64 / 129
2人のラミューレ
しおりを挟む
翌朝、ルビーに、
「随分うなされていたけど、大丈夫か?」と声を掛けようとすると、ショートカットの髪が顔を包んでいるので驚いた。
「一晩で、髪が伸びたのか?」と聞くと、
『この髪は、私の触手だ』と、ルージュから返事があった。
昨日、道具屋と武器屋と宿屋の入口の取っ手に貼り付けたルージュの欠片から、ルージュに大量のスキルが流れ込んでいるらしい。
ルージュのスキルを確認すると、
鑑定1、目利き1、錬金術1、薬草採取1、調剤1、調薬1、酒造1、鉱物精錬1、鍛冶1、陶芸1、木工1、調理1、裁縫1、織物1、彫金1、交渉術1、暗算1、大剣術1、剣術1、短剣術1、棍棒術1、盾術1、大盾術1、投擲1、弓術1、回避1、喧嘩1、跳躍1、蹴り1、踏みつけ1、頭突き1、魔力探知1、聞き耳1、土魔法1、火魔法1、水魔法1、魔力回復1、酒豪1
たった1日で、これだけのスキルがドレイン出来ていた。
このスキルを、俺がルージュからドレインしておく。ただし、戦闘系スキルは、ほとんど俺が持っているスキルと重複している。
今日は、冒険者ギルドへ行って、ルージュの欠片を利用してスキルを集めようと考えている。冒険者の中には、スキルドレインに気付く奴がいるかもしれないから、ギルドの横に併設されている酒場兼食堂の食器やコップ、酒瓶などに、ルージュの欠片を付着させるのが自然でいいだろう。
冒険者ギルドの扉を開けると、俺達に視線が突き刺さる。その視線は、別に俺達だけでなく、誰が入って来ても同じように突き刺さる。
それを無視して、奥へ進もうとすると、
「今日は違う女を連れていやがる」と酒場から声が上がった。
俺はそれを無視して、さらに進もうとすると
「待てよ。その女の胸は揉まないのか?」
と、そいつが大声を上げ、周りの男達がゲラゲラ笑う。
すると、ルビーが立ち止まって、言い返そうとしたので、
「止めろ」と言って、肘を掴んで奥へと進む。
ルビーは、振り向きながら何か言いかけたが、俺の言葉が命令になったのか、口をパクパクさせただけで言葉が出ない。
それを見た酒場の男達が、更に大きな声で笑いだした。
何とかカウンターに着いて、ルビーの冒険者登録を頼む。
冒険者の金属プレートをルビーに受け取らせ、2人で酒場に入ろうとすると、先ほど大声で叫んでいた奴らが立ち塞がった。以前に、アリシアに追い払われた奴らだ。
そのとき、
『ルビーに任せな。精神干渉を試させてみる』と、頭の中でルージュの声がした。
ルビーが俺の方を見るので、頷くと、
「あんた達も、私の胸が揉みたいのかい?」と、ルビーが男達に色目を使う。
「何だ、商売女か」と1人の男が言うと、
「ちえっ、つまらねぇ、商売女を自慢そうに連れ歩くんじゃねえよ」と、別の男も同調して、ゾロゾロと元の席に戻って行った。俺が呆気に取られていると、
『上手く行っただろう』と、頭の中でルージュの声が聞こえた。
ルビーの方を見ると、素早くウインクしてきたので、頷き返しておく。
空いている席に座って、酒を頼もうとすると、
『ルビーがさっきの奴らに、もっと強い精神干渉を掛けるから、酒代を多めに渡してやりな』とルージュの声。俺は腰の袋から金貨2枚を出してルビーに渡す。
『これは何か、ルージュを間にして、話をせずに意思の伝達が出来ているのか?だとしたらルビーとルージュと俺は最高の組み合わせだぞ』
ルビーは、席から立ち上がってカウンターに行き、マスターに金貨を1枚渡して何か言葉を交わすと、酒ビンを手首の無い右腕で抱え込み、左手を5つのコップの内側に指を突っ込んで持つと、さっきの男達のテーブルに行き、
「どうだい、お近づきのしるしに一杯奢るよ」と言いながらコップをテーブルに置いて、酒ビンを左手で持って酒を注いで行く。
「へへ、話が分かるじゃねえか、こっちに来いよ」と伸ばされた手を、スルリと躱したルビーは、
「他の客達にも酒を奢りたいから、また今度ね~」と言いながらカウンターに戻る。
男達は、ルビーがコップの内側に指紋と一緒に付けたルージュの欠片を、何も疑わずに飲んでいく。
ルビーは、同じようにして、カウンターに寄ってはコップをもらい、堂々と内側に指を突っ込んで持っては、他のテーブルに行って、酒を注いで回った。
