レベリング・マーダー 一週間に一回は人を殺さないと自分が死んでしまう。ならばいっそ勧善懲悪しよう。

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第6話 吉田ねじ有限会社会社

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「ステータスクローズ」

ぴこーん!

勘で言ってみた俺の言葉に呼応してステータスボードが目の前から消えた。

「あぶねー。よかった消えて」
ずっとステータス画面が目の前に出てたら邪魔でしょうがないからな。


俺は雨上がりの公園にいた。
ここでさっきまであきらという少女に殺人者について教わっていたのだった。

・殺人者は人を殺すごとにレベルが1上がる。
・殺人者が殺した相手は身に着けているものごと消えてなくなる。

「やっぱりネックなのは最後に聞いた話だよなぁ」

・殺人者は一週間以内に次の人間を殺さないと死ぬ。

「俺が人を殺すのか……まいったな」
と口では言いつつも俺は心の中では既に覚悟を決めていた。

あきらが言ってくれたように俺は悪人だけを狙って殺せばいいんだ。
やらなければ自身の生命が脅かされるというのならこれは法律的に正当防衛、緊急避難が適用されるはずだ。
もちろんそんなことを大っぴらに言うつもりはないし、言って通用するはずもないのだがそう思いこめば少なくとも精神衛生上俺のメンタルは保たれる。

「やるしかないよな」
自分に言い聞かせると俺は飯島裕子のスマホを拾い上げ、中に入っていた動画を全部消去してから公園の池に投げ捨てたのだった。


◇ ◇ ◇


「おっすヤマト」
「おう、おはよう冴木」

翌日会社に行くと朝一で唯一の同期であり幼馴染でもある冴木が肩に手を回してきた。

「冬なのに今日はやけにあっついなー」
「だったらくっつくなよ」
「へへっ。それより先週のあれ、だいじょぶか? みんなの前で土下座なんてひどいことやらせるよなー専務も」
「ああ、もう気にしてないさ」

俺の勤めている吉田ねじ有限会社は全社員二十人という、台風が来れば吹き飛ぶようなちっちゃな地方の下請け会社だ。
社長が父親で専務が母親、常務が息子という昔ながらの家族経営のような会社だから、社員はみんなこの親子の機嫌を損ねないように気を配っている。
普通は社長が一番偉いはずだがこの会社では母親である専務が実質ナンバーワンだった。

俺は先週その専務に理不尽にも全社員の前で土下座をさせられたわけだが、そんなこと社会人ならみんな程度の差はあれ経験していることだろう。
この会社にはパワハラを受けたと訴え出るようなシステムも部署もないし、そんなことをしたら何かと理由をつけて解雇させられるだけだ。

俺は気持ちを切り替えると何事もなかったかのように自分のデスクについた。

「うぃっす、鬼束パイセン」
隣のデスクの岡島が挨拶がてらグータッチを強要してくる。
チャラチャラした男だがこれでもれっきとしたこの会社の社員で俺の後輩だ。

「ああ、おはよう岡島」
俺は岡島のノリはあまり好きではないのでグータッチは無視して返事だけした。

「おはよう鬼束くん」
すると今度は対面に座る細谷さんが話しかけてきた。

「おはようございます細谷さん」
「今日も外回りだよね。今日は暑くなるみたいだから体調に気をつけてね」
「はい、ありがとうございます」

俺を気にかけてくれるこの女性は細谷和美さん。
俺の一個上の先輩だが三月生まれなので年は俺と同じ二十四歳。
美人なのにそれを鼻にかけない、感じのいい女性だ。
冴木にだけは酒が入った時ついポロッと口を滑らせてしまったのだが、俺は密かにこの人に好意を寄せていた。

「平気っすよ、鬼束パイセンにはおれがついてますからっ」
「あ、うん。岡島くんも気をつけてね」
「あざっす」
リズムにでも乗っているかのように首を小さく縦に揺らすと、細谷さんに対してもとても尊敬しているとは思えない敬語を使う岡島。

お前がついているからなんなんだ。
先週俺が専務に土下座させられたのだって、お前が先方に失礼な態度をとったのがそもそもの原因なんだぞ。

岡島は仕事がまったく出来ない奴でその上いつもこんなだから、入社して三か月なのに既に多くの取引先といざこざを起こしていた。
そしてそれをフォローするのが教育係の俺の役割となっていた。
そんな駄目社員なら普通は即クビだろうが、岡島は超が付くほどのイケメンなので専務にとにかく気に入られている。
おかげで俺が毎度とばっちりを食う羽目になっているのだった。

とその時、
「おはようございますっ!」
冴木が席を立つと応援団と見まごうばかりの大声を張り上げた。
始業時間になり社長親子が姿を見せたのだ。

それを受けて全社員が一斉に立ち上がる。
朝の大声での挨拶は社則なのでもちろん俺もそれに倣う。

「「「おはようございますっ!」」」
「はいはい、おはようさん」
社員からの挨拶を全身に浴びて社長は気分よくガラス張りの社長室に入っていくと、テーブルに置いてあった新聞を広げた。
専務と常務は俺たちと同じフロアにあるデスクに腰を下ろすと、それぞれ化粧とスマホゲームを始める。
これがこの会社でのいつもの朝の光景だった。
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