四人の勇者

福澤賢二郎

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異色の勇者

36.破壊

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《天野翼》
青江が喜んでいる。
「やったー。りゅ、竜王を剣に融合させた」
そう大声で叫びながら剣に近づいた。
その時、剣が激しく軋み始めた。

“ガッシャーン”

剣が粉々になり、そこには怒りの竜王が立っていた。
『貴様ら覚悟は良いな』
青江は竜王を見上げたままで、言葉も発せられず立っている。
竜王が青江を蹴り飛ばそうと足を振り上げた。
『お前達、人類の滅亡までのカウントダウン開始だ』
仕方ない。
僕は力を爆発させて一瞬で加速した。
竜王の蹴りよりも速く青江を抱えて移動して、雪の上に青江を放った。
竜王は青江を蹴り飛ばしたと思っているのか、満足そうな表情で傭兵達を殴り、蹴り飛ばしている。
「ファン、助けるか?」
(そだね)

雪を舞い上げて駆ける。
竜王は怪訝な表情でこちらを見ている。
それはそうだろう。
この山で僕以上の速さで駆けれる生物はいないだろう。
そのまま、跳んで今度は指先に力を集中させて竜王の喉に向けて突く。
さすが、竜王と言うべきか。
右腕で攻撃を防ごうとカバーした。
そのまま、僕は渾身の突きを竜王の右腕に放った。
爆発するように竜王の右腕の肉、血、骨がぶっ飛んで、その勢いで竜王自身も後方へ吹っ飛んで転がる。
あまりの痛さで叫びながら地面を転がり回っている。
僕は地面に掌を当てる。
「出でよ、デロンの兵よ」
地面から白い鎧の兵士達が無数と生まれてくる。
雄叫びを上げて転げ回る竜王に襲いかかる。
(ツバサ、今がチャンスだよ。出し惜しみなく力を発揮していこう)
「そうだね。余裕を見せている場合じゃないね」
(そうそう。試せる力はここで試しておこう)
僕は再び地面に手を当てる。
「アマノの名で命ずる。現れよ、破壊王よ」

空に真っ黒い渦が現れる。
そこから漆黒の馬に跨がる髑髏の騎士が駆け出してきた。
改めて思う巨大だ。
そのまま、竜王に向かう。
竜王はデロンの兵を何とか振り払い、翼を広げて空へ舞い上がっていた。
「破壊王よ、竜王の翼を切り落とせ」
『承知した』
そこへ破壊王が剣を抜き、振り下ろす。
竜王の翼が一枚、ヒラヒラと地面に落ちていく。
『な、何だと』
残った一枚の翼をバタバタと動かすが虚しく地面へ落下。
そこに再びデロンの兵達が群がり、竜王を斬る刺すと攻撃を仕掛けていく。
竜王の悲鳴が轟く。
僕は竜王に近付く。
「デロンの兵達よ、下がれ」
するとデロン兵達は少し不満足そうに竜王から離れて距離を置く。
竜王は至るところから血を流し、片目は抉り取られている。
片足も切断しかけており酷い姿だ。
僕は聖剣を竜王の前に放った。
『な、なんだ?』
「助けてやろうか?」
『何を言っている?』
「目の前の剣を振れ」
『また、封印する気だろうが』
「そうだ。もし、前回同様に剣を破壊出来ればお前を見逃す」
『破壊出来なければ』
「剣の中で暮らせ。そして、力を蓄えて剣を破壊して出てくれば良い。だが、それが出来るまでは僕の剣として力を貸せ」
『良いだろう。お前を喰ってやる』
「楽しみだ」
竜王は残った左腕で聖剣を取り、剣を振る。

“ボッ”

竜王の姿が消え、聖剣だけが残る。
聖剣の色が変わっている。
真っ黒い。
う~ん、これはこれでカッコいいから良しとしようか。
僕は聖剣を拾い腰の鞘に閉まった。
竜王は出てこれないようだ。

僕は青江や傭兵達を連れて街に向かって移動し始めた。
青江や竜王に会えた事、破壊王を試せた事は運が良かったかもしれない。
(ねぇ、いつまでデロンの兵や破壊王を連れていくの?)
「えっ?」
僕は背後を振り替える。
物凄い数のデロンの兵が整列してついてきていた。
そして、最後尾に巨体の破壊王がいる。
「あっ、ごめん。消えよ」
すると、次々と地面に姿を消していく。

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