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第54話 卒業式
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東京まで行って人を二人も殺したのに依頼料を受け取れなかった俺は、結局そのまま群馬に戻ってきた。
タダ働きの上に電車代などは自腹で払ったので収支はマイナスだ。
「……まったく」
次から依頼主に会う時は依頼主が隠し事をしているかもしれないことや依頼主自身が悪人である場合を考慮に入れて、読心呪文と悪人感知呪文は発動させておくことにしよう。
◇ ◇ ◇
俺はアパートを出ると昼ご飯を買うため近くのコンビニへと向かう。
その途中美紗ちゃんと同じ高校の制服を着た女子生徒のグループとすれ違った。
みんな一様に表情暗く妙にしんみりとしていた。
俺は数瞬頭にハテナマークを浮かべたが、ついこの間美紗ちゃんが言っていたことを思い出す。
もうすぐお世話になった先輩が卒業するんです、と。
おそらくだが今日が美紗ちゃんの通う高校の卒業式だったのだろう。
だからさっきの女子高生たちはうつむき加減で言葉少なに歩いていたのだろう。
得心のいった俺だったが逆に彼女たちから見た俺は一体どう映っていたのだろうか?
真っ昼間から二十代半ばの男がラフな恰好で出歩いている姿はニートだとでも思われたのではないか。
まあ二度と会うことはない相手にどう思われようがどうでもいいことなのだが。
コンビニに着くとさっき見た制服の女子高生たちが多数いた。
俺は彼女らの隙間を縫って唐揚げ弁当と温かいお茶を手に持つとレジに並ぶ。
昼時だというのにレジカウンターには男性の従業員が一人だけ。
これは結構待つかもな……。
心の中でそうつぶやいた時だった。
「鬼束さんっ」
俺の名前が呼ばれた。
声に反応し振り向くとそこには美紗ちゃんがいた。
さらにその隣にはもう一人同じ制服を着た女子生徒が立っている。
「あー、美紗ちゃん」
「こんにちは、鬼束さん。お昼ご飯買いに来たんですか?」
美紗ちゃんは俺の持っていた弁当に目線を落としてから訊いてきた。
「まあね。それにしても今日は高校生がやけに多いけど……」
「うちの学校今日卒業式だったんですよ。さっき終わったところなのでちょうどみんなここのコンビニに集まったんだと思います」
やはりそうだったか。
「あ、鬼束さん紹介しますね。この人は同じ図書委員でお世話になった柏木由香先輩です。それからこちらの方は鬼束ヤマトさん。お隣さんです」
美紗ちゃんは隣の女子生徒と俺に手を向けて順番に紹介してくれる。
すると柏木さんとやらが俺に対して深々と頭を下げた。
「初めまして。柏木由香と申します」
「あー初めまして。俺は鬼束ヤマトです」
礼儀正しい柏木さんの態度に感心しつつ俺もつられて頭を下げる。
柏木さんは化粧っけは一切ないものの大人びた風貌をしていた。
美紗ちゃんが可愛い系なら柏木さんは綺麗系と言ったところか。
「柏木先輩ってすごいんですよ。部活に入っていないのに今年のスポーツテストで学年トップの成績だったんです。それだけじゃなくて模擬試験では全国一位になったこともあるんですっ」
よほど柏木さんのことが好きなのか美紗ちゃんは自分のことのように笑顔で話す。
「そうなんだ。すごいね」
俺は柏木さんに目を向ける。
すると、
「いえ、そんなことないです……」
柏木さんは恥ずかしそうに首を横に振った。
クールビューティーなのかと思いきや照れて頬を染める感じもまた好印象だ。
「先輩は東京の大学に行くのでわたしも来年同じ大学を受験するつもりなんです」
「へー、そうなんだ」
「そのためにはもっと勉強頑張らないといけないんですけどね。あ、今日これから先輩に勉強みてもらう約束してるんですよ」
「仲いいんだね二人」
俺の言葉に美紗ちゃんも柏木さんも嬉しそうにはにかむ。
と、
「お次にお並びの方、どうぞーっ」
気付くとレジには男性従業員が二人体制になっていて俺の番が回ってきていた。
「じゃあ美紗ちゃん、柏木さん。またね」
言うと俺は二人より先に会計を済ませ一足早くコンビニを出る。
せっかくの卒業式の後の二人の時間をこれ以上邪魔するつもりはない。
◇ ◇ ◇
コンビニ袋を下げながらアパートに向かって歩いていると
ブウウゥゥーン……ブウウゥゥーン……。
ポケットの中に入れていたスマホが二回震えた。
俺は立ち止まるとスマホを取り出してメールを確認する。
「なになに……えっ!?」
そのメールは新たな殺人依頼のメールだったのだが俺は思わず驚きの声を上げていた。
依頼主の名は速水翔と書かれていた。正直今それはどうでもいい。
問題は次に書かれた一文だった。
[殺してほしい相手は吉田まさ子といいます。]
吉田まさ子――俺が働いていた吉田ねじ有限会社の専務だった人だ。
タダ働きの上に電車代などは自腹で払ったので収支はマイナスだ。
「……まったく」
次から依頼主に会う時は依頼主が隠し事をしているかもしれないことや依頼主自身が悪人である場合を考慮に入れて、読心呪文と悪人感知呪文は発動させておくことにしよう。
◇ ◇ ◇
俺はアパートを出ると昼ご飯を買うため近くのコンビニへと向かう。
その途中美紗ちゃんと同じ高校の制服を着た女子生徒のグループとすれ違った。
みんな一様に表情暗く妙にしんみりとしていた。
俺は数瞬頭にハテナマークを浮かべたが、ついこの間美紗ちゃんが言っていたことを思い出す。
もうすぐお世話になった先輩が卒業するんです、と。
おそらくだが今日が美紗ちゃんの通う高校の卒業式だったのだろう。
だからさっきの女子高生たちはうつむき加減で言葉少なに歩いていたのだろう。
得心のいった俺だったが逆に彼女たちから見た俺は一体どう映っていたのだろうか?
