四人の勇者

福澤賢二郎

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修行の勇者

22.北の山

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《天野翼》
北に向かって走った。
魔界と言われる地域を遮るスカンディナビア山脈がある。
その中で最も険しいアンナ山に登る。
防寒も食料も二日分を持ち、準備万端。

積雪のある道を登る。
かなり冷え込んでいる。
ファンはいつもと同じ格好で跳ねるように進む。
重力を感じない。
逆に僕は歩を進める度に雪に足をとられる。
「誰がこんなところに住んでいるんだ?」
(最強の男に運が良ければ出会えるよ)
白い息を吐きながら進む。

何かいる。
「誰だ?」
白い大きな熊のようなモンスターだ。
牙を剥いて唸っている。
立ち上がる。
うおーー、デカイ。
鋭い爪を振り下ろしてくる。
僕は後方に一歩跳んでかわした。
いくぞ!
聖剣を抜き、脇を走りながら斬りつける。
まっ赤な血が噴き出して白い雪を染めていく。
さあ、来い!
僕は腰を下げて構える。
あれ?
怪物は大きな声で吠えた。
僕は怪物に向かって走り、跳ぶ。
そのまま、眉間に聖剣を突き立てる。
「ウオオーー」
剣を抜き、剣を横に走らせて喉を裂いた。
怪物は後方に倒れるようにして絶命。

殺気。

周りを見渡すと白い怪物たちに囲まれていた。
「面白い」
神経を集中する。
怪物達の動きを読み、素早く隙をついて攻撃を繰り出す。
何時間、戦っただろうか。
少しずつ傷が増えていく。
疲労もたまって動きが鈍くなっていく。
まだまだいる。
終わるのか。

突然、一斉に怪物たちが逃げ出した。
一人の男が現れた。
こんなに寒いのに上半身はほぼ裸。
年齢は二十代の後半か。
白い肌に黒髪が映えている。
女の様な綺麗な顔をしていた。
「山を騒がしておるんはお前やな」
「僕はそんなつもりないんだけど」
あれ?
疲れで気を失ってしまった。

次、目覚めると見覚えのない部屋だった。

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