落ちこぼれ同盟

kouta

文字の大きさ
192 / 233
7章 リサイア大会 ペア戦予選編

青き剣、クレイモア

「そろそろ時間だな。支度は出来ているか?」
「はい」

ガーネットの問いかけにアーサーは頷き、腰に提げていた剣を見せる。
 何の装飾もないただの木剣に、戸惑いの表情を浮かべたのはガーネットでは無くシアンだった。

「まさかとは思いますが、そんな装備で試合に臨むわけではないですよね……?」
「そのつもりなのですが」

その答えにシアンは声にならない悲鳴をあげる。

「駄目です! そんな棒きれで挑むなんて、相手にも失礼ですよ!! ちょっとそこでお待ちなさいっ」
「えっ、あの……」

戸惑うアーサーを置いて、シアンは風紀室の奥の部屋に駆け込んでいった。
 置き去りにされたアーサーはガーネットに小声で話しかける。

「どうしよう、ガーネット」
「シアンに任せるしかないでしょう。剣に関しては煩い奴ですから」
「はぁ……」

それから待つこと数分後。

「うん! これならいいでしょう」

『あーでもないこーでもない』と隣の部屋にいたアーサー達にも聞こえる大声を出しながら、奥からガタガタと音を立てて探し出してきた剣。
 それはクレイモアと呼ばれる種類の剣だった。かなり高価な代物らしく、青を基調とした上品な装飾の鞘には小さなサファイヤが埋め込まれている。

「どうぞ。これをお使いください」
「……気持ちは嬉しいのですが、こんな高そうな剣はとても……」

首を振って断るアーサーに、シアンがすかさず口を開いた。

「これは私の剣ですからお気になさらずに。置き場所に困ってこの部屋の稽古場に置いていたものですから。三年前の武道大会で優勝した時にとある貴族の方から頂いたものなのですが、生憎私には重くて使えないのです。この子もきっとあなたに使ってもらったら嬉しいと思うのですが」
「でも……今回の試合では剣を抜くつもりはないんです」
「わかっています。ですから鞘に収めたまま使ってください。それなら構わないでしょ?」

繊細そうな細工を施していある鞘を目の前に翳したまま、シアンの笑顔は揺るがない。そこにはアーサーが受け取るまで折れないという意思を感じ取ってしまい、困ったアーサーはガーネットに視線を向ける。

「折角の好意だ。おれもその剣はお前にとても似合うと思う」

しかし、ガーネットはシアンの意見に賛成らしい。2対1という不利な状況に追い込まれたアーサーは、結局シアンの厚意を受け入れる事にした。

「ありがとうございます。では少しの間お借りします」
「えぇ。どうぞ」

シアンに差し出された剣をアーサーは手にとって注意深く眺めた。
感想 4

あなたにおすすめの小説

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る

りーさん
ファンタジー
 アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。  その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。  そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。  その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。

声を失った悪役令息は北の砦で覚醒する〜無詠唱結界で最強と呼ばれ、冷酷侯爵に囲われました〜

天気
BL
完結に向けて頑張ります 5月中旬頃完結予定です その後は、サイドストーリーをちょこちょこ投稿していこうと思ってます

贖罪公爵長男とのんきな俺

侑希
BL
異世界転生したら子爵家に生まれたけれど自分以外一家全滅という惨事に見舞われたレオン。 貴族生活に恐れ慄いたレオンは自分を死んだことにして平民のリオとして生きることにした。 一方公爵家の長男であるフレドリックは当時流行っていた児童小説の影響で、公爵家に身を寄せていたレオンにひどい言葉をぶつけてしまう。その後すぐにレオンが死んだと知らされたフレドリックは、以降十年、ひたすらそのことを悔いて生活していた。 そして十年後、二人はフレドリックとリオとして再会することになる。   ・フレドリック視点は重め、レオン及びリオ視点は軽め ・異世界転生がちょいちょい発生する世界。色々な世界の色々な時代からの転生者の影響で文明が若干ちぐはぐ。 ・世界観ふんわり 細かいことは気にしないで読んでください。 ・CP固定・ご都合主義・ハピエン ・他サイト掲載予定あり

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

【完結】Restartー僕は異世界で人生をやり直すー

エウラ
BL
───僕の人生、最悪だった。 生まれた家は名家で資産家。でも跡取りが僕だけだったから厳しく育てられ、教育係という名の監視がついて一日中気が休まることはない。 それでも唯々諾々と家のために従った。 そんなある日、母が病気で亡くなって直ぐに父が後妻と子供を連れて来た。僕より一つ下の少年だった。 父はその子を跡取りに決め、僕は捨てられた。 ヤケになって家を飛び出した先に知らない森が見えて・・・。 僕はこの世界で人生を再始動(リスタート)する事にした。 不定期更新です。 以前少し投稿したものを設定変更しました。 ジャンルを恋愛からBLに変更しました。 また後で変更とかあるかも。 完結しました。

事なかれ主義の回廊

由紀菜
BL
大学生の藤咲啓嗣は通学中に事故に遭い、知らない世界で転生する。大貴族の次男ランバート=アルフレイドとして初等部入学前から人生をやり直し、学園で出会う無愛想で大人顔負けの魔法の実力者であるヨアゼルン=フィアラルドと親友になるが、彼に隠された力に翻弄され次々と襲ってくる災難に巻き込まれる。終いには、国家の存続を揺るがす大事件にまで発展することに・・・