~

namisan
ファンタジー
大陸の南西端に位置するベルナ子爵領。 かつては貿易で栄えたこの港町も、今は見る影もない。 海底には土砂が堆積して大型船は入港できず、倉庫街は老朽化し、特産品もない。借金まみれの父と、諦めきった家臣たち。そこにあるのは、緩やかな「死」だけだった。 そんな没落寸前の領地の嫡男、アレン(16歳)に転生した主人公には、前世の記憶があった。 それは、日本で港湾管理者兼エンジニアとして働き、現場で散った「整備士」としての知識。 そして、彼にはもう一つ、この世界で目覚めた特異な能力があった。 対象の構造や欠陥、魔力の流れが設計図のように視えるスキル――【構造解析】。 「壊れているなら、直せばいい。詰まっているなら、通せばいい」 アレンは錆びついた古代の「浚渫(しゅんせつ)ゴーレム」を修理して港を深く掘り直し、魔導冷却庫を「熱交換の最適化」で復活させて、腐るだけだった魚を「最高級の輸出品」へと変えていく。 ドケチな家令ガルシアと予算を巡って戦い、荒くれ者の港湾長ゲンと共に泥にまみれ、没落商会の女主人メリッサと手を組んで販路を開拓する。 やがてその港には、陸・海・空の物流革命が巻き起こる。 揺れない「サスペンション馬車」が貴族の移動を変え、「鮮度抜群の魚介グルメ」が王族の胃袋を掴み、気性の荒いワイバーンを手懐けた「空輸便」が世界を結ぶ。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界のんびり放浪記

立花アルト
ファンタジー
異世界に転移した少女リノは森でサバイバルしながら素材を集め、商人オルソンと出会って街アイゼルトヘ到着。 冒険者ギルドで登録と新人訓練を受け、採取や戦闘、魔法の基礎を学びながら生活準備を整え、街で道具を買い揃えつつ、次の冒険へ向けて動き始めた--。 よくある異世界転移?です。のんびり進む予定です。 小説家になろうにも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ
恋愛
教師との悲恋、そして突然の死をもって転生をした少女、シャーロット・ジェム。凍れる国にて、小さな魔法屋を営んでいた。名門学園からの推薦状が届いたことにより、平和だった日々に暗雲が訪れるように。 今世も彼女に死は訪れる――未来を望むには二つ。 ――ヤンデレからもたらされる愛によって、囲われる未来か。そして。 ――小さくて可愛いモフモフ、女神の眷属と共に乗り越えていくか。 鳥籠に囚われるカナリア色の髪の少女、ヤンデレホイホイの彼女が抗っていく物語。 生きていく物語。 小説家になろう様でも連載中です。

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

処理中です...