読書部の日常〜ポンコツ系美少女な部長とただ駄弁るだけの不毛なる学園生活〜

ジェロニモ

文字の大きさ
16 / 34

クラス異世界召喚物に備えて鞄に入れる物について(実践編)②

しおりを挟む
 ざざーんと耳に響く心地よい波の音色に意識が覚醒した。
 目を開けると、目の前では水平線へと赤色の太陽が沈みかかっていた。

 僕は目を痛いくらいにこすった。そしてもう一度見てみる。

 そう。水平線だ。つまりは海。
 それに、記憶が正しいのなら、僕はさっきまで隅田さんとお喋りをしていたはずなのだが。それも昼前の学校の校門前で。

 僕は混乱しながらも周りを見渡す。現状を把握する為に、少しでも情報を取得しようと思ったのだ。

 目の前には水平線、下には砂浜、そして極み付けに、引いては寄せてくる波に、僕の足、靴が浸ってびしょ濡れになっていた。

 情報を把握したら余計に現状がわからなくなった。ここはどこで僕は一体何をしているのだろう。

 波が僕の体にザバンと軽い衝撃を与え、引いていき、寄せては引いてを繰り返し、その度に水に濡れる範囲が広くなっていった。今では下半身全てが水浸しだ。

 おそらく潮が満ちてきたのかなと現実逃避気味に考察しながら、これ以上塩水に洗われるのは御免被りたいので、やっとこさ僕は立ち上がった。

 海に背を向けてみれば、視界に広がるのは夏らしく生い茂った木々が森を形成していた。
 日が落ちかけていることもあって、薄暗くて、たまに風になびいて音を立てるのが薄気味悪い。
 なんだか森に入るのも怖くて、水に濡れない辺りまでざっくざっくと砂を踏みしめて歩いて、そこに座ってまたぼーっと水平線に沈む夕日を見ていた。

 僕はふと、あのサン=テグジュペリの著名な本の中、小さな惑星の上で椅子を少しずつずらしては夕日を何度も楽しむ星の王子さまのことを思い出していた。    
 僕の場合、彼とは違って夕日を見る行為は現実逃避のツールなのだけど。

 ジュっと太陽が鎮火するように、辺りは暗闇に包まれた。
 僕は仕方無しにポケットに入っていたスマホのライトで視界を確保する。
 今日ほどスマホが防水性でよかったと思った日はないだろう。

 塩水にさらされても大丈夫。そう、防水のスマートフォンならね! 
 まぁ、多分そういうことだ。

 ふと、ピカーと辺りを照らしていたら、森の入り口あたりに僕の鞄が落ちているのに気づいた。
 そして、そこに並ぶようにどでかいボストンバッグに、今朝がた? なのかも分からないが僕が気を失う前に隅田さんが背負っていた山籠りでもするかのようなパンパンのリュックサック。

 ああ。やっぱり居るよね。というか、多分僕をこの状況に陥れた犯人だろう。だって3時間前までぐっすり寝てたにも関わらず、麻酔をかけられたみたいに不自然な眠気だったし。

 多分、隅田さんに渡されたオレンジジュースに睡眠薬でも入ってたんじゃないだろうか。
 部長から差し出されたジュースなど怪しさ満点で口をつけることなどなかっただろうが、思わぬ伏兵にしてやられたらしい。

 睡眠薬で眠らせ、砂浜に投棄。うん、普通に犯罪だ。
 あのまま寝てたら僕は今頃波にさらわれて、溺死してたに違いない。もはや殺人未遂の域。

 森の方から明かりの線が2つ、ライトセーバーみたいにブンブンと揺れた。
 部長の独り言のような隅田さんとの会話も聞こえる。
 どうやら犯罪者達のお見えらしい。

 そして、近づいてきた2つの光は揃って僕の顔を照らした。眩しくて僕は手で顔を覆う。

「あら。おはよう。思ったより起きるの遅かったわねー。ていうかえっ! 下半身びちょびちょじゃない! なに?もしかしてお漏らししちゃったの?」

 顔のライトが下半身に集中した。そそそ、と部長が森の方へと後ずさる。

「潮が満ちてきて溺れかけてたんですよ。もうちょっと起きるのが遅かったら死んでましたよ……。」

「あ。そういえばそういう現象があったわね。ホント、波がすぐそこまで来ちゃってるじゃない。荷物が濡れちゃうところだったわ。危ない危ない。」
 
 部長は安心したかのように額の汗を拭いながらホッと息を吐いた。

「いや、まず自分が殺人を犯しそうになったことを悔やんで、僕に謝罪してくださいよ。」

「はいはいごめんなさい。これでいいんでしょう?」

 部長がひらひらとうざったそうに手を振った。
 僕はこれほどまでに心のこもっていない謝罪を人生で初めて見た。

『すいませんでした。』

 隅田さんの手にある薄暗い光を放つスマホにそう書いてあった。
 僕が視線をやると、ペコペコと頭を下げる。

「まさか隅田さんにも裏切られるとは……完全に油断してたよ。」

 相変わらず隅田さんはペコペコと頭をヘビメタみたいに上下に振る。
 今後、僕は他人から出された飲み物には手をつけないということを誓った。

「で、結局ここどこなんですか。」

 合宿という前提が間違いでないのなら、ここがその合宿の舞台ということだろうか。少なくとも近所にこんな浜辺はない。

「ここはパパが持ってる無人島よ!」

 よくぞ聴いてくれたと言わんばかりに、部長はふふんとしたり顔で言い放った。

「はぁ?」

 僕は間抜けな声を上げる。いや、無人島? 島? 周囲を海で囲まれてるあの島 ?
 僕は自分の耳を疑った。

 しかしこの場合、僕の耳はおかしくなっていないと思うので、おかしいのは部長の頭の方がだろう。

「ふっふっふ。あまりのサプライズに大層驚いている様子ね!
喜びなさい後輩君。今日から一週間、私たち読書部は異世界の人里離れた孤島に転移した場合のサバイバルのシュミレーションを行うわ!」

 部長は話はワハハハと女子高生とは思えない、悪の親玉みたいな笑い声を高らかに天高く響かせた。
 
 何が何だか分からないが、とりあえず合宿の情報が開示された。


合宿場所、無人島。

目的、異世界でのサバイバルのシュミレート。

 部長は高笑いをあげ、隅田さんは僕にペコペコ頭を下げ、僕は海を呆然と眺める。
カオスな状況の中、僕たちの長い長い一週間が始まった。



合宿、開始。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。

クラスで3番目に可愛い無口なあの子が実は手話で話しているのを俺だけが知っている

夏見ナイ
恋愛
俺のクラスにいる月宮雫は、誰も寄せ付けないクールな美少女。そのミステリアスな雰囲気から『クラスで3番目に可愛い子』と呼ばれているが、いつも一人で、誰とも話さない。 ある放課後、俺は彼女が指先で言葉を紡ぐ――手話で話している姿を目撃してしまう。好奇心から手話を覚えた俺が、勇気を出して話しかけた瞬間、二人だけの秘密の世界が始まった。 無口でクール? とんでもない。本当の彼女は、よく笑い、よく拗ねる、最高に可愛いおしゃべりな女の子だったのだ。 クールな君の本当の姿と甘える仕草は、俺だけが知っている。これは、世界一甘くて尊い、静かな恋の物語。

処理中です...