コップの内側を持たれても、それが綺麗な女の手なら誰も気にしない。そんな男達の下心を突いた上手いやり方で、この酒場に居た全員に、ルージュの欠片を飲ませてしまった。
酒場から出て宿屋に戻ろうとした俺達は、誰かがつけてきているのに気がついた。
『ルージュ、誰かがつけて来ている。ルビーにも伝えてくれ』
『とっくに気が付いているってさ』
『じゃあ、そこの横道に入って、最初の角を曲がった所で待ち伏せしよう』
特に深く考えないまま、待ち伏せを企んだ。だが、付けてきた奴は、いつまで経っても角を曲がって来ない。
『バレたか?』と思っていると、いつの間にか霧が出ていた。
『霧か、何故気付かなかった?』と思っているうちに、霧がどんどん濃くなって周りが見えなくなった。
『霧魔法だ。このままだとまずい。トルネードを2人の周りに創りな』
ルージュの指示に従って、トルネードを生み出して、自分達の周りに風の壁を創る。
『このままトルネードを維持しなよ。暫く時間がかかるが、持久戦だ。トルネードの中に、決して霧を入れちゃいけないよ』
ルージュの言う通りにトルネードを維持していると、ファントムファイアが現れて、トルネードに運ばれて俺達の周りを舞った。ルージュが仕掛けたのだろう。
見ていると頭がくらくらするので見ないようにしていると、突然、隣にいるルビーが、一気に3メートル以上踏み込んで、短剣を突き出した。
「グアッ」と悲鳴が上がり、黒いロープの人影が倒れ込む。ルビーは、その影が倒れる前に短剣を引き抜きざまに、刃の軌道を変えて首を掻き切った。
手品なような剣捌きに、見惚れていると
『トルネードを消して、相手を調べな』とルージュに言われて、倒れた奴のロープを巻くって顔を確かめると、全く見たことのない女の顔だった。
首筋の脈を確かめると、もう死んでいる。スキルをドレインして、
『こいつは誰だ?』と考えていると、
『任せな』とルージュが言う、
『◎△◎』ルージュが聞き取れない呪文を唱えると、死んでいたはずの女が動き出した。
『これでアンデッドのしもべが1体出来た』
『アンデッドなんてつくってどうするつもりだよ』
『とにかく、何者か聞いてみな』
『分かった』
「おい、お前は何者だ?』と、アンデッドを問いただす。
「私は、アンデオンの闇ギルドのフォグだ』
『何故、俺達を襲った?』
『闇ギルドの長の命令だ』
『そいつは、今、何処にいる?』
『王都まで、一緒に来た』
『それはいつだ?』
『3日前だ』
「3日前に王都に来ただと。ひょっとしたら、今頃、そいつはパティ達を襲っているかも知れない。ルビー、直ぐに帰るぞ」
俺達はそのまま、騎士団宿舎に向けて駆け出した。ルージュによってアンデッドになった女は、ルージュの後を追って、フラフラと歩き出した。
これが後に、王都の歩く死者として語り継がれる怪事件になる。
大慌てで、騎士団宿舎に戻ると、パティ達はスイートルームのドアの前に集まっていた。
「何をしているんだ?」と声をかけると、
「掃除をするからと、ラミューレに追い出されて」とパティ。
「ラミューレが掃除を?」確かに、俺はよく、テレナの部屋からラミューレに追い出されている。ラミューレは、こっちの部屋の掃除もしていたのかと思っていると、隣のドアが開いて、
「皆さん、こんなところで集まって何をしているんですか?」
テレナの執務室から、掃除を終えたラミューレが出て来て、俺達に声を掛けた。
「ラミューレ」
俺はスイートルームを指差して、
「こっちから入ったのか?」と聞くと、ラミューレは首を振る。
それはそうだ、スイートルームとテレナの寝室を繋ぐドアは、スイートルームの側からは開かない。
「ラミューレは、確かにここから部屋に入ったのか」とゼネラルソードを召喚して、パティ達に確認すると、皆が首を縦に振る。
全員が今の質問の意味が分かったようで、ドアから後ずさる。ルビーとクレラインとオーリアも剣を抜いている。
「皆、後ろに下がれ。ルビー突入するぞ」
俺はゼネラルアーマーを召喚し、スイートルームのドアを開けて、部屋の中に踏み込む。同時に、ルビーが、俺と壁の隙間から、部屋に滑り込んで来る。
部屋の奥では、掃除道具を持ったラミューレが、クローゼットの中を覗き込んでいたが、入って来た俺達に気が付いて、