真っ昼間から二十代半ばの男がラフな恰好で出歩いている姿はニートだとでも思われたのではないか。
まあ二度と会うことはない相手にどう思われようがどうでもいいことなのだが。
コンビニに着くとさっき見た制服の女子高生たちが多数いた。
俺は彼女らの隙間を縫って唐揚げ弁当と温かいお茶を手に持つとレジに並ぶ。
昼時だというのにレジカウンターには男性の従業員が一人だけ。
これは結構待つかもな……。
心の中でそうつぶやいた時だった。
「鬼束さんっ」
俺の名前が呼ばれた。
声に反応し振り向くとそこには美紗ちゃんがいた。
さらにその隣にはもう一人同じ制服を着た女子生徒が立っている。
「あー、美紗ちゃん」
「こんにちは、鬼束さん。お昼ご飯買いに来たんですか?」
美紗ちゃんは俺の持っていた弁当に目線を落としてから訊いてきた。
「まあね。それにしても今日は高校生がやけに多いけど……」
「うちの学校今日卒業式だったんですよ。さっき終わったところなのでちょうどみんなここのコンビニに集まったんだと思います」
やはりそうだったか。
「あ、鬼束さん紹介しますね。この人は同じ図書委員でお世話になった柏木由香先輩です。それからこちらの方は鬼束ヤマトさん。お隣さんです」
美紗ちゃんは隣の女子生徒と俺に手を向けて順番に紹介してくれる。
すると柏木さんとやらが俺に対して深々と頭を下げた。
「初めまして。柏木由香と申します」
「あー初めまして。俺は鬼束ヤマトです」
礼儀正しい柏木さんの態度に感心しつつ俺もつられて頭を下げる。
柏木さんは化粧っけは一切ないものの大人びた風貌をしていた。
美紗ちゃんが可愛い系なら柏木さんは綺麗系と言ったところか。
「柏木先輩ってすごいんですよ。部活に入っていないのに今年のスポーツテストで学年トップの成績だったんです。それだけじゃなくて模擬試験では全国一位になったこともあるんですっ」
よほど柏木さんのことが好きなのか美紗ちゃんは自分のことのように笑顔で話す。
「そうなんだ。すごいね」
俺は柏木さんに目を向ける。
すると、
「いえ、そんなことないです……」
柏木さんは恥ずかしそうに首を横に振った。
クールビューティーなのかと思いきや照れて頬を染める感じもまた好印象だ。
「先輩は東京の大学に行くのでわたしも来年同じ大学を受験するつもりなんです」
「へー、そうなんだ」
「そのためにはもっと勉強頑張らないといけないんですけどね。あ、今日これから先輩に勉強みてもらう約束してるんですよ」
「仲いいんだね二人」
俺の言葉に美紗ちゃんも柏木さんも嬉しそうにはにかむ。
と、
「お次にお並びの方、どうぞーっ」
気付くとレジには男性従業員が二人体制になっていて俺の番が回ってきていた。
「じゃあ美紗ちゃん、柏木さん。またね」
言うと俺は二人より先に会計を済ませ一足早くコンビニを出る。
せっかくの卒業式の後の二人の時間をこれ以上邪魔するつもりはない。
◇ ◇ ◇
コンビニ袋を下げながらアパートに向かって歩いていると
ブウウゥゥーン……ブウウゥゥーン……。
ポケットの中に入れていたスマホが二回震えた。
俺は立ち止まるとスマホを取り出してメールを確認する。
「なになに……えっ!?」
そのメールは新たな殺人依頼のメールだったのだが俺は思わず驚きの声を上げていた。
依頼主の名は速水翔と書かれていた。正直今それはどうでもいい。
問題は次に書かれた一文だった。
[殺してほしい相手は吉田まさ子といいます。]
吉田まさ子――俺が働いていた吉田ねじ有限会社の専務だった人だ。
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