四人の勇者

福澤賢二郎

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恋する勇者

30.絶世の美女

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《アレキサンダー》
アレキサンダーと副将のエルバートは馬で月が照らす原野を駆けていた。
正面に女性が一人立つ。
「アレキサンダー様、気をつけてください」
「大丈夫だ」
ゆっくりと近づく。
月明かりのせいか。
凄く神秘的だ。
「そこの絶世の美人よ、私と馬上から月味酒といかないか?」
「ありがとう。でも、今からあなたを殺すの」
「お前のような美女に殺されるなら本望といきたいが」
「じゃあ、死んで」
女は飛び込みざまに剣を抜き、横に払う。
アレキサンダーは左手で剣を持つ手を抑えて、右手を女の腰にまわして抱き寄せる。
顔同士が近づく。
「何ゆえに私を殺そうとするのだ」
「人間だからね」
「お前は人間では無いような言い草だな」
「そうね。過去は私の事を女神と呼ぶ者もいたわ」
「名前は?」
「教えてあげない」
アレキサンダーは胸が高鳴り、そのまま、口づけをした。
相手も剣を落とし、力を込めて抱き締めてくる。
舌が激しく絡み、いとおしい思いが溢れだしてきた。
永遠に続けば良いと思う。
すると、女はアレキサンダーを優しく押して体を離す。
「ばかね」
そう言い、空に飛び出した。
背中に大きな黒い翼が広がる。
女は悲しそうな瞳でアレキサンダーを見詰めた。
「今度はあなたを殺す」
「無理だともうぞ」
「あなたを殺すなんて簡単なんだから。今だって殺せたのよ」
「でも、やらなかった。それが答えだろ!」
「なんて愚かなの」
「魔王の元など去り、私のところに来い」
「出来ない」
「諦めない」
「ホントに愚かな人」
女は羽ばたき、大空に舞い上がって、姿を消した。
アレキサンダーは女が消えた空をしばらく眺めていた。
恋をしていた。

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