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 第12章 魔法学院(見学)編

1203.テラの憂鬱

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 私は、思念伝達で、レンゲーに連絡を入れた。

 「テラだけど、今、時間はある?」

 「はい、大丈夫です」

 「以前、依頼した件はどうなった?」

 「港湾の改善計画は実施段階に移行しています。
 それから、軍隊の配置計画は、立案が終わりました。基地の増設と機能移転は、これからです。
 最後に、ソーロン帝国とミーヤ国の連合艦隊への対応については、新規の武器を考えています。
 今、設計を依頼しています。完成すれば、テラにも、依頼したいことがありますので、その時は、お願いします」
 
 「はい、分かった。引き続きよろしくね」

 私は、思念伝達を切った。もう少し、慌てないといけないが、概ね順調だ。

 次に、思念伝達で、シロッコスに連絡を入れた。

 「テラだよ。シロッコス、少し、頼みたいことがあるの。いいかな?」

 「何でしょうか」

 「以前、巫女の話を聞いたのでけど、光魔法が使えるって、本当?」

 「はい、本当です。我々の巫女は、光魔法が得意です。逆に、光魔法が使えない巫女はいません」

 「そうか、その巫女を仲間にできないかな? もちろん、戦場に連れて行くつもりはないよ。
 医療機関での治療にあたって欲しいんだ」
 
 「巫女に病院での治療に当たれということですか? 神殿ではないですよね」

 「君たちの宗教に関与するつもりは、ないよ。君たちの宗教は尊重するよ。だから、巫女が今まで通りの宗教活動を行っても、構わないし、寧ろ援助するよ」

 「分かりました。説得してみます。でも、期待はしないでください。巫女の気持ちはよくわからないので」

 「いいよ。慌てることはないからね。ゆっくりと時間を掛けて、説得してみてくれ」

 「はい、了解しました」

 私は、思念伝達を切った。

 あぁ、しまった。家族の移住のことを確認するのを忘れていた。

 まあ、家族の事は、私がとやかく言う問題でもないね。時間と共に解決するだろう。放っておくに限るね。

 私達は、1時間目の授業に備えて、教室へ移動した。

 教室の中には、いつものメンバーが居た。何故か、今日は、3人が並んで座っていた。

 私達は、指定席に向かた。シジン魔法学院の見学以来なんだ。気不味くなっている。

 私は、会釈だけして。前を通り過ぎようとした。レイカがこちらを見て、睨んでいる。気づかない振りをして、移動し続けた。

 「やれやれ、だね。何かしたかな?」

 「うん。しなかった」
 
 「そうだよね。スパア、してないよね」

 「うん。していない」

 まあ、こちらも、時間が解決してくれるだろう。だって、時間だけは、多分、半永久的にあるだろうから。でも、これじゃ、賢者サビオと同じ気持ちになってしまうだろうな。ひょっとすると、賢者サビオ以上に寂しくなるのかもしれないね。賢者サビオは、地下牢に居たから、見なくて済んでいるからね。

 いつか、スピアともお別れ、そんな時がくるのだろうね。そろそろ、自分の将来を真剣に考える時期かもね。恋愛も、より悲しくなる材料かもしれないね。
 
 あれ、授業が終わったようだ。考え事をしていたら、いつの間にか寝ていたようだ。

 「スピア、私、寝てた?」

 「うん。寝てた」

 「何の授業だったんだろう。そう言えば、自分自身の時間割も作っていなかった。ひょっとして、私は、受講申請も出していなかったかな? これは、すぐに確かめないと、進級どころじゃないね」

 私達は、急いで、魔法学院の事務室に行った。

 「すみません。私は、テラと言いますが、何か、手続きで忘れていることはありませんか?」

 「あらら、今頃、変な事をいう学生が来たよ」

 「入学のしおりは読みましたか?」

 「多分、制服と部屋以外には、何も貰っていないと思います」

 「それでは、学生証も貰っていないの」

 「はい、何も貰っていません」

 「ちょっと、待っていなさいよ」

 「はい、すみません」

 係のおばさんは、書類を探している。どうも、私の入学書類がないようだ。自分でも出した記憶がない。

 「テラさん、あなたの書類が見つからないわ。本当に、合格したの? 入学試験の受験番号は?」

 「えぅ、受験番号? 入学試験?」

 私は、事務室を飛び出して、学院長室をノックした。

 「テラです。失礼します」

 学院長室に飛び込むと、ミュー先生とシルバが何やら、深刻な顔で、見つめあっていた。

 「あら、テラ、呼んでいないよ」
 
 「いえ、自分できたよ」

 「何かあったの。慌てていたようだけど」

 私は、シルバの傍に駆け寄って、耳元で囁いた。

 「私、魔法学院に入学出来ているの?」

 「大丈夫よ。テラは、魔法学院の生徒よ」

 「でも、事務室に私の書類がないって。それに、学生証も、貰っていないよ」

 「当たり前でしょ。あなたの身分を書いて出すの? テラ伯爵って、書くわけ?」

 「そうだね。できないね。そしたら、私は、卒業できないの?」

 「心配しなくていいよ。私が学院長なんだから。でも、学生証はすぐに作るね。うっかりしてた」

 「それから、受講申請は、いらないの?」

 「あぁ、それもいるね。テラは、担任の先生は誰?」

 「担任? 初めて聞くよ」

 「そうか、それも忘れていたか」

 シルバは、私とひそひそ話を止めて、大きな声で、ミュー先生に声を掛けてた。

 「ミュー先生、先生は今、何人の生徒の担任をされていますか?」

 「私は、レイカ、一人です」

 「それじゃ、悪いけど、この、テラの担任もお願いします」

 「はい、わかりました」

 「テラ、今後はミュー先生に学校関係の事は、すべて相談してね」

 「ミュー先生、テラは書類の不備があったようなので、後で対応をお願いします」

 「はい、わかりました」

 「テラは、授業に行っていいよ」

 「はい、わかりました」
 
 また、シルバに借りが出来てしまった。でも、これって、誰のせい? 私のせいかな?
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