「どうしたんですか~?」と緊張感のない声で聞いてくる。声と姿は、ラミューレにそっくりだ。
俺は、ゼネラルソードの剣先を向け、「お前は誰だ?」と誰何する。
「いやですよ~、私ですよ、ラミューレですよ」と、またしても緊張感のない声で答える。
「嘘を付け。ラミューレならここにいるぞ。ラミューレ入って来てくれ」
その声に応えて、ラミューレが俺の後から部屋に入ってくると、
「「あっ」」と、2人のラミューレが同時に声を上げる。そして、2人とも同時に相手を指差して、
「そいつは、偽物よ」
「そいつは、偽物です」
と、同時に叫ぶ。
俺はそれには構わず、
「ルビー、やれ」と合図をすると、ルビーが一瞬で部屋の奥に居たラミューレとの距離を詰めて斬り掛かった。
ラミューレは、その攻撃を躱すと「何をするんですか?」と叫びながら、壁に沿って逃げ、テレナの寝室に続くドアまで行って、そのドアを開けて逃げようとした。
これで、こいつが偽物だと確信出来た。そのドアが、こちら側からは開かないことを知らないからだ。
俺は、その動きを予想していたので、ドアの前に移動し、三半規管破壊魔法を撃ちながら、ドアを開こうとしてこちらに向けている背中に、ゼネラルソードを突き刺した。
「グアッ」と悲鳴を上げて動きが止まったところに、ルビーが追いついて来て、ゼネラルソードの下をくぐりながら、凄まじい技量で、そいつの背骨を切断した。
偽のラミューレの腰から大量の血が吹き出し、俺が剣を引き抜くと、体がドサリと床に落ちた。
そいつは、顔だけをこちらに向けて、何か言うように口を開きかけたが、口から大量の血が吐き出されて、ラミューレの顔が、見知らぬ男の顔に変わった。
俺は、ゼネラルアーマーを解除して、そいつからスキルをドレインすると、
『ルージュ、こいつにも呪いを』と、頼む。
ルビーが『◎△◎』と呪文を唱えて、そいつはアンデッドになった。
ルージュにアンデッドにされた死体を尋問することで、ラミューレに化けていた男が、ノーボディと呼ばれる、アンデオンの闇ギルドの長であることが分かった。
この男が持っていたスキルは、ノーボディといい、誰にでも化けることが出来るスキルだった。もっとも、物理的に化けるのではなく、相手に思い込ませる、精神干渉の上位互換のようなスキルだった。この為、アンデオンの長の本当の顔は、誰にも知られてないということだ。
闇ギルドの狙いは、やはり、パティの持っていた焼き物の欠片で、テレナリーサの不在を狙って、ラミューレに化けて、焼き物の破片を奪うという作戦だったことも、窯の中に、焼く前の陶器を入れて、店を燃やしたのが、この男自身だということも分かった。
そして、アンデオンの闇ギルドの幹部は、これで全滅したことも分かった。
★★★ 重要なお知らせ ★★★
この更新で、第1章は終了となります。
第2章については、構想がカタチになるまで、
連載を休憩いたします。
「随分うなされていたけど、大丈夫か?」と声を掛けようとすると、ショートカットの髪が顔を包んでいるので驚いた。
「一晩で、髪が伸びたのか?」と聞くと、
『この髪は、私の触手だ』と、ルージュから返事があった。
昨日、道具屋と武器屋と宿屋の入口の取っ手に貼り付けたルージュの欠片から、ルージュに大量のスキルが流れ込んでいるらしい。
ルージュのスキルを確認すると、
鑑定1、目利き1、錬金術1、薬草採取1、調剤1、調薬1、酒造1、鉱物精錬1、鍛冶1、陶芸1、木工1、調理1、裁縫1、織物1、彫金1、交渉術1、暗算1、大剣術1、剣術1、短剣術1、棍棒術1、盾術1、大盾術1、投擲1、弓術1、回避1、喧嘩1、跳躍1、蹴り1、踏みつけ1、頭突き1、魔力探知1、聞き耳1、土魔法1、火魔法1、水魔法1、魔力回復1、酒豪1
たった1日で、これだけのスキルがドレイン出来ていた。
このスキルを、俺がルージュからドレインしておく。ただし、戦闘系スキルは、ほとんど俺が持っているスキルと重複している。
今日は、冒険者ギルドへ行って、ルージュの欠片を利用してスキルを集めようと考えている。冒険者の中には、スキルドレインに気付く奴がいるかもしれないから、ギルドの横に併設されている酒場兼食堂の食器やコップ、酒瓶などに、ルージュの欠片を付着させるのが自然でいいだろう。
