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初心者イベント編
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なんとなくで押し付けられた仕事に、私はため息をつきそうになった。
確かに、私のサポートやラストアタックがあったからと言っても、"STR"が255もあるあのゴリアテを怖気づくことなく倒したのだものね。
ボス級モンスターだから経験点がっぽりでしょうし、実力だけなら一人前かもしれない。私のようにゲームが初めてのプレイヤーでもないのだろうから、オンラインゲームの基本がわかってる。
「……」
色々と推測してみて、ちょっと寂しくなった。将来、私が抜ける前に彼らに実力を積ませるつもりなのだから。
「……では、行きましょうか」
考えていても仕方ないので、私は合図を送って出ることにした。
「あの」
妙な間に感づいたらしい銃手の言葉はあえて聞こえない振りをする。
「整列なさい 私の可愛い四つ子 答えなさい 四つ子達の齢を クルクルと回るねじ巻きの ユラユラ揺れる幻に」
さっさとインベントリから杖を取り出し、【暗号施錠】の呪文を唱えて発動すれば錠前にいつもの数字の象が張り付いた。荷物に一つずつにそれを掛けて、幌馬車の荷車へと乗せて行く。
途中からは3人も手伝いに入り、先程の空気などどこかへ霧散した。
準備ができたのなら直ぐに発つつもりだったけど、そこへやってくるのはグレイザさんとMJさん。
「おぉッ?」
「マスターさんに書記長さん?」
先に気づいた戦士と拳闘士の声で、私も馬車から顔を出す。
珍しい組み合わせな上に、MJさんがいつものコスプレ姿ではないからちょっと警戒した。
今は頭に上げているけれど、顔の右上面を覆い隠せる鷲頭部を意匠化したお面など、戦闘モードに入ったときの格好だ。服装だって、襟首の立った黒のポンチョである。
せめてもの抵抗のつもりなのか、下半身はちょっとばかし露出の高いミニスカートにガーターベルトという出で立ち。
「どうか、したんですか?」
私は聞いた。
グレイザさんは、初心者3人を少し気にする素振りを見せるも答える。
「あぁ、荷物の届け先を変更することになった。後、念の為にMJも連れて行け」
おっと、これはやっぱりただ事じゃないぞ。なんたって、事前の報告なしに緊急の変更なんて普通じゃないわ。
「グレイザさん、何かやらかしました?」
「まるで俺がミスしたみたいに言うんじゃねーよ。事情は道中でMJに聞け」
緊張の走った空気をなんとかするため適当なことを言ってみた。乗っかってきてくれる辺り、実はそこまででもない?
他の3人はどうするのかは言わないので、このまま連れて行っても良いということなんでしょうね。
「皆様、どうぞよろしくおねがいします」
MJさんは相変わらず礼儀正しく挨拶をしてみせた。
直ぐにグレイザさんへ向き直ると、さっきのセリフについて確認する。
「本当に、私から説明してしまってもよろしいのでしょうか?」
「あー? 構わねぇよ」
「グレイザ様こそご一緒したと――」
MJさんの言葉をつっけんどんに拒否し、さらには言いかけたところをキッと睨みつけた。
「余計な心配だッ」
おや? もしかしてグレイザさんって……。
「それ以上言うなら」「あー、はいはい。出過ぎた真似をいたして申し訳ございませんでした」
声に声を重ねて謝罪するものだから、流石にそれ以上は怒れなかった様子。
まぁ、本気でMJさんに切れるなんてことはグレイザさんでも出来なかったでしょうけど。
2人のそんな会話を聞いていて私は、実は離れ離れで行動したくないと思っていらっしゃるなどと勘ぐってしまう。
「なくはない組み合わせね。MJさんが女でも男でも」
どっちでも、絵としては映えた。
しかし、なぜ初心者3人組は私をジト目で見ているのかしら?
「さ、参りましょう。こうなったのなら急いだ方が得というものでございます」
「え、あ、はいはい」
妄想をMJさんに打ち切られ、私達はアキュイロを発った。本来の目的地である北の要塞都市アネモではなく、南下して山岳地帯にある村へと向かった。
御者台に私とMJさんが乗って、荷車には初心者3人組。
「それで、どういう話なんです? と、その前に、皆に聞こえても大丈夫ですか?」
街を離れたところで、周囲に3人組以外の耳目がないことを確認してからお隣さんに尋ねた。
「別に構いません。厄介事に巻き込まれる可能性は増えますが、数パーセントなどどうということはありません」
「そういうもので……」
「自分らは強制でございます」
「グッ……」
思い出したくないことをあっさりと擦り付けてきた。そりゃ、一応クラン内で上位10に入るレベルであり、そこそこスフィファンのプレイ時間を誇っておりますが。
なぜ私なのです!? ホント、グレイザさんを連れてこれば万事解決だったんじゃございませんかッ?
