76 / 118
第76話 電光石火
しおりを挟む
その男を見てあきらが口を開く。
「あなたも殺人者感知呪文使ってたんでしょ」
「ああ。つうかお前あの時どこにいたんだ? 確かに殺人者の気配は二人分あったはずなのにお前の姿は見えなかったぜ」
「ふふん、秘密だよ~」
「けっ、生意気なガキだな。それよりお前ら何しに来た? オレを殺りに来たのか?」
男が俺の顔を見据えて言った。
「いや、別件だ。お前のことは今の今まで知らなかった。殺す気もない」
「へー、そうかい。そりゃラッキーだぜ」
(嘘つけ、騙されるかよっ。わざわざ大学まで偵察に来てたくせしやがって……こいつら、ぜってぇオレを殺りに来たに違いねぇぞ)
男は言葉とは裏腹に心の内では俺の言葉を全然信じていない。
(隙をうかがってオレを殺るつもりだな……だったらこっちから仕掛けてやるぜっ)
「おい、待て。ちゃんと俺の話を聞け。俺たちはお前と殺し合いをする気はない」
「ああ、ちゃんと聞いてるぜ」
言うと次の瞬間男は手を俺に向けた。
そして、
「ンダキウク!」
と叫んだ。
直後男の手から見えない何かが飛んできてそれに当たった俺を後方へ吹き飛ばす。
「うおっ……!?」
軽トラックに撥ね飛ばされたような勢いで電信柱にぶつかった俺に、「ヤマトさん、大丈夫っ?」とあきらが声をかけてきた。
「あ、ああ……なんとかな」
全身がきしむように痛いが致命傷ではないはずだ。
すると男はなおも、
「ンダキウク!」
攻撃呪文を唱えてくる。
俺はとっさに横に跳び避けた。ガンッと背後にあった電信柱が音を立てて折れ曲がる。
「ヤマトさん、さっきの教授はヤマトさんに譲ってあげたんだからあの男の人は僕が殺っちゃってもいいよね?」
「ああ、仕方ない。好きにしろっ」
「やったっ」
こんな町中で殺し合いなどしたくなかったが相手は止める気配がないのでやるしかない。
「あきら、人に見られないように素早く頼むぞっ」
「別に見られたらその人も殺せばいいじゃん」
「駄目だ。関係ない人は巻き込むな」
俺はやむを得ない場合を除いては人を殺すつもりはない。
「は~い。じゃあさっさと殺すよ」
そう言うとあきらは男に向き直った。
その間も男は見えない空気の塊を俺に放ってきていたが、俺は男の手の向きを見ながらなんとかこれをかわしていた。
と、
「カッセウコンデ」
あきらがつぶやく。
その刹那、あきらの体が金色に光ったかと思うと一瞬のうちにあきらは男の背後に移動していた。
そして振り向いて俺に「終わったよ」と声を飛ばしてくる。
「終わった? どういうことだ?」俺がそう返そうとした時、
「ぶふぁっ……!」
男が血を吐いて地面に倒れた。
「あきら、お前今何やったんだ?」
「早く殺せって言われたから早く殺しただけだけど」
特別なことは何もしていないと言わんばかりの口調で答えるあきら。
いつも通り平然とした顔をしている。
あきらが何をしたのか速すぎて俺には正直全然見えなかったが男を殺したことは確かだった。
ほどなくして男の死体が俺の目の前から消えていったのだから。
「まあ、いいか。さてと……」
俺は何気なく後ろを振り返った。
するとそこには間の悪いことに一人の女子学生が立っていた。
ヤバ……見られた……?
「ひっ!」
俺と目が合った女子学生が小さく悲鳴を上げる。
やはり男が血を吐き、さらには消えるところを見られていたようだ。
「あ~あ、お姉さん運が悪いね~。ヤマトさん、その人も殺すけどいいよね?」
疑問形ではあったがその時のあきらの顔は有無を言わさぬ圧のようなものを感じた。
「あ、馬鹿待てっ。やめろあきらっ」
「なんで? 見られたんだから殺すしかないでしょ」
あきらはくりくりっとしたビー玉のごとき目で俺を見返してくる。
あきらは女子学生を見定め、
「カッセウ――」
「俺は記憶消去の呪文を覚えてるんだっ。それを使えば殺す必要はないっ」
「…………ふーん。な~んだ、だったら早く言ってよねヤマトさん。もう少しで殺すところだったよ」
俺の言葉を受け女子学生を殺すことをやめた。
体を小刻みに震わせながら立ちすくんでしまっていた女子学生に俺は近付いていくと、
「こ、来ないでっ! お、大声出しますよっ……!」
「ヨキウヨシクオキ」
記憶消去の呪文をかけた。
途端にうつろな表情になる女子学生。
俺はそんな女子学生を見てから、
「さ、あきら。これで大丈夫だ。早いとこ帰るぞ」
あきらに声をかける。
「は~い」
あきらはついさっきまで無関係の女子学生を殺そうとしていたとは思えない子どもらしい可愛い笑みを浮かべると、俺のもとへと駆け寄ってきて俺の手を握った。
この時俺は初めてあきらと会った時にあきらが口にしたセリフを思い返していた。
《僕は快楽主義者タイプかな。気分次第で誰でも殺すんだ》
当時は冗談だと一笑に付したが、あながちあの言葉は冗談ではなかったのかもしれない。
「あなたも殺人者感知呪文使ってたんでしょ」
「ああ。つうかお前あの時どこにいたんだ? 確かに殺人者の気配は二人分あったはずなのにお前の姿は見えなかったぜ」
「ふふん、秘密だよ~」
「けっ、生意気なガキだな。それよりお前ら何しに来た? オレを殺りに来たのか?」
男が俺の顔を見据えて言った。
