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漆 静
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《西郷 静》
桜淵緑地に着くと誰一人いない。
静は護衛の佐之助、冬馬を連れて中に入っていく。
すると、多数の死体があった。
見た事のある顔もある。
その奥で奥山佐吉が酒を飲んでいた。
「何があったのですか?」
「直兄に聞いた方が良いよ」
佐吉は顎で川の方を指す。
ちょうど、川から直次が上がってくる所だ。
静は駆け出した。
「直次様、おケガはありませんか?」
「俺は大丈夫だ。いやー、困った。父上に伝えてもらえないかな。家次派でも良いけど、俺の命は狙わないで欲しいな。死人が増える」
「これは直次様が殺ったのですか」
「まさか、違うよ。俺は天下のロクデナシだ。だけど、俺の護衛は七海だけじゃない。メチャクチャ強いのがいるんだから。あと、清員への伝言。家次派でも良いけど、俺にはかまうな」
「大変すみませんでした。しっかりと伝えておきます」
静は涙が溢れて止まらない。
直次は泣きじゃくる静の頭を撫でる。
「静が悪いわけじゃないから、謝らなくてもいい」
「そんな訳にはいきません」
「俺、帰るから。佐吉、行くぞ」
直次は佐吉を連れて桜淵を去った。
佐之助が冬馬に何かしら指示を受け、馬で駆けていく。
死体を弔う為に動くのだろう。
佐之助は近くの死体を調べ始めた。
「佐之助、内の者達だよね?」
「そうですね。あの鬼死者も殺られています。相当な手練れです」
「帰ります。まず、父上に確認します」
「そうですね。ここは冬馬に任せましょう」
静と佐之助は西郷清員のいる西川城へ戻った。
《西郷清員》
西郷は自室にて酒を飲み、直近からの報告を待っていた。
鈴木繁正へ走らせる者も決めてある。
もうそろそろ報告があっても良い頃だ。
その時、通路から声をかけられた。
「静です」
「入れ」
静が清員の前で正座して座った。
眉を吊り上げ、明らかに怒っている。
「父上、桜淵は直近を始め、うちの家来達の死体がありました。今、冬馬が弔っています」
「直次の死体は?」
「ありません。ただ、伝言を承っております」
「なんと」
「家次派でも良いけど俺にはかまうな、という事です」
「な、なんだと。直近め、何をしとるのだ」
「倒した者はかなりの強者らしいです。次は父上かもしれません」
「ロクデナシを護衛したのは誰だ?私が雇う」
「馬鹿な事は言わず、直次様に許しを得てはどうでしょうか?」
「どうやって」
「私が嫁ぎます」
「それは駄目だ。あんなロクデナシにお前はやれん」
「では、父上が真っ先に抹殺されてしまいますね」
「そうなるのか」
「そうなりますね」
「う~ん」
人に振り廻されてばかりの可哀想な人だと少しばかり同情していた。
直次暗殺未遂は酒井忠次にも伝わり、西郷清員が呼ばれた。
その話を聞いてニヤリと笑っただけでお咎めは無かった。
桜淵緑地に着くと誰一人いない。
静は護衛の佐之助、冬馬を連れて中に入っていく。
すると、多数の死体があった。
見た事のある顔もある。
その奥で奥山佐吉が酒を飲んでいた。
「何があったのですか?」
「直兄に聞いた方が良いよ」
佐吉は顎で川の方を指す。
ちょうど、川から直次が上がってくる所だ。
静は駆け出した。
「直次様、おケガはありませんか?」
「俺は大丈夫だ。いやー、困った。父上に伝えてもらえないかな。家次派でも良いけど、俺の命は狙わないで欲しいな。死人が増える」
「これは直次様が殺ったのですか」
「まさか、違うよ。俺は天下のロクデナシだ。だけど、俺の護衛は七海だけじゃない。メチャクチャ強いのがいるんだから。あと、清員への伝言。家次派でも良いけど、俺にはかまうな」
「大変すみませんでした。しっかりと伝えておきます」
静は涙が溢れて止まらない。
直次は泣きじゃくる静の頭を撫でる。
「静が悪いわけじゃないから、謝らなくてもいい」
「そんな訳にはいきません」
「俺、帰るから。佐吉、行くぞ」
直次は佐吉を連れて桜淵を去った。
佐之助が冬馬に何かしら指示を受け、馬で駆けていく。
死体を弔う為に動くのだろう。
佐之助は近くの死体を調べ始めた。
「佐之助、内の者達だよね?」
「そうですね。あの鬼死者も殺られています。相当な手練れです」
「帰ります。まず、父上に確認します」
「そうですね。ここは冬馬に任せましょう」
静と佐之助は西郷清員のいる西川城へ戻った。
《西郷清員》
西郷は自室にて酒を飲み、直近からの報告を待っていた。
鈴木繁正へ走らせる者も決めてある。
もうそろそろ報告があっても良い頃だ。
その時、通路から声をかけられた。
「静です」
「入れ」
静が清員の前で正座して座った。
眉を吊り上げ、明らかに怒っている。
「父上、桜淵は直近を始め、うちの家来達の死体がありました。今、冬馬が弔っています」
「直次の死体は?」
「ありません。ただ、伝言を承っております」
「なんと」
「家次派でも良いけど俺にはかまうな、という事です」
「な、なんだと。直近め、何をしとるのだ」
「倒した者はかなりの強者らしいです。次は父上かもしれません」
「ロクデナシを護衛したのは誰だ?私が雇う」
「馬鹿な事は言わず、直次様に許しを得てはどうでしょうか?」
「どうやって」
「私が嫁ぎます」
「それは駄目だ。あんなロクデナシにお前はやれん」
「では、父上が真っ先に抹殺されてしまいますね」
「そうなるのか」
「そうなりますね」
「う~ん」
人に振り廻されてばかりの可哀想な人だと少しばかり同情していた。
直次暗殺未遂は酒井忠次にも伝わり、西郷清員が呼ばれた。
その話を聞いてニヤリと笑っただけでお咎めは無かった。
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