冒険者ギルドの扉を開けると、俺達に視線が突き刺さる。その視線は、別に俺達だけでなく、誰が入って来ても同じように突き刺さる。
それを無視して、奥へ進もうとすると、
「今日は違う女を連れていやがる」と酒場から声が上がった。
俺はそれを無視して、さらに進もうとすると
「待てよ。その女の胸は揉まないのか?」
と、そいつが大声を上げ、周りの男達がゲラゲラ笑う。
すると、ルビーが立ち止まって、言い返そうとしたので、
「止めろ」と言って、肘を掴んで奥へと進む。
ルビーは、振り向きながら何か言いかけたが、俺の言葉が命令になったのか、口をパクパクさせただけで言葉が出ない。
それを見た酒場の男達が、更に大きな声で笑いだした。
何とかカウンターに着いて、ルビーの冒険者登録を頼む。
冒険者の金属プレートをルビーに受け取らせ、2人で酒場に入ろうとすると、先ほど大声で叫んでいた奴らが立ち塞がった。以前に、アリシアに追い払われた奴らだ。
そのとき、
『ルビーに任せな。精神干渉を試させてみる』と、頭の中でルージュの声がした。
ルビーが俺の方を見るので、頷くと、
「あんた達も、私の胸が揉みたいのかい?」と、ルビーが男達に色目を使う。
「何だ、商売女か」と1人の男が言うと、
「ちえっ、つまらねぇ、商売女を自慢そうに連れ歩くんじゃねえよ」と、別の男も同調して、ゾロゾロと元の席に戻って行った。俺が呆気に取られていると、
『上手く行っただろう』と、頭の中でルージュの声が聞こえた。
ルビーの方を見ると、素早くウインクしてきたので、頷き返しておく。
空いている席に座って、酒を頼もうとすると、
『ルビーがさっきの奴らに、もっと強い精神干渉を掛けるから、酒代を多めに渡してやりな』とルージュの声。俺は腰の袋から金貨2枚を出してルビーに渡す。
『これは何か、ルージュを間にして、話をせずに意思の伝達が出来ているのか?だとしたらルビーとルージュと俺は最高の組み合わせだぞ』
ルビーは、席から立ち上がってカウンターに行き、マスターに金貨を1枚渡して何か言葉を交わすと、酒ビンを手首の無い右腕で抱え込み、左手を5つのコップの内側に指を突っ込んで持つと、さっきの男達のテーブルに行き、
「どうだい、お近づきのしるしに一杯奢るよ」と言いながらコップをテーブルに置いて、酒ビンを左手で持って酒を注いで行く。
「へへ、話が分かるじゃねえか、こっちに来いよ」と伸ばされた手を、スルリと躱したルビーは、
「他の客達にも酒を奢りたいから、また今度ね~」と言いながらカウンターに戻る。
男達は、ルビーがコップの内側に指紋と一緒に付けたルージュの欠片を、何も疑わずに飲んでいく。
ルビーは、同じようにして、カウンターに寄ってはコップをもらい、堂々と内側に指を突っ込んで持っては、他のテーブルに行って、酒を注いで回った。
コップの内側を持たれても、それが綺麗な女の手なら誰も気にしない。そんな男達の下心を突いた上手いやり方で、この酒場に居た全員に、ルージュの欠片を飲ませてしまった。
酒場から出て宿屋に戻ろうとした俺達は、誰かがつけてきているのに気がついた。
『ルージュ、誰かがつけて来ている。ルビーにも伝えてくれ』
『とっくに気が付いているってさ』
『じゃあ、そこの横道に入って、最初の角を曲がった所で待ち伏せしよう』
特に深く考えないまま、待ち伏せを企んだ。だが、付けてきた奴は、いつまで経っても角を曲がって来ない。
『バレたか?』と思っていると、いつの間にか霧が出ていた。
『霧か、何故気付かなかった?』と思っているうちに、霧がどんどん濃くなって周りが見えなくなった。
『霧魔法だ。このままだとまずい。トルネードを2人の周りに創りな』
ルージュの指示に従って、トルネードを生み出して、自分達の周りに風の壁を創る。
『このままトルネードを維持しなよ。暫く時間がかかるが、持久戦だ。トルネードの中に、決して霧を入れちゃいけないよ』
ルージュの言う通りにトルネードを維持していると、ファントムファイアが現れて、トルネードに運ばれて俺達の周りを舞った。ルージュが仕掛けたのだろう。
見ていると頭がくらくらするので見ないようにしていると、突然、隣にいるルビーが、一気に3メートル以上踏み込んで、短剣を突き出した。
