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 第20章 恨まれたサルビア

2006.隠れ家

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 ガーベラにすべてを話すことによって、私は、安らぎを得ることができた。そして、ガーベラの愛をまた、確認することが出来た。

 「テラ、もう、起きたの? 私は、もう少し、寝て居たいわ」

 私達は、王宮のガーベラの部屋で、一夜を過ごした。ただ、今のこの、テラの姿を他の者に見られるわけにはいかない。

 「ねえ、ガーベラ、ムーンの姿じゃ嫌かい」

 「そうね、出来れば、テラの姿がいいけど、我慢してもいいわ」

 「そうか。今の姿は、気に入っていないのか」

 「悪くはないわ。でも、テラの方が好きね」

 「それじゃ、ガーベラの望む姿を創るって、どう?」

 「私好みの姿になってくれるっていうこと?」

 「そうだよ。このテラの姿は、流石にまずいだろう」

 「そうね。誰かに見られると困るね。仕方ないわ。暫くは、ムーンの姿で我慢するわ」

 「ありがとう。もし、気に入った姿を思いついたら、いつでも作るよ。ガーベラの気に入った姿をね」

 「はい、はい、分かったわ」

 「それじゃ、僕は出かけるよ」

 「私は、もう少し寝てるわ。少し、眠いの」

 「それじゃ、またね」

 「バイバイ」

 私は、ガーベラの部屋を出て、転移魔法で、地下牢前の工房に戻って、ムーンの姿になった。そして、また、転移魔法で、自分の家に戻った。そして、ナターシャの部屋をノックした。

 「ナターシャ、『金喰虫』の患者のリストはできている?」

 「ちょっと、待ってください。机の中に入れているので、持ってきます」

 ナターシャは、尻尾を振って、机に向かっていった。ナターシャは、猫耳族特有のふさふさの尻尾を持っている。私は、猫耳族に目がない。ついつい、見とれてしまう。

 「ムーン、これです」

 「ありがとう。結構多いね。13人か。順番に回って行こうか」

 「ムーン、私も行くのですか?」

 「当たり前だ。助手のいない医師など、信用されないからな」

 「分かりました。それなら、着替えてきます。医師の助手らしい服装に着替えますね」

 「そうか。その方がいいな」

 ナターシャは、私を気にせずに、素早く着替えた。

 「ムーン、用意が出来ました」

 「それじゃ、行こうか。まず、最初は、ブルノンだね」

 「すぐ、近くの屋敷です」

 私達は、歩いて、ブルノンの屋敷に着いた。事情を離すと、すぐに患者の所に案内して貰えた。

 「それじゃ、診て行きますね。気分が悪くなったら、すぐに言ってくださいね」

 私は、スキル鑑定で、調べてみた。やはり、サルビアの時と同じだ。程度は、軽いが、基本的に同じ症状だ。私は、解呪魔法ディスペルを掛けて、治療した。私のレベルが上がっているようで、一度の魔法で、治療が完了した。

 「これで、治ったはずです」

 「どうも、ありがとうございました。このお礼は何を差し上げたらいいのでしょうか」

 「特に、何もいりませんよ。お金はいらないですよ」

 「でも、何か、仰ってください」

 「ちょっと、変なお願いですが、侍女を一人連れて帰ってもいいですか?」

 「侍女を引き抜きたいというのですか?」

 「その通りです。私は、この街に来て、まだ、それほど経っていないので、優秀な侍女を手に入れたいのです。一人、譲って貰えませんか」

 「そうですか、私の方には、問題はありません。好きな侍女を選んでください」

 ブルノン家の主人は、侍女をすべて呼び寄せて、私の前に並べてくれた。

 私は、スキル鑑定で、一人ずづ調べて行った。やはり、思った通りだ。一人の侍女が例のブローチを付けていた。

 「ご主人、この侍女を頂きたい」

 「わかりました。マリー、このムーンさんの所で働きなさい。よいな」

 「はい、分かりました。支度をしてきます」

 マリーは、自分の部屋で、荷物をまとめる振りをした。そのまま、逃げ出すつもりだ。

 私は、すぐに、ブルノン家の主人に許可をとり、マリーの後を付けた。周りの目が無くなった所で、隠密魔法を起動して、姿を消した。

 「あのムーン、私の事を見やぶったというの? 大勢いるのに、すぐに私を指さした」

 マリーは、自分の部屋で、荷物を詰め終わると、2階の窓から、外に出て、1階に飛び降りた。

 私は、そのまま、後を付けることにした。

 「ここまで、来れば、もう大丈夫ね」

 15分ほど、歩いただけで、もう、マリーは、安心しきっていた。

 もう、周りを見る気配もなく、一直線で、隠れ家へと急いでいった。

 少し通りから離れた所に、屋敷があった。かなり、立派な物だ。

 「コン、コン。マリーです」

 「こんな時間に、抜け出してきて、屋敷の方は大丈夫なのか」

 「実は、ムーンという医者がやって来て、ブルノン家の息子を治したのです」

 「あの病気を治したというのか。あれは、普通の医者には、治せないぞ」

 「でも、確かに直していました」

 「それで、どうした?」

 「その医者のムーンが、侍女を雇いたいといって、私を指名したのです。これは、危ないと思って、逃げてきました」

 「おい、マリー、つけられて来たのじゃないのか?」

 「そんなはずは、ありません」

 「それなら、いいが。この屋敷は知られるとまずい。色々、置いているからな」

 やはり、この屋敷が隠れ家か。しかも、神具を置いているみたいだ。
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