緑のブレスレット

白詰えめ

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新しい日々へ

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 私は、生まれた時から魔力が強いらしい。他の人と比べた事がないし、比べる事もできぬのだから自分自身ではわからないのだけれども。強すぎた魔力は、人々に恐怖を与えたらしく私は、何年もこの塔の中で過ごしている。どうやら家族からも怖がられたらしい。
 だが、外の世界を知らぬから、不便なことは一つもない。ただ、退屈だ。最近は退屈だという事ばかり考えている。魔法が使えても、外に出れない事以外何不自由なく暮らしていても、退屈なものは退屈なのだ。

 何の魔が差したか、魔法で生き物を作ろうと試みた。強い魔力のお陰か、1日限定の話し相手を作れるようになった。今までは、本としか言葉を交わした事がなかったからすごく刺激になった。意味もない話を1日中話す。とても楽しかった。自分の言葉へ反応が貰えるのが楽しかった。本で読んだ妖精を模して作った話し相手に、名前もつけなかったが、いつしか愛着が湧いてきた。雑に作っていたそれを念密に作ることにした。毎回姿も形も話し方も何もかも違ったそれは、いつしか同一の意思を持ったように見えた。ふとある時、昨日の話が継続している事に気がついた。作り込みすぎただろうかとも思った。だけど、楽しさが勝りどうでも良くなった。

「リタ、今日はいい天気だね」
「そうね」
「リタはどんな天気がすき?」
「みるだけだから、さほど変わらないけれど、そうね。曇りが好きかしら」
「そっか!リタは曇りが好きなんだね」
「ええ」
「リタは好きな色とかある?」
「考えたこともなかったわ。強いて言うなら」
 そう言って私は、話しかけてくるそれを見て答えた。
「緑」
「緑か!私の色とおんなじだね」
「ええ」
「ふふふ、覚えたよ!」
そう言ってそれは、いや仮に妖精と言っておこう。妖精は楽しげに何処かへ飛んで行った。

 自分で作った生き物なのに、私の知らない事を沢山しているように見えた。

 今日もいつも通り魔法を使い妖精を作った後、うたた寝をしていると「リタ!楽しみにしててね」と告げて、妖精は今日もどこかへ行った。話し相手がいないのは寂しいが、妖精が私のことを思って何かをしてくれているような気がして、嫌な気はしなかった。

 それから、少し話してはどこかに行ってしまう妖精との日々を楽しんだ。この繰り返される、当たり前になりつつある妖精との日常が楽しかった。妖精は魔力の強い人にしか見えないらしく、外に出る事も可能だと妖精の口から聞いた。そのため、外の話を私にしてくれた。この塔から少し離れた場所には、村というものがあり人が沢山いるそうだ。私には関係ない事だと思っていたが、楽しそうに話す妖精の姿を見たくてずっと聞いていた。

 
 定期的に送られてくる食料や日用品の中に一通の手紙が入っていた。その内容は、王が新しい代に引き継がれたというものだった。そこまでは、関係の無い話と、片付けられたのだが、最後の一文が、私に苦難を突きつけた。

『ぜひ、お会いしたいです。5日後に御迎えに参ります。』

 そう書いてあった。どうやら、王直々の手紙らしく断る事はできなかった。断ったらどうなるかわからないという不安もあった。もう、妖精という相手ができて、退屈じゃ無くなっているのだからこんな刺激はいらなかった。

「リタ、元気ない?」
「ちょっとね」
「何かあったの?」
「人に合わなければならないの」
「そんなに辛い事?」
「ええ、何があるかわからないもの」
「大丈夫だよ!」
「でも、私あなた以外と話した事ないのよ、それに、また怖がられたら」
声が震えてきた。こんなに感情的になるなんて思っていなかった。不安のせいか涙まで溢れてきた。妖精は何も言わずにそばに居てくれた。小さい体のはずなのにすごく頼もしく見えた。

「リタ。ねえ!リタ!」
昼寝をしていた私に妖精が話しかけてきた。手紙を貰ってからは何もする気が起きず寝る事が多くなっていた。
「どうしたの?」
目を開けると、そこには緑色のブレスレットがあった。
「綺麗」
思わず言葉が出る。
「そうでしょ!リタのために作ったんだ!」
何かを貰うことが初めてで、どう答えればいいかわからなかった。
「ありがとう」
「喜んでもらえてよかった!」
早速ブレスレットをつけると、妖精は楽しそうに私の周りを飛び回った。私も嬉しかった。明日が予定の日だと言う事を忘れてしまうほどに。