「フフッ。そんなに焦らずとも、お話はさせていただきます。まずは、行き先がどこかご存知でしょうか?」
「えー? 言われた通り南の山岳地帯にある山間の村ナクモに向かって……あ」
MJさんに尋ねられたので言葉にしてみると、なぜ私が選ばれたのかわかったような気がした。
確かに、私のサポートやラストアタックがあったからと言っても、"STR"が255もあるあのゴリアテを怖気づくことなく倒したのだものね。
ボス級モンスターだから経験点がっぽりでしょうし、実力だけなら一人前かもしれない。私のようにゲームが初めてのプレイヤーでもないのだろうから、オンラインゲームの基本がわかってる。
「……」
色々と推測してみて、ちょっと寂しくなった。将来、私が抜ける前に彼らに実力を積ませるつもりなのだから。
「……では、行きましょうか」
考えていても仕方ないので、私は合図を送って出ることにした。
「あの」
妙な間に感づいたらしい銃手の言葉はあえて聞こえない振りをする。
「整列なさい 私の可愛い四つ子 答えなさい 四つ子達の齢を クルクルと回るねじ巻きの ユラユラ揺れる幻に」
さっさとインベントリから杖を取り出し、【暗号施錠】の呪文を唱えて発動すれば錠前にいつもの数字の象が張り付いた。荷物に一つずつにそれを掛けて、幌馬車の荷車へと乗せて行く。
途中からは3人も手伝いに入り、先程の空気などどこかへ霧散した。
準備ができたのなら直ぐに発つつもりだったけど、そこへやってくるのはグレイザさんとMJさん。
「おぉッ?」
「マスターさんに書記長さん?」
先に気づいた戦士と拳闘士の声で、私も馬車から顔を出す。
珍しい組み合わせな上に、MJさんがいつものコスプレ姿ではないからちょっと警戒した。
今は頭に上げているけれど、顔の右上面を覆い隠せる鷲頭部を意匠化したお面など、戦闘モードに入ったときの格好だ。服装だって、襟首の立った黒のポンチョである。
せめてもの抵抗のつもりなのか、下半身はちょっとばかし露出の高いミニスカートにガーターベルトという出で立ち。
「どうか、したんですか?」
私は聞いた。
グレイザさんは、初心者3人を少し気にする素振りを見せるも答える。
「あぁ、荷物の届け先を変更することになった。後、念の為にMJも連れて行け」
おっと、これはやっぱりただ事じゃないぞ。なんたって、事前の報告なしに緊急の変更なんて普通じゃないわ。
「グレイザさん、何かやらかしました?」
「まるで俺がミスしたみたいに言うんじゃねーよ。事情は道中でMJに聞け」
緊張の走った空気をなんとかするため適当なことを言ってみた。乗っかってきてくれる辺り、実はそこまででもない?
他の3人はどうするのかは言わないので、このまま連れて行っても良いということなんでしょうね。
「皆様、どうぞよろしくおねがいします」
MJさんは相変わらず礼儀正しく挨拶をしてみせた。
直ぐにグレイザさんへ向き直ると、さっきのセリフについて確認する。
「本当に、私から説明してしまってもよろしいのでしょうか?」
「あー? 構わねぇよ」
「グレイザ様こそご一緒したと――」
MJさんの言葉をつっけんどんに拒否し、さらには言いかけたところをキッと睨みつけた。
「余計な心配だッ」
おや? もしかしてグレイザさんって……。
「それ以上言うなら」「あー、はいはい。出過ぎた真似をいたして申し訳ございませんでした」
声に声を重ねて謝罪するものだから、流石にそれ以上は怒れなかった様子。
まぁ、本気でMJさんに切れるなんてことはグレイザさんでも出来なかったでしょうけど。
2人のそんな会話を聞いていて私は、実は離れ離れで行動したくないと思っていらっしゃるなどと勘ぐってしまう。
「なくはない組み合わせね。MJさんが女でも男でも」
どっちでも、絵としては映えた。
しかし、なぜ初心者3人組は私をジト目で見ているのかしら?
「さ、参りましょう。こうなったのなら急いだ方が得というものでございます」
「え、あ、はいはい」
妄想をMJさんに打ち切られ、私達はアキュイロを発った。本来の目的地である北の要塞都市アネモではなく、南下して山岳地帯にある村へと向かった。
御者台に私とMJさんが乗って、荷車には初心者3人組。
「それで、どういう話なんです? と、その前に、皆に聞こえても大丈夫ですか?」
街を離れたところで、周囲に3人組以外の耳目がないことを確認してからお隣さんに尋ねた。
「別に構いません。厄介事に巻き込まれる可能性は増えますが、数パーセントなどどうということはありません」
「そういうもので……」
「自分らは強制でございます」
「グッ……」
思い出したくないことをあっさりと擦り付けてきた。そりゃ、一応クラン内で上位10に入るレベルであり、そこそこスフィファンのプレイ時間を誇っておりますが。
なぜ私なのです!? ホント、グレイザさんを連れてこれば万事解決だったんじゃございませんかッ?
「フフッ。そんなに焦らずとも、お話はさせていただきます。まずは、行き先がどこかご存知でしょうか?」
「えー? 言われた通り南の山岳地帯にある山間の村ナクモに向かって……あ」
MJさんに尋ねられたので言葉にしてみると、なぜ私が選ばれたのかわかったような気がした。
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