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呪い再び 1
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囚人船は、監獄の代わりに囚人を閉じ込めておくための船で、ゼネーブ川に係留されている。
ただし、地球での囚人船とはいくつかの点で違いがあり、その一つは、終身刑の囚人が送り込まれるということと、もう一つは、この船には呪いがかけられていることだ。
地球では、呪いと言うのは観念的なものに過ぎないが、この世界では、呪いが本当に存在する。
呪いをかけるのは強い恨みを持って死んだ者だ。
そして、囚人船に送り込まれるということは、実質、死刑と同じで、送り込まれた者は直ぐに死ぬ。
水も食料も与えられず、両足には鉄の錘が着けられており、泳いで逃げることも出来ず、早晩、渇きと飢えで死んでしまうのだ。
こうして死んだ数知れない囚人の恨みが、凄まじい呪いとなってこの船にまとわりついている。
その為に、生きている者は、誰もこの船に近寄らない。
唯一、終身刑と決まった者達を乗船させる為に、半年に一度、役人達が船を横付けするが、その役人達は囚人船に乗り込むことはない。何故なら、囚人船に足を踏み入れた途端に、呪われるからだ。
実際、囚人船に足を踏み入れてしまった役人達の身の毛もよ立つ死に様が、数多く言い伝えられている。
とはいえ、ごく僅かだか、この呪いに耐える者が、この世界にはいる。スキルの力なのか、精神力が特に強いのか、それとも他に理由があるのか、どういった力が呪いに耐えさせるのかは分からない。
そして、そんな力を持つ者の中には、敢えてこの囚人船に乗り込んでくる者がいる。追い詰められて行き場の無くなった凶悪犯が、最後に逃げ込んだり、暫く身を隠す目的で乗り込んで来るのだ。
もっとも、この船に乗り込んで、生きていられるかどうかは、本人達にも分からない。それだけ、追い詰められて、一か八かの賭けで、この船に乗り込んで来るのだ。
しかし、呪いに耐え、渇きと飢えにも耐えて生き延びたとしても、いつまでも人ではいられない。
呪いをその身に取り込んだことで、生者でも死者でも無い存在になるとされる。
そして、そういった者達の上に君臨する者は、囚人船の王と呼ばれている。
夜になって、この囚人船に一艘の小舟が近づいて来て、囚人船の高い舷側に、身軽に飛び移った男がいた。
霧のような透き通った人影がいくつも現れて。その男に纏わりつく。
「俺は、アンデオンの闇ギルドのカースという、この船の主殿にお会いしたい」
男の声が聞こえたのか聞こえていないのか、人影は男の周りをぐるぐる回ると、
『吸えない、魂が吸えない』
『吸えない、魂が吸えない』
『吸えない、魂が吸えない』
人影達が、声にならない呟き声を上げる。
甲板には、数人の見張りいるが、誰もこの男を見向きもしない。
男は霧のような人影も見張りも無視して、囚人船の甲板を歩き、船尾にあるキャビンに入った。
キャビンの中で、入り口に背を向けた大きな椅子に座っている大男が振り向きもせずに、
「亡霊に魂を吸われない生者が来たか。何をしに来た?」と怒鳴った。
「これはこれは、囚人船の王、直々のお出ましとは光栄ですな」と男が言う。
「何をしに来たと聞いている。ここは生者の世界ではないぞ」
「依頼がございまして」
「依頼?報酬は何だ?」
「若い娘の魂ではいかがでしょうか?」
「うむ、若い娘の魂は、暫らく食っていないな。で、何を依頼する」
「この手紙に呪いをかけて頂きたい」
「魂が先だ」
「・・・・」
「先に魂を食わせろ」と凄む大男に対して、カースと名乗った男は怯むこともなく、懐から四角い石を取り出した。
「先に依頼をこなせ。さもなければ、この石をこの船に置いて帰るとしよう」と言って、その石を足元に置く。
大男は椅子ごと振り返り、
「ぐっ、破眼の儀式石か。この俺を脅すとはいい度胸だが、この代償は高くつくぞ」
「ふん、偉そうにしても、この石には逆らえまい。さあ、早くこの手紙に呪いをかけろ」と手に持っていた手紙を差し出す。
大男は、その手紙をひったくると
「〇▼*□◎▲」と、聞き取れえない言葉を唱えた。
「これで、その手紙は呪われたぞ」そういって手紙を投げ返す。
床に落ちた手紙を拾いながら、カースは、
「よし、報酬は明日にでも持ってこよう」と言い残して、その船から退散した。
次の日、「パティ様、陶芸組合から封書が届いています」とメイドの1人が、パティに封書を手渡した。
「何かしら?」と封書を受け取った途端、パティはバタリと倒れた。
「きゃぁ~、パティ様。誰か、誰か来て~」メイドの悲鳴と叫びが、第3騎士団の本部兼宿舎に響き渡った。
部屋のソファに寝ころんで自分のスキルのことを考えていた俺は、飛び起きて廊下に出た。
廊下にはパティが倒れており、メイドが必死になって、パティを揺り起こそうとしていた。
