レベリング・マーダー 一週間に一回は人を殺さないと自分が死んでしまう。ならばいっそ勧善懲悪しよう。

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第90話 清水さん母娘とメアリ

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翌朝、俺が目を覚ますとソファの上にメアリがいなかった。

どこに行ったんだ?
トイレか?

だが、部屋中探してもどこにもいない。

すると壁を隔てたお隣から、
「えぇ~! ほんまに三十四歳なん、全然見えへ~ん!」
「ほんとっ!? ありがと、メアリちゃん」
メアリの声と清水さんの声が聞こえてきた。

「おいおい、マジかよ」
メアリの奴、清水さん家にいるのかっ。

俺は素早く着替えを済ますと清水さん家のチャイムを鳴らす。

ピンポーン。

「はーい!」
中から明るい声とともに清水さんが姿を現した。

「あら、ヤマトくんおはよう」
「おはようございます清水さん。あの、すいません、もしかしてメアリそっちに行ってます?」
「ええ、メアリちゃんならうちで一緒に朝ご飯を食べてるわよ。せっかくだからヤマトくんも食べてって」
「あ、いえ、でも……」
「ほら、上がって上がって。ね?」
清水さんに微笑みかけられ俺はむげに断ることも出来ず清水さん家にお邪魔することに。
部屋の中に入ると美紗ちゃんとメアリがテーブルを囲んで座っていた。

「ヤマトお兄ちゃん、やっと起きたんやぁ!」
「あ、鬼束さん、おはようございます」
「ああ、おはよう美紗ちゃん。ごめんね、朝早くからメアリが邪魔してたみたいで」
「いえ、そんなことないですよ。お母さんからメアリさんのことは聞いていたので、わたしも会いたいと思っていたんです」
美紗ちゃんは笑顔を俺に向けてくる。

「ヤマトくんもシリアルとサラダでいいかしら?」
「あ、はい。ほんと、すいません」
清水さんに恐縮しつつそう答えると俺はメアリに目を落とした。

「こら、メアリ。勝手なことするなよな。清水さんたちだって朝早いんだから迷惑だろ」
「ええやん別にぃ~。それにうち、おばさんに誘われたから来たんやでぇ」
「それでも普通は遠慮するもんなんだよ……」
悪びれる素振りもなく反論するメアリにこれ以上何を言っても無駄だな、と感じていると、
「まあまあ。とりあえず、鬼束さんも座ってください」
美紗ちゃんが俺のために椅子を引いてくれる。

「ああ、ありがとう」
同じ高校三年生でもメアリとはえらい違いだ。


◇ ◇ ◇


「へ~、メアリちゃん千葉県の高校に通ってるんだ~」
「そうやぁ。でも今、校舎を新しくしとるとこやからしばらく学校は休みやねん」
「それで鬼束さんのところに来てたんですね」
「うん、その通りや」

メアリは顔色一つ変えることなく、次々と口からでまかせを吐いて清水さん母娘の質問を見事にやり過ごしていく。
学校での話や家族の話、俺との思い出話など今考えたとは思えないようなことをすらすらと並べ立てていく様は、まるで前にテレビで見たサイコパスをほうふつとさせた。


◇ ◇ ◇


しばらくして清水さんと美紗ちゃんがそろそろ出かける時間になったので、俺とメアリも二人と一緒に部屋を出る。
そして二人をそれぞれ見送ってから俺とメアリは俺の部屋へと戻った。

「おばさんと美紗ちゃん、ええ人らやったなぁ~」
「ああ。だからこそあんまり殺人者の俺たちと関わり合いを持たない方がいいんだよ」
「おばさんら、うちらが殺人者だってこと知っとるん?」
「俺のことは知ってる。でもお前のことは知らないはずだ。あくまでお前は俺の親戚ってことにしてあるからな」
「ふ~ん、まあええけど。それよりヤマトお兄ちゃん、うちお腹減ったわ」
とメアリ。

「は? お前さっき清水さんのところでずいぶん食べただろ」
メアリは清水さんと美紗ちゃんが驚くほどシリアルを何杯もおかわりしていた。

「シリアルとサラダじゃ食べた気せぇへんもん」
「まったく……食パンでいいか?」
「ええよ~」

俺は冷蔵庫を開けて食パンを取り出すが、
「あっ。駄目だこれ。日付け過ぎてるわ」
消費期限が昨日までだったことに気付く。

「うちなら全然気にせぇへんけど」
「いや、たかが食パン一枚で腹壊したらシャレにならないだろ。やめとけよ」
「じゃあ、どないするん?」
「そうだなぁ……」

冷蔵庫の中を見渡すがろくなものが入っていない。

「メアリ、買い物にでも行くか」
「うんっ」

こうして俺とメアリは近所のコンビニに向かうことにした。
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