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 第13章 魔法学院(マテーダ王女)編

1307.難病

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 リンダとの思念伝達を終えた私は、何とか、授業に間に会った。

 「あら、テラ、ギリギリね。いつもの席はないよ」

 レイカが話しかけて来た。私は、教室の隅に目をやった。すると、この間、見かけたリューが、一人で、座っていた。彼は、この授業も受講していたんだな。

 上級教師のユーキの水魔法の初級講座は、13人が受講していた。シルバにこっそり教えて貰ったんだ。それで、気がつかなかったのだな。この講座が一番多くの生徒が受講している。次が、火魔法の初級講座で、12名だ。風魔法の初級講座は、9名とやや少なくなっている。

 私は、教室の隅のリューの隣に座った。

 「お早う。私は、テラ、よろしくね」

 「あっ、ぼく、リュー」

 「どこか痛いの? なんだか、辛そうな顔をしているよ」

 「うん。気にしないでね。いつものことなんだ」

 「関節が痛くなるんだ。でも、じっとしてると、少しはましになるよ」

 「そうか、私、治癒魔法が使えるよ。やってみてもいい?」

 「無駄だよ。治癒魔法が気かないんだ」

 「でも、やってもいいでしょ。無駄でも、私はいいよ」

 「それなら、やってみて。ぼくは、かまわないよ」

 私は、スキル鑑定で、リューを調べてみた。すると、血液の病と表示された。でも、軽い方みたいだ。このままでは、余命1年ほどのようだ。この世界で、治療薬が出来るのは、まだまだ先のことだろう。

 輸血もまだ行われていないようだから。医学の進歩は、まだまだ先だろう。魔法があるので、それに頼り切ってしまった結果、科学の発展が遅れているように思う。大抵の事は、魔法でもいいのだが、医学は、もっと、進歩して欲しい。

 「少し、出血しているみたいだね。それで、痛みがあるのだと思うよ」

 「そうなんだ。血が止まり難いんだ」

 「血よ止まれ。治癒魔法ヒール、少しは、効いたようだけど、これは、治療とは言えないね。ごめんね。ダメだったよ」

 「ううん。少し良くなったよ。痛みが少なくなったよ」

 私は、自分の力の無さを感じて、頭を下げた。すると、リューが頭を撫でてくれた。

 「テラ、ありがとう。無駄じゃなかったよ。だから、元気出してね」

 「うん。分かった」

 私は、その後も、授業に集中できなかった。リューのような素直な子が、後1年しか生きられない。何とか、出来ない物か。

 「そうか、土魔法と同じだ」

 「テラ、大丈夫? 急に大声を出して」

 私は、声を上げて叫んでいたようだ。まあ、立ち上がっていなかっただけ、ましだが。皆の視線がイタイ。

 魔法は、イメージが大切だ。イメージできない物は、発動しない。こんな簡単なことを忘れていたなんて。リューの治療の方向が少し見えて来た。でも、治療までにしなければならないことが多すぎる。

 やはり、チームを作らないとだめだ。私一人の知恵では、限りがある。誰か、居ないか?

 私は、授業が終わると、急いで、ミュー先生の所に行った。ミュー先生は、神殿で、神官として働いていたという。様々な患者を診て来たようだ。何か、参考になることが聞けるかもしれない。

 「コン、コン。テラです。入ってもいいですか?」

 「はい、いいですよ」

 「少し、相談があってきました」

 「何かしら」

 「噂ですが、ミュー先生は、神殿で働いていたことがあるって」

 「よく知っていますね。随分前の事ですが、神殿で、神官として働いていました」

 「それで、多くの患者の治療に携わっていたと聞いたんですが」

 「えぇ、そうですよ。その噂は、本当です」

 「それで、相談ですが、医学を勉強するのには、どうしたらいいですか?」

 「医学? 医者になりたいのですか?」

 「少し、違います。私は、医者になりたいのではないのです。病気を治したいだけです」

 「それって、医者じゃないの? 病気を治すことが、患者を治すことでしょ」

 「そうですが、少し、違うのです。私は、病気を治したいでけで、患者が治れば尚いいですけど」

 「まあ、いいわ。いくつか、書物があるから、それを読んでみたら? 色々な病気について理解が深まると思うわ。私が持っている本を貸すわ。一度、読んでみて」

 「はい、ありがとうございます」

 私は、ミュー先生に本を借りて、自分の部屋に戻った。ざっと目を通したが、私が思っていた物ではなかった。確かに、色々な症例と対処方法が載っていたが、科学とは言い難い。病気が雑多に載っているだけの様に思えた。

 「コン、コン。テラ、部屋にいるの?」

 「いるよ。誰?」

 「私よ。レイカよ。急いで教室を飛び出したけど、大丈夫?」

 「うん、大丈夫だよ。心配いらないよ」

 「ねえ、入ってもいい?」

 「あぁ、いいよ。入ってきて」

 私は、何だか、気怠くて、ベッドに横たわったまま、レイカを迎えた。

 「テラ、具合が悪いの?」

 「いや、横になっているだけだよ。どこも悪くないよ」

 「でも、気分がすぐれないのじゃない」

 「少し、横になっていれば、治るよ」

 「そう、疲れが出ているのね。さっき、ミュー先生の所へ行っていたけど。何か言われたの?」

 「あぁ、ミュー先生の所で、相談に乗って貰っていたんだ」

 「そう、呼び出されていたのじゃないのね」

 「どうして、私が呼び出されるの?」

 「だって、ミュー先生は、テラの担任でしょ。だから、呼ばれたんじゃないかって、思ったの」

 「そうだったね。忘れていた。レイカの担任もミュー先生だったね」

 「そうだけど、私、ミュー先生、嫌いよ」

 「どうして? 嫌いなの。優しい先生だよ」

 「それは、テラに優しいのだわ。私には、厳しいよ。だから、嫌い」

 「そんなことないよ。レイカの感違いじゃないの?」

 急にレイカが私に飛びついてきた。そして、私の胸を叩き始めた。

 「バカ、バカ、テラのバカ」

 「おい、おい、レイカ、痛いよ」

 「当たり前でしょ。叩いているんだから。テラのバカ」
 
 私は、レイカを抱きしめて、頭を撫でてあげた。髪の毛が艶やかで、手の感触がとても滑らかだ。私は、レイカの髪の毛をかき上げて、耳がみえるようにした。そして、耳元で、囁いた。
 
 「どうしたの? そんなに怒って」

 「テラが、私のこと無視するからよ。今日だって、私のこと無視したでしょ」

 「何、言っているの。無視なんて、してないよ」

 「だって、私の横を黙った通り抜けたよ。それに、変な男の子と授業中ずっとひそひそ話していたし。誰なの?」

 「彼は、リューと言って、たまたま、いつも私が座る席に座っていただけだよ」

 「最近は、私の横で授業を受けているのに。なぜ避けるの?」

 「ごめん。そんなつもりはないよ。怒らないでよ」

 私は、頭を撫でながら、レイカが鎮まるのを待った。今日は、一日このままかも。
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