「どうした?」と俺が聞くと、
「パティ様がいきなり倒れて」とメイドが俺を見上げる。
「パティ、どうした?」と、床に膝を着いてパティの体を揺するが、パティの反応がない。
すぐに、クレラインとオーリア、ラミューレが集まり、少し遅れてテレナリーサにアンドレラ、ステーシアにアリシアまでが集まって来た。
「「「「どうした?」」」」
皆が聞くが、メイドはただ首を振って「パティ様がいきなり倒れて」と繰り返すばかりだった。
俺がパティを部屋に運こぼうと持ち上げると、パサリと、一通の封書が床に落ちた。
「その封書です」とメイドが、封書を指差して叫ぶ。
「封書が、どうかしたか?」とテレナリーサが。封書を拾おうとすると
「危険です」とアンドレラが、テレナリーサを抱き止めた。
「どうした?」とテレナリーサが聞くと
「その封書は呪われています」とアンドレラが叫ぶ。
『そういうことか。アンドレラがテレナリーサの護衛をしているのは、こういったものを察知するスキル持ちだからか』
この世界の人々のスキルとの向き合い方が、少し分かった気がした。
そんなことを思いながら封書をどうしたものかと考えていると、
「ダブリン殿、パティさんを早く部屋のベッドへ。私は、直ぐに、教会からシスターを呼ぶ。それまで、誰もこの封書に触らぬように。ラミューレとステーシア、この封書の番をしろ。誰も近寄せるな」
テレナリーサは、そう指示を出すと、アンドレラを連れて急ぎ足で去っていった。
俺は、パティを両腕に抱えて、俺達の部屋に入って、パティをベッドに横たえた。
パティはぐったりとしていて、揺すっても、頬を軽く叩いても、いっこうに目を覚まさない。
クレラインとオーリアも、心配しているが、見守るしかないようだ。
暫くすると、教会へシスターを迎えに行った馬車が戻り、テレナリーサがシスターを連れて戻って来た。
「この封書が呪わていると、アンドレラが言う。確かめて、呪われていたら、解呪してくれ」
「畏まりました。少しお待ちください」とシスターは応えて、持ってきた手提げカバンから、四角い石を幾つか取り出すと、封書の周りに置いて手を翳した。
暫らく、口の中でぶつぶつと呟いていたが、
「もう大丈夫です。これに掛けられていた呪いは解けました」
と、顔を上げる
「パティを見てやって欲しいんだけど」と俺が口を挟むと
「その方は?」
「その封書に触って、倒れたんだ」
「今、何処に?」
「部屋で寝かせている」
「見てみましょう」
俺達は、パティの寝ているベッドまでシスターを案内した。
ただし、地球での囚人船とはいくつかの点で違いがあり、その一つは、終身刑の囚人が送り込まれるということと、もう一つは、この船には呪いがかけられていることだ。
地球では、呪いと言うのは観念的なものに過ぎないが、この世界では、呪いが本当に存在する。
呪いをかけるのは強い恨みを持って死んだ者だ。
そして、囚人船に送り込まれるということは、実質、死刑と同じで、送り込まれた者は直ぐに死ぬ。
水も食料も与えられず、両足には鉄の錘が着けられており、泳いで逃げることも出来ず、早晩、渇きと飢えで死んでしまうのだ。
こうして死んだ数知れない囚人の恨みが、凄まじい呪いとなってこの船にまとわりついている。
その為に、生きている者は、誰もこの船に近寄らない。
唯一、終身刑と決まった者達を乗船させる為に、半年に一度、役人達が船を横付けするが、その役人達は囚人船に乗り込むことはない。何故なら、囚人船に足を踏み入れた途端に、呪われるからだ。
実際、囚人船に足を踏み入れてしまった役人達の身の毛もよ立つ死に様が、数多く言い伝えられている。
とはいえ、ごく僅かだか、この呪いに耐える者が、この世界にはいる。スキルの力なのか、精神力が特に強いのか、それとも他に理由があるのか、どういった力が呪いに耐えさせるのかは分からない。
そして、そんな力を持つ者の中には、敢えてこの囚人船に乗り込んでくる者がいる。追い詰められて行き場の無くなった凶悪犯が、最後に逃げ込んだり、暫く身を隠す目的で乗り込んで来るのだ。
もっとも、この船に乗り込んで、生きていられるかどうかは、本人達にも分からない。それだけ、追い詰められて、一か八かの賭けで、この船に乗り込んで来るのだ。
しかし、呪いに耐え、渇きと飢えにも耐えて生き延びたとしても、いつまでも人ではいられない。
呪いをその身に取り込んだことで、生者でも死者でも無い存在になるとされる。
そして、そういった者達の上に君臨する者は、囚人船の王と呼ばれている。
夜になって、この囚人船に一艘の小舟が近づいて来て、囚人船の高い舷側に、身軽に飛び移った男がいた。
霧のような透き通った人影がいくつも現れて。その男に纏わりつく。
「俺は、アンデオンの闇ギルドのカースという、この船の主殿にお会いしたい」
男の声が聞こえたのか聞こえていないのか、人影は男の周りをぐるぐる回ると、
『吸えない、魂が吸えない』
