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第6話 初めまして盗賊

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異世界の材料を使って作ったシチュー は、やたら橙色になった。
にんじん代わりに入れたトリルという実から色素が出たのかしら。

味はよかったから気にせず食べたが、マリー曰く普通は入れないらしく。

「こういうのもサファンじゃぁ、あり得ないから新鮮だわぁ」

ニヤリと笑いながら食べていた。

夫婦用のキングサイズのベッドにマリーと二人で眠った。
ぴったりくっついたりはしてません、離れて寝ました。

サファンはベッドの端のミニクッションに。

染み付いた癖で早い時間に目が覚めたので、簡単な朝食を作って二人(一人は一羽)を起こし、朝食を済ませて身支度を整え。

街を出た旅の二日目の始まり。

玄関を出ると昨日扉を開いたあの草原に出た。
全員が出ると扉は勝手に消える。

便利だ、これ。

清々しい朝の風を浴びながら、草原を進む。

サファンは私達より少し先を行くように飛び、マリーは……ニヤニヤしている。

「いいねぇ、似合うよぉ」
「これはまた、懐かしいなーっていうのが私の感想だよ」
「暫くはその形でぇ柄を変えて楽しませてもらおぅかなぁ」
「どうぞお好きに」

マリーに髪をおかっぱに切り揃えられ、着せられたのは袴だった。
学校の卒業式に着たのがこれだった、懐かしい。

不思議と動きやすいから、流石仕立て屋というべきか。

「この先には何があるんだろ」
「なんだっけなぁ、まずは大きな一枚岩があってぇ」
「ふんふん、見えてきた」
「その付近でぇ」
「でっかい岩だね、なんだか穴を掘って人が住めそう」

「盗賊がぁ出る」

………………ん?
今なんて?

「おい、そこのお嬢さん方。金目の物と着てる服脱いで行きな!」

マリーの言う通りに、盗賊が出てきた。

パッと見で20~30代の男が6人。
手入れされた皮の鎧を着て剣やら弓やら斧なんかの武器を携えている。

髭はない、残念。

っていうか盗賊なんているんだ、凄い王道イベントだ。

ちょっと年甲斐も無くわくわくしてしまう。

「聞いてるのか!?」
「あ、聞いてる聞いてる。次はどうするのかなと思ってて」
「随分と余裕じゃねぇか、渡すつもりはないってことか?そんな手ぶらの女二人で」

最初に話しかけてきた腰に剣を携えた男がこっちをなめ回すそうに見てくる。

セクハラー。

と、その剣男に対して隣にいる弓を持った男が。

「先輩、裸になるのは嫌だからじゃないですか?ちゃんと代わりの服はあるって説明しないから……」
「あぁそういうことか。
安心しろ、代わりの安物の服はあるし着替えも覗き見したりしないからな!」

そういう問題じゃないんだよなー。

「いや、そもそも貴方達何者?」
「ん、名乗って無かったか。
俺達はこの草原から山までを縄張りにしめる盗賊団『山嵐』の第8班、俺は班長のオルム!」
「へー組織として結構大きい?」
「そう、こうして外で盗賊活動するのは選ばれた6人1組の15班のやつらだ。他は根城で別の活動をしてる」
「ほうほう、その根城は?」
「山の……って言えるか!!何だお前は!?」

おっと、ノリがいいちょっと面白い人だな。
6人の雰囲気が段々イライラしてきている。

十分話してもらったし、こんなもんかな。

「私は魔王(借)です、ちょっと旅に出てるだけの」
「「は!?」」

6人の揃ってキョトンとして、それから少しずつ馬鹿にするような表情に。

次の言葉は聞かない、必要がない。

「貴方達じゃあ私は殺せそうにないわよね、明らかに雑魚だし。
情報提供ありがとうございました。

『眠れ』」

キーー………ン

モスキート音の様な聞き取りにくい高い音が草原に広がり、途端に男達が倒れていく。

一番近くにいた班長のオルムさんを見ると、安らかな顔で眠っている。

上出来。

彼らを新しく作った異空間に浮遊魔法で放り込んで捕獲。

空から見ていたサファンが肩に止まって毛繕いを始めた。

「根城探し?☆」
「そうだね、魔王だし。治安維持でもしようか」
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