「グアッ」と悲鳴が上がり、黒いロープの人影が倒れ込む。ルビーは、その影が倒れる前に短剣を引き抜きざまに、刃の軌道を変えて首を掻き切った。
手品なような剣捌きに、見惚れていると
『トルネードを消して、相手を調べな』とルージュに言われて、倒れた奴のロープを巻くって顔を確かめると、全く見たことのない女の顔だった。
首筋の脈を確かめると、もう死んでいる。スキルをドレインして、
『こいつは誰だ?』と考えていると、
『任せな』とルージュが言う、
『◎△◎』ルージュが聞き取れない呪文を唱えると、死んでいたはずの女が動き出した。
『これでアンデッドのしもべが1体出来た』
『アンデッドなんてつくってどうするつもりだよ』
『とにかく、何者か聞いてみな』
『分かった』
「おい、お前は何者だ?』と、アンデッドを問いただす。
「私は、アンデオンの闇ギルドのフォグだ』
『何故、俺達を襲った?』
『闇ギルドの長の命令だ』
『そいつは、今、何処にいる?』
『王都まで、一緒に来た』
『それはいつだ?』
『3日前だ』
「3日前に王都に来ただと。ひょっとしたら、今頃、そいつはパティ達を襲っているかも知れない。ルビー、直ぐに帰るぞ」
俺達はそのまま、騎士団宿舎に向けて駆け出した。ルージュによってアンデッドになった女は、ルージュの後を追って、フラフラと歩き出した。
これが後に、王都の歩く死者として語り継がれる怪事件になる。
大慌てで、騎士団宿舎に戻ると、パティ達はスイートルームのドアの前に集まっていた。
「何をしているんだ?」と声をかけると、
「掃除をするからと、ラミューレに追い出されて」とパティ。
「ラミューレが掃除を?」確かに、俺はよく、テレナの部屋からラミューレに追い出されている。ラミューレは、こっちの部屋の掃除もしていたのかと思っていると、隣のドアが開いて、
「皆さん、こんなところで集まって何をしているんですか?」
テレナの執務室から、掃除を終えたラミューレが出て来て、俺達に声を掛けた。
「ラミューレ」
俺はスイートルームを指差して、
「こっちから入ったのか?」と聞くと、ラミューレは首を振る。
それはそうだ、スイートルームとテレナの寝室を繋ぐドアは、スイートルームの側からは開かない。
「ラミューレは、確かにここから部屋に入ったのか」とゼネラルソードを召喚して、パティ達に確認すると、皆が首を縦に振る。
全員が今の質問の意味が分かったようで、ドアから後ずさる。ルビーとクレラインとオーリアも剣を抜いている。
「皆、後ろに下がれ。ルビー突入するぞ」
俺はゼネラルアーマーを召喚し、スイートルームのドアを開けて、部屋の中に踏み込む。同時に、ルビーが、俺と壁の隙間から、部屋に滑り込んで来る。
部屋の奥では、掃除道具を持ったラミューレが、クローゼットの中を覗き込んでいたが、入って来た俺達に気が付いて、
「どうしたんですか~?」と緊張感のない声で聞いてくる。声と姿は、ラミューレにそっくりだ。
俺は、ゼネラルソードの剣先を向け、「お前は誰だ?」と誰何する。
「いやですよ~、私ですよ、ラミューレですよ」と、またしても緊張感のない声で答える。
「嘘を付け。ラミューレならここにいるぞ。ラミューレ入って来てくれ」
その声に応えて、ラミューレが俺の後から部屋に入ってくると、
「「あっ」」と、2人のラミューレが同時に声を上げる。そして、2人とも同時に相手を指差して、
「そいつは、偽物よ」
「そいつは、偽物です」
と、同時に叫ぶ。
俺はそれには構わず、
「ルビー、やれ」と合図をすると、ルビーが一瞬で部屋の奥に居たラミューレとの距離を詰めて斬り掛かった。
ラミューレは、その攻撃を躱すと「何をするんですか?」と叫びながら、壁に沿って逃げ、テレナの寝室に続くドアまで行って、そのドアを開けて逃げようとした。
これで、こいつが偽物だと確信出来た。そのドアが、こちら側からは開かないことを知らないからだ。
俺は、その動きを予想していたので、ドアの前に移動し、三半規管破壊魔法を撃ちながら、ドアを開こうとしてこちらに向けている背中に、ゼネラルソードを突き刺した。
「グアッ」と悲鳴を上げて動きが止まったところに、ルビーが追いついて来て、ゼネラルソードの下をくぐりながら、凄まじい技量で、そいつの背骨を切断した。
