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7章 リサイア大会 ペア戦予選編
知恵の門の主はただただ待っている……何百年もずっとそこで
「ありがとな。リヒト」
「いや、おれが腕を振り払ったのが悪かったから……あいこ」
「へぇ……」
「……何?」
意味深に口元を緩めてこちらを見るコウに、リヒトは少し警戒するように顔を顰めながら訊ねた。
「いや、お前って意外といい奴なんだなって思ってさ」
「は……?」
予想外の言葉にリヒトは面を食らった様子でぽかんと口を開けた。
「ほら、教室ではいつも寝てるかすましているかのどっちかだっただろ。無愛想で冷たい人間かと思ってた。だから、さっきもてっきり無視してそのまま行っちまうかと思ってたのに、手当てまでして謝ってくれるなんて予想外だったよ。今まで誤解してて悪かったな」
「べ、別に……他人にどう思われようと、あまり気にしてないし……」
口ではそう言いつつリヒトの少し頬が赤くなっている事に気づいてコウはにやにやしながら、リヒトを弄る。
「何? 照れてんの?」
「違う! そんなんじゃないっ」
リヒトが否定しても、コウは口元に浮かべた笑みを止めない。そんなコウをじとっとした目で睨みながら、リヒトは口を開いた。
「……コウの事は、以前から変な人だと思ってたよ」
「この流れでそういう事言う? ってかおれ、お前に変人だと思われてたんだ……」
『地味に……いやかなりショックかも』と失礼な事を言うコウに対して、リヒトは尚もコウを見つめながら話した。
「君に初めて会った時、少し期待していたんだ。もしかしたら君が……探していた人なんじゃないかって」
「お前が探していた人?」
「でも―――気付いた。君の光は彼のためだけに、ただ一人のためにある希望なんだって……それじゃ、駄目なんだ。探しているのは闇と共に生きる力じゃない……闇と同化する光じゃないんだ……」
「言っている事はよくわかんねーけど、それってもしかして知恵の門に関係する事なのか?」
それに対する答えは沈黙だった。けれどリヒトの固い表情がコウの質問を肯定していた。
「リヒト、お前は何を知っている?――――お前は一体何者なんだ?」
「……おれは―――」
その後、リヒトが何と繋げようとしたのかは解らなかった。何故ならこの後すぐに図書委員が来て会話が中断されたからだ。
「申し訳御座いません。閉館時間を過ぎていますのでそろそろ……」
「……」
「あ、待ってリヒト!」
図書委員の言葉を聞いて表情を固くしたリヒトは、そのまま階段を降りて行ってしまう。コウは慌ててその背中を追いかけた。
廊下に出た後、リヒトに追いついたコウは彼の制服の袖を掴んで問いかけた。
「さっきなんて言いかけたの?」
しかし、返ってくるのは完全なる沈黙による拒絶だった。コウは諦めきれずに頼み込んだ。
「リヒト、おれはどうしてもこの学校の秘密を知りたいんだ……お前がもし、何かを知っているのなら教えてくれないか?」
「……何故そこまでして知恵の門にこだわるのかは知らないけど、残念ながら君にあの門を潜る資格は無い。正確には潜る必要がない。あれは、ある使命を与えられた者が入る門なのだから」
「ある使命……?」
「『門番』では無い君には関係の無い事だ」
リヒトの言っていることはさっぱり理解出来ないものだったが、やはり彼は知恵の門についてよく知っている様子だった。
しかし、同時にこれ以上縋ったとしても、リヒトは何も答えてくれないだろうという事も察してしまってコウは掴んでいたリヒトの袖を離す。
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