 翌朝起きると、外に人の気配がした。
「そうだ。今日だった」
震える手を必死に抑えながら扉を開けた。
「お待ちしていました」
上手く笑えているだろうか。腕についているブレスレットをギュッと握りしめた。

 びっくりするほど何事もなく、馬車に乗り王が住む城についた。すぐに王の場所へ案内された。

「はじめまして。リタと申します。お招きいただきありがとうございます」
 そう短く告げ頭を下げると
「顔をあげてください」
と声がして顔をあげた。随分若そうに見える王は、恐怖の目ではないものを私に向けているように感じた。私と目が合うと、2人きりになりたい、と部屋にいた人を出て行かせた。何があるのだろうと少し震えていたら、王が私の目の前に歩いてきた。
「今まで、申し訳ありませんでした」
そう言って深々と頭を下げた。
「顔をあげてください!」予測していなかった出来事に私は焦った。
「本当に申し訳ないと思っているのです。しかし、許していただかなくても構いません。何の罪もない人を閉じ込めると言う、罪深い事をしていたのですから」
まさか謝罪を受けるとは思っていなかった。
「貴方がした事ではないでしょう?」
前の王がした事でこの人には関係がない。それに憎むほど、もう、人に期待はしていなかった。
「貴方を閉じ込めていた事実は変わりません」
「でも、、、」
返す言葉が見つからなかった。
「貴方のしたい事はありませんか?これまでの事に比べたら、何をしてもお詫びにはならない事はわかっています」
「考える時間をください」
「わかりました」
わけもわからないまま、案内された部屋へと向かった。ふかふかのソファに腰を下ろししばらくぼーっとしていた。

「したい事」
口に出してみても、よくわからなかった。こういう時は相談をしてみるものなのだろうか。
「そうだ」
妖精に相談してみる事にした。

「今日は遅かったね」
「珍しく用事があってね」
「そっか!」
妖精と話していると、少しづつ落ち着いてきた。だが、したい事というのは中々思いつかなかった。
「ねえ、リタ!魔法を極めてみない?」
「魔法を極める?」
「うん!だってリタずっと独学でしょ?」
「そうだけど」
「じゃあ学んでみようよ!そしたら、きっと、楽しいから」
「そうね」
特に思いつかなかったので、話に乗ってみる事にした。

 王に魔法を学びたいと伝えると、すごく喜ばれた。話はトントン拍子に進み、魔法が学べる事になった。はじめは、違う場所だと慣れないだろうからと塔に戻り、魔法についての本をもらいそれを読んだ。その中でとても気になる分があった。どうやら、私が作ったと錯覚していた妖精は、作ったのではなく召喚していたらしい。だが、魔力が強い人にしか叶わない魔法なので御伽話として扱われたそうだ。日常だったものが御伽話と言われ凄く不思議な感覚があった。

 しばらく本を読んだり、塔に人が来て魔法を教えてもらう日々が続いた。魔法があると楽しくて、人と会う恐怖を忘れさせてくれた。

 いつしか私は、人に会う時に恐怖を感じなくなっていた。また、新しい王のおかげか私の存在を怖がる人もいなくなった。魔法が浸透し、魔力は怖くないものだと広く知れ渡ったようだった。私は、久しぶりに妖精を呼んだ。

「リタ!たのしそうだね!」
「ええ。貴方のおかげよ」
「よかったぁ!」
「ありがとう」
「ううん!お礼を言うのはこっちの方だよ」
「どうして?」
「実はね、妖精界は今魔力が足りなくて」
「そうなの?」
「うん、昔みたいに召喚できる人がいなくなっちゃったから。召喚してもらう事で魔力を補充してたから」
「そうなのね、じゃあ、私が最近召喚していなかった時間は?」
「大丈夫だよ!本来は数十年に一度呼び出される程度だから、リタのおかげで妖精界はすっごく安定してる」
「よかった」
「ねえ、リタ!今楽しい?」
「ええ。楽しいわ」
はじめて心の底から笑えた気がした。私はもう、1人じゃない、そう思えた。退屈だと感じる事は、もう、全く無くなっていた。
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