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 第6章 軍事都市リーベン編

609.神具の改良

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 私は、ベルーナ大佐から預かった神具を順番に調べて行った。

 魔法陣を描きうつしながら、異なる部分だけを一覧にしてみた。すると、異なる部分は、ほんのわずかで、95%は、同じ魔方陣だった。
 
 思っていたように、対象の品物をしていする部分だけが異なっていた。

 今回の改良は、2つの事を考えた。一つは、複数の神具を出来る限り少なくすることだ。
 もう一つは、消費する魔力量を減らすことだ。できれば、今の30%ぐらいまでにはしたい。

 一つ目は、神具を対象の品物に触れさせて、それを記憶させることで、解消した。

 つまり、2つの魔法陣を合成したことにより、1個の神具で、すべての品物の鑑定が出来る様にした。それは、15種類に限らない、一定レベル以下の鑑定レベルになるが、どのような品物にも対応できる。もちろん、現在検分している15種類は問題ない。

 次に、出来上がった魔法陣の改良を考えた。不要な線を覗いて、簡素化することで、効率は良くなった。だが、期待したほどではなかった。

 そこで、発想を変えることにした。魔石を使って、神具を使う人の魔力を起動するときだけ消費するように変えた。これによって、魔石に予め蓄えている魔力の分だけ、繰り返し検分が行えるようになった。その魔石を、通常の人の3日分の魔力を蓄えることが出来る物にした。

 これで、当初予定した神具が完成した。まだ、1日しか経っていないので、もう少し時間をとってから、連絡することにした。3日は、間を置こう。
 
 価格を考えてみた。2つの魔法陣を使っているので、そこそこ複雑になっている。また、少し大きめの魔石を使っているので、それを考慮して、金額を1個金貨20万枚にした。

 次に私達は、商業都市ブューラナに戻って、リンダに相談した。

 「リンダ、こんにちは」

 「あら、テラ、帰って来たの」

 「また、すぐに行くよ」

 「そう、忙しそうね」

 「店も大きくなってきて、しっかりした人に管理して欲しいの」 

 「そうだね。テラは、管理できないものね」

 「そこで、リンダ、今仕事辞めて、私達の所に来ない?」

 「どういうこと、私達のこの街の店を管理して欲しいの」

 「うーん、迷うね。テラ達と仕事はしたいけど、今の収入も結構いいのよ」

 「リンダ、今の給料の倍払うよ。それに、今の仕事と同じぐらいの勤務時間でいいよ」

 「えぇ、ほんとに、そんなに貰っていいの?月金貨50万枚になるよ」

 「いいよ。それぐらい。リンダが、来てくれるなら。出すよ」

 「分かった、暫く、待ってね。ギルド長と相談して、辞める時期を決めるから」

 「いいよ。リンダが納得できる形で、来て貰ったらいいからね」

 「わかったわ。準備しておくね」

 「それから、もう一つ相談しても、いい?」

 「いいわよ。何かしら」

 「私達、この街で、服の工場を作って、出来上がった物をリーベンで売るつもりなの」

 「わかったわ。この街で工場をつくる準備をすればいいのね」

 「そう、任せていい?」

 「いいわよ。私に任せて」

 「それじゃ、お願いします」

 私達は、リンダと別れて、また、リーベンに戻って来た。

 ベルーナ大佐に連絡を取り、神具の確認の日を決めた。

 後日、基地で、ベルーナ大佐に面会した。

 「ベルーナ大佐、出来上がりました」

 「そうか、少し待ってくれ。研究者と、検分の軍人を呼ぶから」

 「はい、待っています」

 暫くして、研究者が、色々な商品を持って来た。それから、少し遅れて、検分専属の軍人が3人やって来た。

 「揃ったようだな。それでは、テラ、説明をお願いする」

 「はい、わかりました」

 「まず、この神具をそこの軍人の人、持ってくれますか?」

 「私でいいですか?」

 「はい、大丈夫です」

 「それでは、研究者が持って来た商品にその神具を当てながら、魔力を流して、最初の起動をしてください」

 「はい、起動しました。でも、魔力はほとんど、減っていませんよ。これで、いいのですか?」

 「はい、それで、結構です。次にいつも通り、検分の手順を行ってください」

 「品物を見ながら、詠唱するだけですが、それでいいのですか?」

 「はい、お願いします。ただし、先ほど触れた品物と同じものを検分してください」

 「はい、やります。あれ、今度も、魔力が減りませんが、いいのですか?
 おぉ、鑑定が出来ています。それも、今まで以上に鮮明です」

 「それでは、同じ様に、別の商品も、検分してください」

 「はい、わかりました。
 できました。大丈夫です」

 「せっかくですから、残りの2人にもやって貰いましょう」

 「えっ、いいのですか?」

 「どうぞ、順番にやってください」

 2人は、おそるおそる、検分していった。それぞれが、2品ずつ検分した。

 「ベルーナ大佐、終わりました。何か、質問はありますか?」

 「これは、この1個の神具で、すべての品物を検分できるのか?」

 「はいそうです。今までの15種類だけでなく、一定の条件を満たすものであれば、すべて、検分できます」

 「凄い、これは、凄い」

 「あの、私が、質問してもいいですか?」

 先ほど、検分を行った軍人が手を挙げて聞いてきた。

 「はい、いいですよ。どうぞ、聞いてください」

 「検分しているときに、魔力をほとんど使わなかったのですが、何故ですか?」

 「それは、神具の中に魔石を埋め込んでいるからです。その魔石に予め、普通の軍人の3日分の魔力を貯めています。その魔力を使うので、魔法を起動する人は、ほとんど魔力を消費する必要がないのです」

 「すると、3日分の検分が、魔力の消費なしに行えるということですか」

 「そうですが、予め、3日分の魔力を注ぎ込んでいないとだめですよ」

 「凄い、事前に準備すれば、今までの3倍の検分が出来る。これまでは、魔力量の枯渇の為に、多量の検分ができなかったが、これからは、すべての検分を行うことすら、可能になる」

 「その他、質問はありませんか?」

 研究者が手を挙げた。
 
 「どうぞ、何でしょうか」

 「この神具を作った人を紹介してください」

 「あの、質問だけです。要望は、だめですよ」

 「そうですか。それでは、この魔法陣は、前の魔法陣を元に作られているのですか?」

 「そうですね。前の魔法陣は、無駄が多かったので、かなり、簡略化しています」

 「すると、前の魔法陣を理解したということですか?」

 「そうなりますね」

 「私達は、前の魔法陣すら、見ることが出来ませんでした。是非とも、その魔方陣を教えてください」

 「今の魔法陣は、秘密です。それに、前の魔法陣は、創った人の特許に関係するかもわかりません」

 「そうですね。魔法陣は、秘密ですね」

  「でも、普通の魔法陣を説明するのは、問題ないですよ。例えば、書物に乗っている魔法陣を検討することは、出来ますよ」

 「えっ、本当ですか。そんなことをやって貰えるのですか」

 「はい、ただ、一つだけ、条件があります。誰れから教わったかは、秘密です」

 「わかりました。それで、結構です。お願いします」

 私は、また、余計な事を言ったと思い。後悔したが、既に、言ってしまったことだ、仕方がない。
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