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第99話 武態呪文
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俺が投げた石は梶原家の防犯カメラを見事にとらえ一発で破壊することに成功した。
「すごっ! ヤマトお兄ちゃん、やるやんかぁっ!」
「こら、ひっつくな」
メアリに飛びつかれとっさに振り払う。
だが戦闘形態になっていたことを忘れついつい力を入れ過ぎてしまったせいで、
「痛っ!」
道路に打ちつけられ痛がるメアリ。
「あっ、悪い、大丈夫かっ?」
「いたたたぁ~。もぉ~、ヤマトお兄ちゃん、痛いやんかぁ~!」
メアリは起き上がるとお尻をさすりながら言う。
「いや、ほんと悪かった。今のは俺のミスだ」
「そんな嫌がらんでもええのに、普通は女子高生に抱きつかれたら嬉しいんとちゃうのん」
「お前は普通の女子高生とは違うだろ」と言い返そうとしたが、メアリを不機嫌にさせまいとその言葉を黙って飲み込む俺。
「とにかくだ、防犯カメラは破壊したからちょっと行ってくる。お前はここで待っててくれ」
「ヤマトお兄ちゃん、きちんと二人とも殺したってなぁ~っ」
メアリの微妙にずれた声援を背中に受けながらも俺は地面を強く蹴ってジャンプした。
一足飛びで防犯砂利が敷き詰められた玄関までの道のりを楽々跳び越えると、玄関ドアの前に着地する。
とその時だった。
ガチャっと音がしたかと思うと玄関ドアが内側から開いた。
そして中から女が顔を出した。
おそらくだが防犯カメラが壊れた音が聞こえて様子を見に出てきたようだった。
「っ!? な、なんだあん――」
ザシュッ。
俺は叫ぶ暇も与えず女の首をはね飛ばす。
俺の姿を見て怯んでいたその女の首が、防犯砂利の上に転がりガシャガシャと音を立てた。
ててててってってってーん!
陽気な効果音と味気ない機械音が俺の頭の中に響く。
『鬼束ヤマトは梶原冬美を殺したことでレベルが1上がりました』
『最大HPが1、最大MPが1、ちからが1、まもりが0、すばやさが0上がりました』
返り血もすっかり消え失せたところで俺は家の中へと侵入していった。
◇ ◇ ◇
家の中は広々としていて外から見るよりも大きな家に感じた。
俺は靴を履いたまま高そうな絵が飾られた廊下を歩いていく。
「おーい、冬美! ついでだから酒持ってきてくれーっ!」
すると上の階から男の野太い声が降ってきた。
梶原史郎の声だろう。
梶原冬美がついさっき死んだとも知らずにのんきな。
俺は男の声を無視しつつ階段を上がっていく。
その間、男は繰り返し「冬美ー!」と呼び続けていた。
三階にたどり着くと部屋が一つだけあった。
その部屋からはさっきまでの男の声とアクション映画でも観ているのだろうか、大きな爆発音が同時に聞こえてくる。
俺は少し開いていたドアの隙間から部屋の中を確認。
すると男が豪華な椅子にもたれかかるようにしてスクリーンに映し出された映画を鑑賞している姿が見えた。
俺はドアの隙間からそっと中に入る。と、
「おい、どうしたんだよ冬美っ。なんで返事しなかったんだ」
男は映画に夢中でこっちを振り返ろうともせず声だけ飛ばしてきた。
足音を耳にして俺のことを梶原冬美と完全に勘違いしているようだった。
俺はこれ幸いとばかりに背後に近付くと後ろから男の首を腕で挟み込み、
「っ!? な、なんだっ!? 誰だっ!?」
会話が出来るように出来るだけ力を抑えつつそれでも首を締め上げていく。
「ぐくっ……苦しいっ……!」
「お前は梶原史郎だな。なぜ佐藤京子さんを襲った」
「だ、誰だて、めぇっ……放し、やがれっ……!」
「質問に答えろ。お前と梶原冬美が一緒になって佐藤京子さんに暴行を加えたことはわかっているんだ」
「サ、サツか、てめぇっ……こ、こんなことし、て……ただで済むと思……てんのかっ……!」
男は俺の腕の中でもがき暴れている。
だがレベル39でしかも武態状態の俺からは決して逃れることは出来ない。
「話が通じないな奴だな。もういいや」
俺は「ンシクド」と唱え読心呪文を発動させた。
「……は、放せ、や……殺すぞ……てめぇっ……!」
(あの女の知り合いか、くそっ! なんでここがわかったんだっ。こんなことなら金だけじゃなく命も奪っとくんだったぜ、くそがっ!)
「……救えないな、お前」
もともと生かす気などまったくなかった俺だが、男の本心を聞いてさらにその気持ちは強まった。
男の首を締め上げている腕にもっと力を込めていく。
「が、かっ……た、助け――」
男が助けを求めたその瞬間だった。
ゴギッと鈍い音がして男は絶命した。
ててててってってってーん!
