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最終章帰還

帰還#12

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カーテンの隙間から差す木漏れ日が、優を照らし影が現れる、その影は見る見る内に実体化し動き出す。

「うーん狭っ苦しい、お前の影は実につまらん、前の影は実に良かった、今日もアレやるか?お前好きだもんなアレ…」

仲良さげに話すもう1人の僕だったが、その気持ちとは裏腹に、優は影が怖かった、逆らえば自分が影にされてしまうからだ。

「早く手を出せ、これが欲しいんだろ?馬鹿だよ本当に…」

手渡したのは、兎の糞の様に丸い物だった。

「あはは、いつもありがとう、これがないと震えが止まらないんだ…あはは」

幼い優には、それが何かなど分かるはずがなかった、影はベッドに座り、その様子を不敵な笑みで見つめている。

「どうだ美味いか?今日のは調合を少し変えて見たんだ、よりハイになれる様にな…」

こんな生活がしばらく続きある日、予期せぬ事態が起きる。

階段を駆け上がる音「ドドドッ!」

お勤めが思いのほか早く終わった母は、久しぶりに優と話そうと、急いで帰って来たんだ。

「ザッ!優!はや…え?」

母は目を疑った、其処に居たのは母の思い描く光景とは全く違うものだった、言葉を失った母は、何も言わず扉を閉めてしまったそうな…続く
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