レベリング・マーダー 一週間に一回は人を殺さないと自分が死んでしまう。ならばいっそ勧善懲悪しよう。

シオヤマ琴@『最強最速』発売中

文字の大きさ
99 / 118

第99話 武態呪文

しおりを挟む
俺が投げた石は梶原家の防犯カメラを見事にとらえ一発で破壊することに成功した。

「すごっ! ヤマトお兄ちゃん、やるやんかぁっ!」
「こら、ひっつくな」
メアリに飛びつかれとっさに振り払う。
だが戦闘形態になっていたことを忘れついつい力を入れ過ぎてしまったせいで、
「痛っ!」
道路に打ちつけられ痛がるメアリ。

「あっ、悪い、大丈夫かっ?」
「いたたたぁ~。もぉ~、ヤマトお兄ちゃん、痛いやんかぁ~!」
メアリは起き上がるとお尻をさすりながら言う。

「いや、ほんと悪かった。今のは俺のミスだ」
「そんな嫌がらんでもええのに、普通は女子高生に抱きつかれたら嬉しいんとちゃうのん」
「お前は普通の女子高生とは違うだろ」と言い返そうとしたが、メアリを不機嫌にさせまいとその言葉を黙って飲み込む俺。

「とにかくだ、防犯カメラは破壊したからちょっと行ってくる。お前はここで待っててくれ」
「ヤマトお兄ちゃん、きちんと二人とも殺したってなぁ~っ」
メアリの微妙にずれた声援を背中に受けながらも俺は地面を強く蹴ってジャンプした。
一足飛びで防犯砂利が敷き詰められた玄関までの道のりを楽々跳び越えると、玄関ドアの前に着地する。

とその時だった。
ガチャっと音がしたかと思うと玄関ドアが内側から開いた。
そして中から女が顔を出した。
おそらくだが防犯カメラが壊れた音が聞こえて様子を見に出てきたようだった。

「っ!? な、なんだあん――」
ザシュッ。
俺は叫ぶ暇も与えず女の首をはね飛ばす。
俺の姿を見て怯んでいたその女の首が、防犯砂利の上に転がりガシャガシャと音を立てた。

ててててってってってーん!

陽気な効果音と味気ない機械音が俺の頭の中に響く。

『鬼束ヤマトは梶原冬美を殺したことでレベルが1上がりました』

『最大HPが1、最大MPが1、ちからが1、まもりが0、すばやさが0上がりました』

返り血もすっかり消え失せたところで俺は家の中へと侵入していった。


◇ ◇ ◇


家の中は広々としていて外から見るよりも大きな家に感じた。
俺は靴を履いたまま高そうな絵が飾られた廊下を歩いていく。

「おーい、冬美! ついでだから酒持ってきてくれーっ!」
すると上の階から男の野太い声が降ってきた。
梶原史郎の声だろう。
梶原冬美がついさっき死んだとも知らずにのんきな。

俺は男の声を無視しつつ階段を上がっていく。
その間、男は繰り返し「冬美ー!」と呼び続けていた。

三階にたどり着くと部屋が一つだけあった。
その部屋からはさっきまでの男の声とアクション映画でも観ているのだろうか、大きな爆発音が同時に聞こえてくる。
俺は少し開いていたドアの隙間から部屋の中を確認。
すると男が豪華な椅子にもたれかかるようにしてスクリーンに映し出された映画を鑑賞している姿が見えた。

俺はドアの隙間からそっと中に入る。と、
「おい、どうしたんだよ冬美っ。なんで返事しなかったんだ」
男は映画に夢中でこっちを振り返ろうともせず声だけ飛ばしてきた。
足音を耳にして俺のことを梶原冬美と完全に勘違いしているようだった。

俺はこれ幸いとばかりに背後に近付くと後ろから男の首を腕で挟み込み、
「っ!? な、なんだっ!? 誰だっ!?」
会話が出来るように出来るだけ力を抑えつつそれでも首を締め上げていく。

「ぐくっ……苦しいっ……!」
「お前は梶原史郎だな。なぜ佐藤京子さんを襲った」
「だ、誰だて、めぇっ……放し、やがれっ……!」
「質問に答えろ。お前と梶原冬美が一緒になって佐藤京子さんに暴行を加えたことはわかっているんだ」
「サ、サツか、てめぇっ……こ、こんなことし、て……ただで済むと思……てんのかっ……!」
男は俺の腕の中でもがき暴れている。
だがレベル39でしかも武態状態の俺からは決して逃れることは出来ない。

「話が通じないな奴だな。もういいや」
俺は「ンシクド」と唱え読心呪文を発動させた。

「……は、放せ、や……殺すぞ……てめぇっ……!」
(あの女の知り合いか、くそっ! なんでここがわかったんだっ。こんなことなら金だけじゃなく命も奪っとくんだったぜ、くそがっ!)

「……救えないな、お前」

もともと生かす気などまったくなかった俺だが、男の本心を聞いてさらにその気持ちは強まった。
男の首を締め上げている腕にもっと力を込めていく。

「が、かっ……た、助け――」

男が助けを求めたその瞬間だった。
ゴギッと鈍い音がして男は絶命した。

ててててってってってーん!

『鬼束ヤマトは梶原史郎を殺したことでレベルが1上がりました』

『最大HPが1、最大MPが1、ちからが1、まもりが1、すばやさが1上がりました』


――俺のレベルが40に上がる中、スクリーンには映画のラストに流れる滑稽なNGシーンが映し出されていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...