「いや、別件だ。お前のことは今の今まで知らなかった。殺す気もない」
「へー、そうかい。そりゃラッキーだぜ」
(嘘つけ、騙されるかよっ。わざわざ大学まで偵察に来てたくせしやがって……こいつら、ぜってぇオレを殺りに来たに違いねぇぞ)
男は言葉とは裏腹に心の内では俺の言葉を全然信じていない。
(隙をうかがってオレを殺るつもりだな……だったらこっちから仕掛けてやるぜっ)
「おい、待て。ちゃんと俺の話を聞け。俺たちはお前と殺し合いをする気はない」
「ああ、ちゃんと聞いてるぜ」
言うと次の瞬間男は手を俺に向けた。
そして、
「ンダキウク!」
と叫んだ。
直後男の手から見えない何かが飛んできてそれに当たった俺を後方へ吹き飛ばす。
「うおっ……!?」
軽トラックに撥ね飛ばされたような勢いで電信柱にぶつかった俺に、「ヤマトさん、大丈夫っ?」とあきらが声をかけてきた。
「あ、ああ……なんとかな」
全身がきしむように痛いが致命傷ではないはずだ。
すると男はなおも、
「ンダキウク!」
攻撃呪文を唱えてくる。
俺はとっさに横に跳び避けた。ガンッと背後にあった電信柱が音を立てて折れ曲がる。
「ヤマトさん、さっきの教授はヤマトさんに譲ってあげたんだからあの男の人は僕が殺っちゃってもいいよね?」
「ああ、仕方ない。好きにしろっ」
「やったっ」
こんな町中で殺し合いなどしたくなかったが相手は止める気配がないのでやるしかない。
「あきら、人に見られないように素早く頼むぞっ」
「別に見られたらその人も殺せばいいじゃん」
「駄目だ。関係ない人は巻き込むな」
俺はやむを得ない場合を除いては人を殺すつもりはない。
「は~い。じゃあさっさと殺すよ」
そう言うとあきらは男に向き直った。
その間も男は見えない空気の塊を俺に放ってきていたが、俺は男の手の向きを見ながらなんとかこれをかわしていた。
と、
「カッセウコンデ」
あきらがつぶやく。
その刹那、あきらの体が金色に光ったかと思うと一瞬のうちにあきらは男の背後に移動していた。
そして振り向いて俺に「終わったよ」と声を飛ばしてくる。
「終わった? どういうことだ?」俺がそう返そうとした時、
「ぶふぁっ……!」
男が血を吐いて地面に倒れた。
「あきら、お前今何やったんだ?」
「早く殺せって言われたから早く殺しただけだけど」
特別なことは何もしていないと言わんばかりの口調で答えるあきら。
いつも通り平然とした顔をしている。
あきらが何をしたのか速すぎて俺には正直全然見えなかったが男を殺したことは確かだった。
ほどなくして男の死体が俺の目の前から消えていったのだから。
「まあ、いいか。さてと……」
俺は何気なく後ろを振り返った。
するとそこには間の悪いことに一人の女子学生が立っていた。
ヤバ……見られた……?
「ひっ!」
俺と目が合った女子学生が小さく悲鳴を上げる。
やはり男が血を吐き、さらには消えるところを見られていたようだ。
「あ~あ、お姉さん運が悪いね~。ヤマトさん、その人も殺すけどいいよね?」
疑問形ではあったがその時のあきらの顔は有無を言わさぬ圧のようなものを感じた。
「あ、馬鹿待てっ。やめろあきらっ」
「なんで? 見られたんだから殺すしかないでしょ」
あきらはくりくりっとしたビー玉のごとき目で俺を見返してくる。
あきらは女子学生を見定め、
「カッセウ――」
「俺は記憶消去の呪文を覚えてるんだっ。それを使えば殺す必要はないっ」
「…………ふーん。な~んだ、だったら早く言ってよねヤマトさん。もう少しで殺すところだったよ」
俺の言葉を受け女子学生を殺すことをやめた。
体を小刻みに震わせながら立ちすくんでしまっていた女子学生に俺は近付いていくと、
「こ、来ないでっ! お、大声出しますよっ……!」
「ヨキウヨシクオキ」
記憶消去の呪文をかけた。
途端にうつろな表情になる女子学生。
俺はそんな女子学生を見てから、
「さ、あきら。これで大丈夫だ。早いとこ帰るぞ」
あきらに声をかける。
「は~い」
あきらはついさっきまで無関係の女子学生を殺そうとしていたとは思えない子どもらしい可愛い笑みを浮かべると、俺のもとへと駆け寄ってきて俺の手を握った。
この時俺は初めてあきらと会った時にあきらが口にしたセリフを思い返していた。
《僕は快楽主義者タイプかな。気分次第で誰でも殺すんだ》
当時は冗談だと一笑に付したが、あながちあの言葉は冗談ではなかったのかもしれない。
8
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい
沢尻夏芽
恋愛
自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。
それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。
『様子がおかしい』
※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。
現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。
他サイトでも掲載中。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる