4 / 9
未練禍々しいのは嫌いなんです♪
しおりを挟む「桜花ー! 彩珠ー! ディアンー!」
「おい、ちゃんと襖の前で待ってろって言ったろっ、ちょっ…わ、悪ぃ黄瀬川! 止めたんだが…」
「ふふっ、本当に元気だね。智ちゃん! 御伽流紋長は今県道のお稽古中で、ディアン君はお茶いれてるの。少し待ってね」
部活終わり、三人がいつも使っている、部長副部長室前の襖をスパンと開ける。そんな月島を、真波は叱った。
そんな二人をほのぼのしそうに見ているのは、真波の恋人であり、月島の幼馴染み兼親友、黄瀬川は、優しく微笑んだ。ふわふわとした髪が、半年前より伸び、軽く縛っているところを見ると、部活が終わってすぐのようだ。
「わぁ! 彩珠可愛いっ!」
「そ、そうかな? ありがとう、智ちゃん」
桃色の生地に白い花が散りばめられた文様は、黄がかった彼女の髪によく会い、とてもいとおしさを感じさせるものだった。
「でも智ちゃん。何で流紋長や、ディアンくんに? 今日、なんか約束あったっけ。いつもなら校門集合なのに…」
「今日は、作戦会議だからだよ? この部の乗っ取りを未遂にさせるための、ね?」
厠お借りしまーす! と言い、月島は襖の向こうに消えた。
「で? 盗み聞きなんて、随分とつまらないことをするね。たしか…ディアンに気がある子だっけ?」
「ふぅん、気付いてたの? 凄いわね」
出て来たのは、先日ディアンに絡んでいた、ピンク髪の女だった。
「残念だね、ディアンは桜花に気があって」
「はっ、そんな事? 私は、西園寺くんに特別好意を抱いてるわけじゃないの。ただ、和道流紋はイケメン多いじゃない? 私は、美しい私に似合う、イケメンを侍らせたいだけ」
自身げにいう女に、月島口を引くつかせた。
───お前の顔で、ディアンが侍るかよ
と、思いながら。
「へぇ、随分強気だね」
「当たり前でしょ? 私は生まれつき、色んなものに恵まれてるの。お金、地位、親、学力から体力まで、全部私は恵まれてきたの! 顔もそうよ! なのにっ…ここの奴らは、御伽、御伽! おかしいじゃない! 私がいるのよ!?」
───うん、彼等は間違ってないよ
月島はその言葉を飲み込んだ。そして、女を再度見る。
顔立ちはまあまあ、と言うべきだろう。月島とおなじくらいか、それいかくらいだ。
すると、女は月島を見てこういった。
「アンタ、嫌われクラッシュしたんでしょ? 川井の奴もマヌケよね。来てスグやるなんて、ほんとバカ。でも私はそんなことしない。
─ねぇ、私と組みましょ? 私ならあなたのその目、有意義に使ってあげる」
「はい?」
月島は、自身のポケットに入れた手が強く握られていることに気づいた。
「貴方の周り、幼なじみは自身の所属する委員会の会長と恋人。友人は部活の人気者…一人ぼっちじゃない」
その言葉に、月島は目を開いた。
「でも私と一緒に来たら、貴方にもイケメンを分けてあげる。男なんて、ひょいひょい寄ってくるわ。
ねぇ、月島さん、私得みましょ? いいえ、組みなさい?」
先ほどの、目を開いた事で手応えあり、と感じたようだ。
最後は命令形で言葉を紡ぐ。
女は月島を見ると、月島は顔を俯かせている。──よし、いける──女がそう感じた瞬間─
「ふふっ、あはは……あはははははははっ! ひぃ、お腹いたぁい! 笑っちゃう!」
月島は涙を浮かべ、狂ったように笑った。
「な、なんで…」
「あははははっ! あなた、川井さんのことバカって言ってたけどさぁ……
貴方こそバァカァ? なぁんで私がわざわざ、友達の部、乗っ取りを手伝わなきゃいけないわけぇ? あ~! おっかしー☆」
月島はひとしきり笑うと、クスッ、と笑い女を見た。
「ほんと馬鹿だねぇ…? あのねぇ、私は別に、周りがどう変わろうが知ったことじゃないんだよ?」
月島は言葉を紡ぐ。
「別に、誰がどう変わろうが知ったことじゃない。彩珠が真波と付き合って、私になんの影響があるのぉ? 別に、私は真波に恋心を抱いていたわけじゃないし、桜花が万人から好かれても、私の知ったことじゃない。私は愛に飢えてるわけじゃない。友達を欲してるわけじゃない」
そう言うと月島は静かに踵を返した。
そして、口を、ニタァ、と不気味に挙げ、
「もし、桜花や彩珠、真波たちに何かしてがしてみな? 君、ただじゃおかないよ?」
女が息を呑む音が聞こえた。
月島は、上機嫌でその場をさった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる