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高校一年生 冬

2.僕は死ぬ

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《大口健太郎》
小さな頃から入院していた。
筋肉の萎縮が始まり、そろそろ人生の終わりが近づいている事を自分でもわかっている。
もう言葉も喋れない。字も書けない。
出来る事は病室の窓から隣の高校のグランドを眺める事だ。
その中でも気になっているのは野球部だった。
一年前から女性が野球部に入ったようだ。
汗を流し、涙を流し、男に負けないと頑張っている。
そんな光景を見ているうちに野球というスポーツに興味が沸いた。
でも、プレイする事は無いだろう。

「じゃじゃーん」 

突然、目の前に女の子が現れた。

「だ、だ」

「喋らなくても良いよ。心でわかるから」

(本当?)

「もう、面倒。疑うのはわかるけど」

(きみは誰?)

「天使のマナと言います」

(僕は死ぬんだね)

「そうでーす。でも、ちょっと事情があって三年後になるよ。その間に大口健太郎くんの願いを一個叶えます。もう願い毎は決まっているよね」

(うん、病気を治して欲しい)

「う~ん。それは無理。他にあるでしょ。ほら、ほら」

(焼肉を食べたい)

「ち、ちが~う。いつも、窓から見ているでしょ」

(わかった。野球をやりたい)

「欲しい。野球を始めた先にあるのは?」

(プロ野球選手になりたい)

「もう、ほとんど正解。健太郎くんの願いを受付ました。神さま~、健太郎の願いは最強の野球選手になりたいそうでーす。良いですか~?」

(これが、僕のお願い?)

「そうでーす」

(キミが誘導していなかった?)

「まあ、良いじゃん。どっちにしても三年間は生きれるし。でも、世界最強の野球選手になれるように努力してよ。私がすご~く怒られるから。良い?」

(わかったよ)

「じゃあ、明日になると色々な事が起きるから。またね」

そう言うと姿を消した。
夢?
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