『鬼束ヤマトは梶原史郎を殺したことでレベルが1上がりました』
『最大HPが1、最大MPが1、ちからが1、まもりが1、すばやさが1上がりました』
――俺のレベルが40に上がる中、スクリーンには映画のラストに流れる滑稽なNGシーンが映し出されていた。
「すごっ! ヤマトお兄ちゃん、やるやんかぁっ!」
「こら、ひっつくな」
メアリに飛びつかれとっさに振り払う。
だが戦闘形態になっていたことを忘れついつい力を入れ過ぎてしまったせいで、
「痛っ!」
道路に打ちつけられ痛がるメアリ。
「あっ、悪い、大丈夫かっ?」
「いたたたぁ~。もぉ~、ヤマトお兄ちゃん、痛いやんかぁ~!」
メアリは起き上がるとお尻をさすりながら言う。
「いや、ほんと悪かった。今のは俺のミスだ」
「そんな嫌がらんでもええのに、普通は女子高生に抱きつかれたら嬉しいんとちゃうのん」
「お前は普通の女子高生とは違うだろ」と言い返そうとしたが、メアリを不機嫌にさせまいとその言葉を黙って飲み込む俺。
「とにかくだ、防犯カメラは破壊したからちょっと行ってくる。お前はここで待っててくれ」
「ヤマトお兄ちゃん、きちんと二人とも殺したってなぁ~っ」
メアリの微妙にずれた声援を背中に受けながらも俺は地面を強く蹴ってジャンプした。
一足飛びで防犯砂利が敷き詰められた玄関までの道のりを楽々跳び越えると、玄関ドアの前に着地する。
とその時だった。
ガチャっと音がしたかと思うと玄関ドアが内側から開いた。
そして中から女が顔を出した。
おそらくだが防犯カメラが壊れた音が聞こえて様子を見に出てきたようだった。
「っ!? な、なんだあん――」
ザシュッ。
俺は叫ぶ暇も与えず女の首をはね飛ばす。
俺の姿を見て怯んでいたその女の首が、防犯砂利の上に転がりガシャガシャと音を立てた。
ててててってってってーん!
陽気な効果音と味気ない機械音が俺の頭の中に響く。
『鬼束ヤマトは梶原冬美を殺したことでレベルが1上がりました』
『最大HPが1、最大MPが1、ちからが1、まもりが0、すばやさが0上がりました』
返り血もすっかり消え失せたところで俺は家の中へと侵入していった。
◇ ◇ ◇
家の中は広々としていて外から見るよりも大きな家に感じた。
俺は靴を履いたまま高そうな絵が飾られた廊下を歩いていく。
「おーい、冬美! ついでだから酒持ってきてくれーっ!」
すると上の階から男の野太い声が降ってきた。
梶原史郎の声だろう。
梶原冬美がついさっき死んだとも知らずにのんきな。
俺は男の声を無視しつつ階段を上がっていく。
その間、男は繰り返し「冬美ー!」と呼び続けていた。
三階にたどり着くと部屋が一つだけあった。
その部屋からはさっきまでの男の声とアクション映画でも観ているのだろうか、大きな爆発音が同時に聞こえてくる。
俺は少し開いていたドアの隙間から部屋の中を確認。
すると男が豪華な椅子にもたれかかるようにしてスクリーンに映し出された映画を鑑賞している姿が見えた。
俺はドアの隙間からそっと中に入る。と、
「おい、どうしたんだよ冬美っ。なんで返事しなかったんだ」
男は映画に夢中でこっちを振り返ろうともせず声だけ飛ばしてきた。
足音を耳にして俺のことを梶原冬美と完全に勘違いしているようだった。
俺はこれ幸いとばかりに背後に近付くと後ろから男の首を腕で挟み込み、
「っ!? な、なんだっ!? 誰だっ!?」
会話が出来るように出来るだけ力を抑えつつそれでも首を締め上げていく。
「ぐくっ……苦しいっ……!」
「お前は梶原史郎だな。なぜ佐藤京子さんを襲った」
「だ、誰だて、めぇっ……放し、やがれっ……!」
「質問に答えろ。お前と梶原冬美が一緒になって佐藤京子さんに暴行を加えたことはわかっているんだ」
「サ、サツか、てめぇっ……こ、こんなことし、て……ただで済むと思……てんのかっ……!」
男は俺の腕の中でもがき暴れている。
だがレベル39でしかも武態状態の俺からは決して逃れることは出来ない。
「話が通じないな奴だな。もういいや」
俺は「ンシクド」と唱え読心呪文を発動させた。
「……は、放せ、や……殺すぞ……てめぇっ……!」
(あの女の知り合いか、くそっ! なんでここがわかったんだっ。こんなことなら金だけじゃなく命も奪っとくんだったぜ、くそがっ!)
「……救えないな、お前」
もともと生かす気などまったくなかった俺だが、男の本心を聞いてさらにその気持ちは強まった。
男の首を締め上げている腕にもっと力を込めていく。
「が、かっ……た、助け――」
男が助けを求めたその瞬間だった。
ゴギッと鈍い音がして男は絶命した。
ててててってってってーん!
『鬼束ヤマトは梶原史郎を殺したことでレベルが1上がりました』
『最大HPが1、最大MPが1、ちからが1、まもりが1、すばやさが1上がりました』
――俺のレベルが40に上がる中、スクリーンには映画のラストに流れる滑稽なNGシーンが映し出されていた。
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