ホラー短編集【キグルミ】

AAKI

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4篇目タイトル【蘇生の回廊】

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「えぇ。しかも、ここを建てたのを最後に姿を消しているのだとか」
「今度こそ失踪と言えそうだねぇ」

 続く奈々の言葉に千春も反応を示す。不思議な話も嫌いではないといった様子だ。

「……はい。それで、この別荘を手掛ける直前に奥さんを亡くしていたのだとか」
「心が折れたとかそういう? 最後に全く別物を作るというのもわかりませんけど」

 淳平にはよくわからない世界の話。

「いずれにせよ、重要な人物が二人もいなくなっているわけです。正直、普通とは」
「ねぇ、それは良いとして、話して割と時間が経ってるよねぇ」

 奈々のセリフを切って千春が、誰も気づきたくなかったことを言う。スマフォの時計を確認すると、行雄たちが出発してから20分は経過していた。さすがに遅い。
 少し遅く歩いているとしてもそろそろ話し声くらい聞こえて来ても良い頃合いである。

「そんなはず、ないでしょ?」

 真吾は、ファンタジーやオカルトなど起こらないと信じて、されど時計回りに通路の向こうを確認した。
 いつもならおどけた風に振る舞う彼の顔は笑っておらず、淳平たちから死角になる空間を見つめている。

「……はぁ……はぁ、はぁ」

 数秒はそうしていたと思うが、自然と呼吸が早くなっていくのもわかる。声を上げないということは、そこに想像以上に恐ろしいものがあったというわけではないのだろう。

「行雄さん」

 小さく行雄の名前を呼んだが、返事はなく真吾の視線が通路の向こうを見つめて泳ぐ。
 何の冗談かと淳平が不安を吐き出そうとしたとき。

「お――」

 真吾は前に踏み出し進んでいく。まさか、本当に何かあるのではないかと不安になった。
 淳平もその後を追い、千春や奈々も自然と追従してくる。角を曲がった先に……心配したようなものは見当たらない。

「――そんなはず」
「見てくる」

 淳平は角を曲がるまではせず、反対側とを見比べる。真吾が、そのまま歩みを進めて向こう側を確認してくれると覚悟を決めてくれたから。
 そしてその姿がまた見えなくなって数十秒後。誰もが固唾を飲んで待つ中、順路の通りにやってきたのは真吾だけだった。

「高橋さんは……?」
「…………」

 淳平が聞くも、友は青ざめた顔をしながら首を横に振った。その場の誰もが背筋に嫌なものを感じたに違いない。

「じょ、冗談だよねぇ?」

 噂が本当だったというのが現実味を帯び始めてしまった。
 ただ、ここで千春がなんとかフォローしてくれる。

「どうせ驚かせようと隠れているんでしょう」
「全く、肝試しだからってタチが悪い」
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