レベリング・マーダー 一週間に一回は人を殺さないと自分が死んでしまう。ならばいっそ勧善懲悪しよう。

シオヤマ琴@『最強最速』発売中

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第86話 メアリ、上京

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進藤美咲、十五歳。
依頼主である進藤さんの一人娘で高校一年生。もっとも、高校にはろくに通ってはいないようだが。

俺とメアリは彼女の不良仲間三人をこの世から消すために、新幹線に乗り今さっき東京に到着したところだった。

「ヤマトお兄ちゃん、東京ってぎょうさん人おるんやなぁ」
行き交う人たちを追いかけるように首をきょろきょろ動かしながら、メアリは声を発した。

「平日なのにすごいおるやん」
「ああ、迷子にならないようにちゃんと俺について来いよ」
小さい子どもに言い含めるように返すと、
「だったら手ぇつなごうや」
メアリは俺の右手をすっと握る。

「あのなぁ、俺たちは家族とか親戚っていう設定なんだよ。手つないでたらおかしいだろ」
立ち止まり注意するが、
「別におかしないやん。家族でも手ぇはつなぐでぇ」
メアリは手を離そうとはせず反論した。

「まあ、それはそうだけどなぁ……」
「そないなことより、こんなとこで立ち止まっとると周りの人に迷惑やよ」
急にまともなことを言い出すメアリ。
確かに周りの通行人たちが俺たちを迷惑そうに避けて歩いていく。

「わかってるよ。ほら、行くぞ」
俺は言い負かされたような気分になり、結局メアリとは手をつないだまま人ごみの中を進んでいくのだった。


◇ ◇ ◇


「っていうか、うちらどこに向かっとるん?」
「もちろん進藤美咲のところに決まってるだろ」
「でも全然人いいひんくなったけど」
メアリの言う通り俺たちは人の気配のまったくない暗い路地裏を歩いていた。

「俺の千里眼の呪文によると、この先にある潰れたボウリング場に進藤美咲たちはいるはずなんだ」
俺は片目を閉じながら口にする。

「へぇ~、そうなんや。なんや、千里眼の呪文って便利やなぁ。うちも欲しいくらいや」
「言っとくけどお前は今は即死呪文が使えないんだから俺のそばでじっとしてろよ」
「わかっとるって」

メアリは最大MPこそ俺に引けを取らないものの、そのほかのパラメータの数値ははっきり言ってかなり低い。
呪文なしのメアリでは一般女性が相手でも勝てるかどうかわからないくらいの力しかない。
だったらなぜ連れて来たのかという話だが、メアリは大人びた見た目の割に精神年齢が低い。
なので俺と一緒に行動したいというメアリのご機嫌取りと、今後のための社会勉強を兼ねて俺に同行させたのだった。


◇ ◇ ◇


「あっ! あれちゃうっ?」
二人で人気のない細い道を歩くこと十数分、前方にさびれたボウリング場が見えてきた。
メアリは嬉しさのあまり声を上げる。

「ああ、あれらしいな」

俺たちはその建物に近寄っていき駐車スペースで一旦止まった。

「そんでどないやって殺すんや?」
メアリはわくわくした様子で俺を見上げる。
この世から悪人を消せるとあって少々興奮気味だ。

「まあ待て。まずは俺の悪人感知呪文で中にいる不良たちが悪人かどうか見極めてからだ」
「不良なんやから当然悪人やろ」
「かもしれないが念のためだ。俺は悪人以外の人間を殺したくはないからな。お前も同じ考えだろ?」
「そうやな、それはその通りや。うちが目指すんは世界平和やからな」
メアリが大それたことを平気で言う。
おそらく本気で出来ると思っている。
その考えに俺も賛同はするが、実際に実現できるかどうかはまた別問題だ。

「チンカンニクア」

俺はつぶやくとボウリング場に入っていく。
メアリも俺のあとにそっと続いた。
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