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第2話 鬼畜仕様変更
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「絶対に死んでやる………」
「ちょー物騒な独り言なんですけど☆」
あの後自分の転移魔法で皆を部屋に戻して、でっかいお風呂に入って今まで受けたことの無い丁寧なエステをしてもらった。
あんなのを毎日してもらったんだ。
この長い髪に枝毛もなければ肌のくすみもないわけだ。
すごく長生きしているようだけど、肉体的にはかなり若いぞ。20代前半の特にイキイキしてる時期。
床に引きずっていた髪も特殊なまとめ方で綺麗に髪飾りでアップにされて、服は少し派手に着替えされられたがまぁ良しとしよう。
なんだか慣れてきた。
いっそコスプレ気分で楽しもう。
つやつやお肌を撫でながら部屋に戻ってきた私の目の前にあったのは大量の書類だった。
そして冒頭の呟きである。
「サファン魔王様がバジリスクになってしまいましたが、サトノ様は理解ある御方だと認知しましたので。
お仕事を回させて頂きます」
隣に立つハウラがにやりと笑う。
「やめてくれ、夢の中まで仕事なんて!」
「大丈夫です、内容の確認と判子だけですから」
「その確認が手間なんでしょー!」
「流し見でいいので」
「ぇえ……」
それってどうなの?
適当に判子押していいの?
一番上に目を通す。
ふむふむ、河川の洪水対策の堤防修繕及び拡張工事予算の見積もりと許可申請。
土地買い取り、材料費、人件費諸々と業者について等。
「いや、これめっちゃ重要じゃん」
民間企業に勤める私からしたらとてもじゃないが軽々しく判子を押せるものではない。
二枚目。
山間部の田舎から街への新しい道の開通と盗賊討伐依頼。
三枚目。
貴族と闇市間の賄賂疑惑について。
「無理無理!ナニコレ怖い!」
思わず書類をぶん投げた。
「大丈夫ですよ、ちゃんとそれぞれの部の担当が目を通してしっかり確認済みですので」
「そういう問題じゃないでしょ、こんな責任重大な」
「私いつも中身見ないで適当に判子押してるだけだよ☆」
この雀モドキは………。
「あーもー、知らないからね!」
結局山のような書類にヤケクソでめちゃくちゃに判子を押しまくってやった。
_________
書類と戦ったり城を探検したり、美味しい食事に舌鼓したり騎士や飼われているドラゴンや一角馬の幻想生物を見たり、国宝図書館どっぷりに浸ること一週間。
「結論、魔王はいなくても大丈夫」
「こっちの生活堪能してたね☆」
そう、書類に関しては2時間程度で片付くので殆ど観光とぐうたら生活をしてました。
でも城下町には出てない、ハウラに駄目だと止められたから。
駄目というのだからそれなりの理由があるのだと思う。
私も大人だから禁止されたことをするつもりはない。
「で、だよ。魔王いなくても変わらない確信が持てたので真面目に自殺方法を考えようと思う」
「真面目だね。なんだかんだこのままズルズル生活続けるのかなと思ってたよ☆」
サファンは柔らかなクッションで丸くなっている。
「悪くない生活だけど、私には帰りを待ってる夫もいるからね」
「別に時間の経過は無いから待っていないと思うけど、ただサトノが寂しいんでしょ☆」
「そっ、それはその…………そりゃ……何年も一緒に生活してたし、急にその、声も聞けなくなると………そりゃ………」
寂しい。
だから早くこの役目を終わらせたい。
「と、とにかく!私は城を出ることにする!」
「ほほぅ、してどちらに?」
「適当に危険地帯を巡る旅でもしようかなって」
「無計画☆」
「この1週間で私も学んだんだよ、普通の自殺方法では無理だと。
お風呂で溺死しようとしたけど何故か水中呼吸が可能で。
首吊っても何故かちっとも苦しくないし、刃物は基本刃がたたないし。
人を塵にできるドラゴンブレスも髪に焦げどころか熱さもないし。
薬品庫の酸やら毒やら吸ったり飲んだりしたけど不味いだけで効かないし………。
どうしろと!?」
防御力高すぎる!
これらは全て既にサファンも試したんだろうけど、それでも現実を知りたくなかった。
っていうか一般人の頭ではこれ以上のやり方わかりません。
「とーにーかーくー、城で出来ることはもう無さそうだから旅に出る」
「んー私も五千年前くらいには放浪してたっけ?☆」
「突然5000歳以上というカミングアウト。
そうなると既に世界中を歩きなれてそうね」
「でも魔王になってからは基本城生活だったよ、研究室に籠りきり5000年☆」
「引きこもり極めてるね」
私の前任者の人達はどうやって死んだんだろう?
「ねぇ、私の前の人達はどうやって自殺してたの?」
「サトノの前は二人だけだよ、一人はお城での生活に浸ってたんだけど飽きたみたいでドラゴンブレスで塵☆その次は勇者の剣で串刺し☆」
「あれ?でもドラゴンブレスは効かなかった」
「実はサトノになってから身体の仕様が変わってるんだよね。
出会って直ぐに少し話したんだけど……物理攻撃とか毒物耐性はある程度あったんだけど、肉体的には死ぬのが普通だったんだ。ただ、魂が死ぬことはなくて身体が超速再生っていうか強制蘇りだったのよ。
ドラゴンブレスなら塵になってたけど、次の瞬間には塵どころか何もない空間から肉体が再生して生き返ってたし」
「??」
「つまり今まで私が言ってた『死ねない』は魂の解放がされない『強制蘇生されて死ねない』だったんだよ☆
だから一度死んだら体に入ってた人達は帰っていってた。
でもサトノに変わってからは『死ぬことの拒絶』かな?」
「鬼畜仕様になっとるー!」
「ちょー物騒な独り言なんですけど☆」
あの後自分の転移魔法で皆を部屋に戻して、でっかいお風呂に入って今まで受けたことの無い丁寧なエステをしてもらった。
あんなのを毎日してもらったんだ。
この長い髪に枝毛もなければ肌のくすみもないわけだ。
すごく長生きしているようだけど、肉体的にはかなり若いぞ。20代前半の特にイキイキしてる時期。
床に引きずっていた髪も特殊なまとめ方で綺麗に髪飾りでアップにされて、服は少し派手に着替えされられたがまぁ良しとしよう。
なんだか慣れてきた。
いっそコスプレ気分で楽しもう。
つやつやお肌を撫でながら部屋に戻ってきた私の目の前にあったのは大量の書類だった。
そして冒頭の呟きである。
「サファン魔王様がバジリスクになってしまいましたが、サトノ様は理解ある御方だと認知しましたので。
お仕事を回させて頂きます」
隣に立つハウラがにやりと笑う。
「やめてくれ、夢の中まで仕事なんて!」
「大丈夫です、内容の確認と判子だけですから」
「その確認が手間なんでしょー!」
「流し見でいいので」
「ぇえ……」
それってどうなの?
適当に判子押していいの?
一番上に目を通す。
ふむふむ、河川の洪水対策の堤防修繕及び拡張工事予算の見積もりと許可申請。
土地買い取り、材料費、人件費諸々と業者について等。
「いや、これめっちゃ重要じゃん」
民間企業に勤める私からしたらとてもじゃないが軽々しく判子を押せるものではない。
二枚目。
山間部の田舎から街への新しい道の開通と盗賊討伐依頼。
三枚目。
貴族と闇市間の賄賂疑惑について。
「無理無理!ナニコレ怖い!」
思わず書類をぶん投げた。
「大丈夫ですよ、ちゃんとそれぞれの部の担当が目を通してしっかり確認済みですので」
「そういう問題じゃないでしょ、こんな責任重大な」
「私いつも中身見ないで適当に判子押してるだけだよ☆」
この雀モドキは………。
「あーもー、知らないからね!」
結局山のような書類にヤケクソでめちゃくちゃに判子を押しまくってやった。
_________
書類と戦ったり城を探検したり、美味しい食事に舌鼓したり騎士や飼われているドラゴンや一角馬の幻想生物を見たり、国宝図書館どっぷりに浸ること一週間。
「結論、魔王はいなくても大丈夫」
「こっちの生活堪能してたね☆」
そう、書類に関しては2時間程度で片付くので殆ど観光とぐうたら生活をしてました。
でも城下町には出てない、ハウラに駄目だと止められたから。
駄目というのだからそれなりの理由があるのだと思う。
私も大人だから禁止されたことをするつもりはない。
「で、だよ。魔王いなくても変わらない確信が持てたので真面目に自殺方法を考えようと思う」
「真面目だね。なんだかんだこのままズルズル生活続けるのかなと思ってたよ☆」
サファンは柔らかなクッションで丸くなっている。
「悪くない生活だけど、私には帰りを待ってる夫もいるからね」
「別に時間の経過は無いから待っていないと思うけど、ただサトノが寂しいんでしょ☆」
「そっ、それはその…………そりゃ……何年も一緒に生活してたし、急にその、声も聞けなくなると………そりゃ………」
寂しい。
だから早くこの役目を終わらせたい。
「と、とにかく!私は城を出ることにする!」
「ほほぅ、してどちらに?」
「適当に危険地帯を巡る旅でもしようかなって」
「無計画☆」
「この1週間で私も学んだんだよ、普通の自殺方法では無理だと。
お風呂で溺死しようとしたけど何故か水中呼吸が可能で。
首吊っても何故かちっとも苦しくないし、刃物は基本刃がたたないし。
人を塵にできるドラゴンブレスも髪に焦げどころか熱さもないし。
薬品庫の酸やら毒やら吸ったり飲んだりしたけど不味いだけで効かないし………。
どうしろと!?」
防御力高すぎる!
これらは全て既にサファンも試したんだろうけど、それでも現実を知りたくなかった。
っていうか一般人の頭ではこれ以上のやり方わかりません。
「とーにーかーくー、城で出来ることはもう無さそうだから旅に出る」
「んー私も五千年前くらいには放浪してたっけ?☆」
「突然5000歳以上というカミングアウト。
そうなると既に世界中を歩きなれてそうね」
「でも魔王になってからは基本城生活だったよ、研究室に籠りきり5000年☆」
「引きこもり極めてるね」
私の前任者の人達はどうやって死んだんだろう?
「ねぇ、私の前の人達はどうやって自殺してたの?」
「サトノの前は二人だけだよ、一人はお城での生活に浸ってたんだけど飽きたみたいでドラゴンブレスで塵☆その次は勇者の剣で串刺し☆」
「あれ?でもドラゴンブレスは効かなかった」
「実はサトノになってから身体の仕様が変わってるんだよね。
出会って直ぐに少し話したんだけど……物理攻撃とか毒物耐性はある程度あったんだけど、肉体的には死ぬのが普通だったんだ。ただ、魂が死ぬことはなくて身体が超速再生っていうか強制蘇りだったのよ。
ドラゴンブレスなら塵になってたけど、次の瞬間には塵どころか何もない空間から肉体が再生して生き返ってたし」
「??」
「つまり今まで私が言ってた『死ねない』は魂の解放がされない『強制蘇生されて死ねない』だったんだよ☆
だから一度死んだら体に入ってた人達は帰っていってた。
でもサトノに変わってからは『死ぬことの拒絶』かな?」
「鬼畜仕様になっとるー!」
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