偽のラミューレの腰から大量の血が吹き出し、俺が剣を引き抜くと、体がドサリと床に落ちた。
そいつは、顔だけをこちらに向けて、何か言うように口を開きかけたが、口から大量の血が吐き出されて、ラミューレの顔が、見知らぬ男の顔に変わった。
俺は、ゼネラルアーマーを解除して、そいつからスキルをドレインすると、
『ルージュ、こいつにも呪いを』と、頼む。
ルビーが『◎△◎』と呪文を唱えて、そいつはアンデッドになった。
ルージュにアンデッドにされた死体を尋問することで、ラミューレに化けていた男が、ノーボディと呼ばれる、アンデオンの闇ギルドの長であることが分かった。
この男が持っていたスキルは、ノーボディといい、誰にでも化けることが出来るスキルだった。もっとも、物理的に化けるのではなく、相手に思い込ませる、精神干渉の上位互換のようなスキルだった。この為、アンデオンの長の本当の顔は、誰にも知られてないということだ。
闇ギルドの狙いは、やはり、パティの持っていた焼き物の欠片で、テレナリーサの不在を狙って、ラミューレに化けて、焼き物の破片を奪うという作戦だったことも、窯の中に、焼く前の陶器を入れて、店を燃やしたのが、この男自身だということも分かった。
そして、アンデオンの闇ギルドの幹部は、これで全滅したことも分かった。
★★★ 重要なお知らせ ★★★
この更新で、第1章は終了となります。
第2章については、構想がカタチになるまで、
連載を休憩いたします。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
盾の間違った使い方
KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。
まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。
マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。
しかし、当たった次の瞬間。
気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。
周囲は白骨死体だらけ。
慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。
仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。
ここは――
多分、ボス部屋。
しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。
与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる
【異世界ショッピング】。
一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。
ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
タイム連打ってなんだよ(困惑)
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」
王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。
パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。
アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。
「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」
目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?
※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。
『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる