読書部の日常〜ポンコツ系美少女な部長とただ駄弁るだけの不毛なる学園生活〜

ジェロニモ

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クラス異世界召喚物に備えて鞄に入れる物について(実践編)合宿六日目 ②

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「おー来たわね。じゃあ乗りましょうか。着替えも用意してくれてるみたいだから、雨に濡れても大丈夫よ。スマホなんかの濡れちゃ困るものだけ守って行きましょう。」

 目の周りを赤く腫らして、少し充血気味の目をした部長がそう言って、海の向こうからやってくる大型のクルーザーを見てそう言った。

 隅田さんは頷いて部長について浜辺に駆けて行った。

 クルーザーに驚いているのは僕だけらしい。クルーザーといえば金持ちの持ち物というイメージである。庶民にはあまり縁がないものだ。それも部長の言い草からプライベートクルーザーらしいし。
 来年の合宿はあのクルーザーでクルージングの旅で良いんじゃないだろうか? 

 てっきり普通のちっこい船が来るかと思っていたので、しばらく開いた口が塞がらなかった。

 僕も遅れて二人を追いかけようとすると、パキリと背後の森の方から枝を踏みつけるような音がしてビクッと後ろを振り返ると、木の陰からメイド服の女性が出てきた。

「どうも。お嬢様のご学友の方。お嬢様のお父様の秘書をやらせて頂いています、宮戸と言います。今回は陰からボディーガードのようなことをさせられていました。よろしくお願いします。」

と、女性は頭を下げてきた。

 大人無しでの未成年三人だけの無人島とかおかしいとか思ってはいたのだが、そういうことかと納得した。つまりこの人、ずっと何処かで僕らを監視してたってことなんだろうか。全然気づかなかったけども。というか、「ボディーガードのようなことをさせられていた」ってなんだ。まるで強制させられてたみたいに。

「あ、どうも。部長とはした、親しく?」思わず自分で首を傾げた。「させて貰ってます。……あの、メイド服って現実でメイドカフェ以外で着てる人がとか居るんですね。いや決してバカにしてるわけではないんですけど。」

男なら誰もが憧れるメイドさん。メイドカフェにさえ行ったことがなかった僕は興奮を隠しきれなかった。

「ああ。これは幼少のお嬢様が、秘書のことをメイドの勘違いしていたらしく、『なんでメイドなのにメイド服着てないの?』と仰られやがって。親バカの組長に半強制的にメイド服の着用を義務付けられたんです。」

 どうやら彼女は幼き日の部長とその父親の被害者のようだった。
「大変そうですね。」
部長の被害者というところに親近感か湧いた。

「まぁその分給料をそれまでの倍に上げさせたので良いんですけどね。」

 彼女はさらっとそう言って、僕の感じていた親近感は消え失せた。被害者……なのか? とにかく強かな人らしい。

 彼女はジロジロと僕を品定めするように見てきた。

「男の子と部活をしていると組ちょ、社長が怒り心頭だったのですけど、美少女二人と共に一夜を過ごしても何も起こさない玉無し野郎で安心しました。お陰で良い報告が出来そうです。これで私の給料アップ待った無しですよ。感謝します」

 最初の挨拶の時よりも深くお辞儀をしてきた。正しい紳士的選択をしたはずなのに、複雑な気分である。

「まぁ間違いが起きでもしてたらこうでしたよ。こう。」

宮戸さんは親指で首を切るような仕草をしてきた。

「ははは。気をつけないとですね。」

 流石に冗談だろう。娘に悪い虫がついたから駆除とか。それこそ本の中の話じゃあるまいし。

「まぁ実際には首を切るというよりは事故死に見せかけて、というか形になるかと思います。
 直接殺るのと違い、車や落下物、食中毒等に注意していれば回避が可能かと思いますので、その際は頑張ってくださいね。」

「はは。お、面白い冗談ですね。」

 彼女は無表情のままサムズアップしてきた。具体的な内容で真実味が増したが、流石に冗談……だよな。

「ああ。ちなみに私はお嬢様の恋愛には賛成派ですので。正直部屋で人形遊びをしているのを見てると心が痛くなるんですよね。早く誰か幸せにしてあげないかなーって。
 信じられますか?それぞれに名前つけて設定も与えてるんですよ。
 奇行や悪いことは多々しますが、悪意だけはないので仲良くしてあげてください。」

そう。部長は悪意はないのだ。素の性格が邪悪というだけで。

「はぁ。そこら辺はわかってますけど。」

「正直あなたと部活を始めてから面倒を起こすことが減りましてね、期待してますよ。ま、組長にバレたらやっぱりこうなので。上手くやってください。」

 宮戸さんはまた親指で首を搔き切るジェスチャーを見せつけてきた。

「いえ。まだ死にたくないので遠慮しときます。」

 部長の為っていうより、多分この人は自分の負担が減らしたいだけだと思う。

「そういえば玉無しでしたね。まぁ今はいいです。……ひとまず高校中は私も楽が出来そうですし。」

宮戸さんは最後にボソッと早口でそう付け加えた。ほらやっぱりそうだ! 大人汚い。

「伝えたいことは伝え終えました。私たちもそろそろクルーザーに行きましょ
う。ほら。お二人とも待ってますよ。」

 宮戸さんが指を指す方を見れば、クルーザーで部長たちが手を振っていた。

「ちょっとー!とっとと来なさいよトロいわねー!」

 部長がそう叫んで来た。そう。悪意はないのだ。悪意は。ただ言葉選びが壊滅的に下手なだけで。

「お嬢様は短気ですから。これ以上イライラさせないように走って行きましょう。」

「そうします。」

 そして僕らは駆け出した。

 そしてクルーザーまでの駆けっこは、めちゃくちゃ走りにくそうなフリッフリのメイド服を着ていた宮戸さんに惨敗することとなった。……こんなのなにかの間違いだ。

 そしてそれをしっかり眺めていた部長にゲラゲラと腹を抱えて大爆笑された。悪意はない? ふざけるな。部長は悪意に満ち溢れていた。

 そして隅田さんに至っては動画を撮影していた。
 そしてその動画のデータは部長と、なぜか宮戸さんのスマホに送られた。なぜそんな酷い仕打ちが出来るというのか。それも笑顔で。こいつら本当に人間なのか。

 こうして読書部のよくわからん合宿は終わり、同時に僕の黒歴史が一つ増えた。

 しかし黒歴史が出来るくらいでちょうどいいのかもしれない。
 黒歴史というのはいつだって不意に思い出して悶絶してしまうものだ。その度に忘れることなく、この合宿のことを一緒に思い出せるのならそれはそう悪いことでもないのかもしれない。

  そんな風に考えた僕はその日の夜、自分はなんて恥ずかしいことを考えたのかとベットで悶絶する羽目となり、黒歴史をまた一つ増やすこととなった。

合宿、終了。
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