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 第17章 テラの社交界デビュー編

1703.魔人族の冒険者

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 私達は、リーダーを捕まえようと思っていたが、その代わりに魔人族の冒険者だと名乗るモリーロを捕らえた。だが、魔人族を見たことがない私達には、魔物でないと断言できなかった。

 そこで、新規に作った基地に連れ帰って来た。

 「レンゲー、ちょっと来てくれる?」

 「はい、テラ、何でしょうか?」

 「近くのダンジョンを制圧してきたのだけど、そこに、魔人族を名乗る者がいたの。だけど、私には、魔人族か、魔物か、区別がつかなくて、困っているの」

 「私は、分かりますよ」

 「それじゃ、見てくれる?」

 私は、レンゲーと共に、捕らえて者の前に行った。

 「レンゲー、どうですか?」

 「確かに、魔人族ですね。間違いないです。でも、魔人族だからと言って、我々の味方とは限りません。一部の魔人族は、魔物を操って、人間に攻撃を仕掛けてくることがあります」

 「魔人族も、魔物を操るって、言っているよ」

 「私は、決してそんなことはしません」

 「それなら、何故、魔物がいるダンジョンにいたの?」

 「隠れていたのです。灯台下暗し、って思って」

 「レンゲー、どう思う?」

 「さあ、なんとも言えませんね」

 「先ほど見せた、冒険者IDはどうですか? あれは、私のものですよ」

 「テラ、冒険者IDを持っていると言っていますが、本当ですか」

 「はい、先ほど確認しました。確かに、本人の物です」

 「それなら、心配ないですよ。冒険者ギルドのお墨付きですから」

 「そうなの? 信用してもいいの?」

 「そうですよ。早く、縄を解いてやってください」

 「スピア、放してあげて」

 スピアが、モリーロのロープを解いた。やっと、信用してもらい、モリーロは、ほっとしたようだ。

 私は、未だに、納得していないけど。ダンジョンの中に隠れるって、可笑しいよ。

 「実は、我々の村が、この少し北西の所にあるのです。それが、最近急激に魔物が増えて、安心して暮らせなくなったので、私は、冒険者になったのです」

 「それが、どうして、また、戻って来たの?」

 「逃げ遅れていた魔人族の子供達が、魔物の隠れ家に連れ去られたと聞いたので、何とかして、助けてやりたいと思って、戻って来たのです」

 「それで、子供達は、見つかったの?」

 「見つけるどころか、隠れるだけで、精一杯でした」

 「モリーロは、結構強そうだけど、それでも、だめだったの?」

 「はい、それなりのレベルでは、あるのですが、やはり、一人では、太刀打ちできませんでした。それに、魔人族の癖に、私は、魔力が余りないのです」

 「そうか、疑って、わるかったね。許してね」

 「はい、気にしないでください。ダンジョンの中に隠れるなんて、誰も思いませんからね」

 「それじゃ、モリーロは、自由にしていいよ。好きな所に行っていいよ」

 「あの、一つお願いがあるのですが」

 「食事なら、食べて行っていいよ。スピア、何かあげて」

 「いえ、食事ではなくて、助けて貰えませんか?」

 「えっ、何を助けるの?」

 「魔人族の子供達を救い出して貰えませんか?」

 「それは、いいけど、私には、魔人族か、どうか分からないよ。だから、無理だよ。スピアもダメだね」

 「うん、だめ。分からない」

 「ほら、分からないって、言っているよ。だから、無理ね」

 「あの、私は分かります」

 「でも、逃げるんでしょ。それじゃ、無理だよ」

 「あの、テラが居れば、逃げませんよ」

 「本当? 逃げない?」

 「はい、テラが、守ってくれたら、逃げません。本当です」

 「面倒なのは厭なんだけどね。それじゃ、私の傍を離れないでね」

 「はい、離れません」

 「それから、魔人族だったら、すぐに言ってよ。でないと、殺してしまうよ」

 「はい、それは、大丈夫です。少し離れたところからでも、同胞の事は、感じることが出来ます」

 「それなら、行こうか。スピア、仲間を10人だけ一緒に連れて行きたいけど、いい?」

 「うん、いいよ。10人で大丈夫?」

 「大丈夫だよ。残りは、休ませといて。よく働いてくれたからね。それに、好きなだけ、食べる様に言っておいてね」
 
 「モリーロ、北西の所にある村に先に行くよ。案内してね」

 「はい、こちらです」

 私達は、モリーロの案内で、魔人族の村に連れて行ってもらった。途中で、魔物に会うことはなかった。村は、すべての家が壊されており、一部の家は、火がつけられていた。未だに、燻っているようだ。

 「モリーロ、魔人族は残っている?」

 「何か、感じます。微かですが、感じます」

 私は、モリーロの行く方向に付いて行った。

 「テラ、この下です。家の下敷きになっているようです」

 「分かった」

 私は、土魔法で、上に乗っている岩などを取り除いた。すると、地面の小さな窪みの中に2人の子供が蹲っていた。怪我をしているようだけど、命に別状はないようだ。念のために、私は、光魔法で、治癒魔法を2人に掛けておいた。

 「大丈夫か?」

 「「はい。大丈夫です」」

 2人とも、元気な声だ。大丈夫そうだ。

 「他の人はどうしたの?」

 「大勢、連れていかれたの。子供ばかり、連れていかれたの」

 「そうか、怖かったね。もう、大丈夫だよ」

 連れていかれたのは、子供だけの様だ。おそらく、大人は殺されたのだろう。子供2人をスピアの仲間に頼んで、基地に運んで貰った。

 「モリーロ、どちらに行ったらいい?」

 「こっちだと、思います」

 モリーロは、北の方角を指示した。すこし、疑問に思ったことを聞いてみた。

 「モリーロ、歩きながらで、いいから、少し、教えてくれる」

 「はい、何でしょうか」

 「こんなことは、今まででもあったの?」

 「魔物に攻撃されることはありましたが、子供が連れ去られることはなかったです」

 「魔人族の他の村は、どうしているの?」

 「魔人族は、村同志の交流をしていません。それぞれの村が独立して、行動しています。だから、他の村の様子は、全くわかりません」

 「そうか。ありがとう。先を急ごうか」

 「はい、お願いします」
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