『吸えない、魂が吸えない』
『吸えない、魂が吸えない』
人影達が、声にならない呟き声を上げる。
甲板には、数人の見張りいるが、誰もこの男を見向きもしない。
男は霧のような人影も見張りも無視して、囚人船の甲板を歩き、船尾にあるキャビンに入った。
キャビンの中で、入り口に背を向けた大きな椅子に座っている大男が振り向きもせずに、
「亡霊に魂を吸われない生者が来たか。何をしに来た?」と怒鳴った。
「これはこれは、囚人船の王、直々のお出ましとは光栄ですな」と男が言う。
「何をしに来たと聞いている。ここは生者の世界ではないぞ」
「依頼がございまして」
「依頼?報酬は何だ?」
「若い娘の魂ではいかがでしょうか?」
「うむ、若い娘の魂は、暫らく食っていないな。で、何を依頼する」
「この手紙に呪いをかけて頂きたい」
「魂が先だ」
「・・・・」
「先に魂を食わせろ」と凄む大男に対して、カースと名乗った男は怯むこともなく、懐から四角い石を取り出した。
「先に依頼をこなせ。さもなければ、この石をこの船に置いて帰るとしよう」と言って、その石を足元に置く。
大男は椅子ごと振り返り、
「ぐっ、破眼の儀式石か。この俺を脅すとはいい度胸だが、この代償は高くつくぞ」
「ふん、偉そうにしても、この石には逆らえまい。さあ、早くこの手紙に呪いをかけろ」と手に持っていた手紙を差し出す。
大男は、その手紙をひったくると
「〇▼*□◎▲」と、聞き取れえない言葉を唱えた。
「これで、その手紙は呪われたぞ」そういって手紙を投げ返す。
床に落ちた手紙を拾いながら、カースは、
「よし、報酬は明日にでも持ってこよう」と言い残して、その船から退散した。
次の日、「パティ様、陶芸組合から封書が届いています」とメイドの1人が、パティに封書を手渡した。
「何かしら?」と封書を受け取った途端、パティはバタリと倒れた。
「きゃぁ~、パティ様。誰か、誰か来て~」メイドの悲鳴と叫びが、第3騎士団の本部兼宿舎に響き渡った。
部屋のソファに寝ころんで自分のスキルのことを考えていた俺は、飛び起きて廊下に出た。
廊下にはパティが倒れており、メイドが必死になって、パティを揺り起こそうとしていた。
「どうした?」と俺が聞くと、
「パティ様がいきなり倒れて」とメイドが俺を見上げる。
「パティ、どうした?」と、床に膝を着いてパティの体を揺するが、パティの反応がない。
すぐに、クレラインとオーリア、ラミューレが集まり、少し遅れてテレナリーサにアンドレラ、ステーシアにアリシアまでが集まって来た。
「「「「どうした?」」」」
皆が聞くが、メイドはただ首を振って「パティ様がいきなり倒れて」と繰り返すばかりだった。
俺がパティを部屋に運こぼうと持ち上げると、パサリと、一通の封書が床に落ちた。
「その封書です」とメイドが、封書を指差して叫ぶ。
「封書が、どうかしたか?」とテレナリーサが。封書を拾おうとすると
「危険です」とアンドレラが、テレナリーサを抱き止めた。
「どうした?」とテレナリーサが聞くと
「その封書は呪われています」とアンドレラが叫ぶ。
『そういうことか。アンドレラがテレナリーサの護衛をしているのは、こういったものを察知するスキル持ちだからか』
この世界の人々のスキルとの向き合い方が、少し分かった気がした。
そんなことを思いながら封書をどうしたものかと考えていると、
「ダブリン殿、パティさんを早く部屋のベッドへ。私は、直ぐに、教会からシスターを呼ぶ。それまで、誰もこの封書に触らぬように。ラミューレとステーシア、この封書の番をしろ。誰も近寄せるな」
テレナリーサは、そう指示を出すと、アンドレラを連れて急ぎ足で去っていった。
俺は、パティを両腕に抱えて、俺達の部屋に入って、パティをベッドに横たえた。
パティはぐったりとしていて、揺すっても、頬を軽く叩いても、いっこうに目を覚まさない。
クレラインとオーリアも、心配しているが、見守るしかないようだ。
暫くすると、教会へシスターを迎えに行った馬車が戻り、テレナリーサがシスターを連れて戻って来た。
「この封書が呪わていると、アンドレラが言う。確かめて、呪われていたら、解呪してくれ」
「畏まりました。少しお待ちください」とシスターは応えて、持ってきた手提げカバンから、四角い石を幾つか取り出すと、封書の周りに置いて手を翳した。
暫らく、口の中でぶつぶつと呟いていたが、
「もう大丈夫です。これに掛けられていた呪いは解けました」
と、顔を上げる
「パティを見てやって欲しいんだけど」と俺が口を挟むと
「その方は?」
「その封書に触って、倒れたんだ」
「今、何処に?」
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俺達は、パティの寝ているベッドまでシスターを案内した。
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