レベリング・マーダー 一週間に一回は人を殺さないと自分が死んでしまう。ならばいっそ勧善懲悪しよう。

シオヤマ琴@『最強最速』発売中

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第68話 来訪者

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「ヤマトくん、いる~っ?」

とある日の夕方過ぎ、ドアの外から清水さんの声が聞こえてきた。
俺はテレビの電源を消すと玄関へと向かう。

「はーい、今開けます」
ドアを開けると、
「ごめんね~、両手が塞がっちゃっててチャイム押せなかったの」
大きなお皿を持つ清水さんの姿があった。
お皿には山盛りのフライドポテト。

「これ、ポテトフライなんだけど食べる? 作りすぎちゃったからおすそ分け」
「あ、はい。いただきます。俺ポテトフライ大好きなんです」
「そう? よかった~。昨日実家からジャガイモが沢山届いたから試しにポテトフライ作ってみたんだけど、初めてだったから作ってみたらすごい量になっちゃって……」

俺は清水さんからお皿を受け取る。

「お皿はいつでもいいからね」
「はい、ありがとうございます」
「美紗なんか太るからいらないって言って一口しか食べなかったのよ」
不満そうに口を尖らせて言う清水さん。

「ははっ、そうなんですか」
「毎日夜遅くまで勉強してるみたいだから体力つけないといけないのに」
「美紗ちゃん三年生ですもんね。いよいよ受験の年だからこれまで以上に勉強頑張ってるんですね」
「あの子、あたしに負担かけたくないから私立は受ける気ないみたいなのよ。自分の本当に行きたい大学に行きなって言ってるんだけどね」
「あー、そうですか……」

そういえば前に美紗ちゃんがそれらしいことを言っていた気がする。
母子家庭だからやっぱり大学の費用とか気にしてるんだろうなぁ。

「今度美紗にヤマトくんからも言ってやって。大学は自分の好きなところに行くべきだって。ヤマトくんの言うことならあの子も聞くかもしれないから」
「はあ、わかりました」
と一応この場では答えておくが、あまり他人の家庭の経済事情を知らずに無責任なことは言えない。
なので俺は美紗ちゃんに会ってもおそらく言わないだろう。

「じゃあね」
「はい、ありがとうございました」

俺は清水さんから受け取ったお皿を片手で持ちながらドアを閉めると、それをリビングのテーブルの上に置いた。
早速一つ食べてみる。

もぐ……。

「うん、美味しい」

さすが清水さん、何を作っても売り物以上の出来だ。
これでハンバーガーでもあれば申し分ない。


◇ ◇ ◇


次の日の朝、俺はゴミ出しをするため部屋を出た。
すると制服姿の美紗ちゃんとばったり出会う。

「おはようございます鬼束さん」
「あー、おはよう美紗ちゃん」
「ゴミ出しですか?」
「そうだよ」

アパートの前のゴミ置き場まで一緒に歩いていく。

「昨日、お母さんが作ったポテトフライ食べました?」
「ああ、全部食べたよ。すごく美味しかった」
「えっ、あの量全部食べたんですかっ?」
「うん」

かなりの量だったが美味しかったので、俺は昨日の晩ご飯の前にあっという間に平らげてしまったのだった。

「昨日のポテトフライもでしたけど、なんか最近お母さんが夜中勉強しているわたしのために夜食を作ってくれるんですけどその量が多くて……」
「受験のために体力をつけさせたいんじゃないの」
「そうかもしれないですけどさすがに太っちゃいますよ。今だって丸顔なの気にしてるのに……」
美紗ちゃんはそう言って口を尖らせる。
親子だけあって昨日の清水さんの表情とよく似ている。

「別に丸顔じゃないよ、美紗ちゃん」
「え~、全然そんなことないですよっ。わたしも鬼束さんみたいにシュッとした顔がいいです」
「そうかなぁ……」
「そうですっ」

美紗ちゃんは自分のことを丸顔だと言うが決してそんなことはない。
少なくとも俺の目にはそう見える。
だが美紗ちゃんは自分の顔にコンプレックスを抱いているようだ。
うーん、そこらのアイドルよりよっぽど可愛らしいのだから気にすることなどないと思うのだが。

ゴミ置き場に到着すると俺はゴミ袋を緑色のネットの中に入れた。
美紗ちゃんはそんな俺の様子をじっと見ていた。

「ん? 学校遅れるよ、大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です……」
大丈夫ですと言いながら何か考え事をしているような顔を見せる美紗ちゃん。

「どうかした?」
「あ、いえ……」
「何か話したいことがあるなら言ってよ。遠慮なんかしないでさ」

すると美紗ちゃんは視線を二度三度地面や宙に飛ばしてから俺を見た。

「あの……この間紹介したわたしの先輩のこと憶えてますか?」
「あー、確か柏木さんだっけ」
「はい。柏木由香先輩です」
「うん。で、その子がどうかしたの?」
「えーっと……すみません鬼束さん、今日の夕方って時間ありますか?」
美紗ちゃんは唐突に訊いてくる。

「ん? うん。俺は別に大丈夫だけど」
「じゃあ今日の夕方鬼束さんのお部屋にお邪魔してもいいですか? 柏木先輩の件で折り入ってご相談したいことがあって……」
「わかった。いいよ」
よくわからないが美紗ちゃんは家族も同然なので困っていることがあるのなら力になりたい。
前に会った柏木さんのことも気になるしな。

「ありがとうございます。あ、じゃあわたし学校行ってきますね」
「うん。勉強頑張って」
「はい、行ってきます」

俺に相談の約束をとりつけたからか幾分晴れやかな顔になった美紗ちゃんは学校へと駆けていった。


◇ ◇ ◇


そしてその日の夕方。
ピンポーンとチャイムが鳴らされ、俺は美紗ちゃんを出迎えるためドアを開ける。

「いらっしゃ――って、お前……!?」
「ヤマトさん、久しぶり」

俺の目の前に立っていたのは美紗ちゃんではなく石神あきらだった。
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