落ちこぼれ同盟

kouta

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一章 新入生歓迎会

救世主

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 会長がキスをした。


 それも美形じゃない初対面の男に。
 まぁ、会長の場合は初対面の相手でも好みの人間とあらばキスしてもおかしくはないのだけれど……。
 弟のラファは隣で絶句。副会長のサーシャは顔を真っ青にして今にも倒れそうだった。転校生と一緒に居た寮監督生は『あちゃー』って感じて頭を抱えている。
 食堂はパニック状態だ。唯一、動揺せずに欠伸を噛み殺しているのはリヒト。お前はもう少しリアクションしていいと思う。

「いただき」

放心している転校生を放してレイがぺろりと舌を舐める。我に返った転校生は一気に顔を真っ赤にして。

「な、なにすんだこの野郎!!」

と、力いっぱいぶん殴った。あ、やばいと思ったけどすでに遅し。

 またもや食堂に絶叫が迸った。この怒りのパンチで、副会長も正気に戻り、『何しているんですかあなたは!』と会長を睨みつけて噴努。
 リファもラファと一緒になって『何すんの!?』と抗議した。リヒトは相変わらず眠たそうに目を擦っている。だからお前も何かリアクションしろって。
 そんなことをしていたら、リファにとって最悪の敵とも言うべき風紀委員達がやってきた。

「何の騒ぎだこれは?」
「会長どうしたんですか? その頬」
「心配してくれてるのかシアン。やっぱり、お前はおれに相応しい」

やめときゃいいのに、気遣ってレイに声をかけたシアンはだらしなくにやけた会長に手を握られて鳥肌を立てていた。
 サーシャはシアンの事を毛嫌いしているが、リファ達はそこまで嫌っている相手でもない。寧ろ会長の餌食になっていてちょっと気の毒な人、というイメージが強い。

「放してくれませんか。うちの副委員長が涙目になっているので」
「俺に手を握られたのがそんなに嬉しいのかシアン? コウも別に嫉妬しなくていいんだぞ。お前の事も愛してるぜ」

嫌いというよりは憎悪している人物。それは、コウという人間だ。
 彼が何故周りからもてはやされるのかリファにはまったく理解できない。

 風紀の三番目? シアンやガーネットと比べるまでも無く劣っているのに……おこがましい。
 可愛い? 人形みたいな無表情なのに。寧ろ気持ち悪い。
 強い? そんなわけがない。道具に頼りきった戦い方しか出来ない腰ぬけだ。

 評価されるどれを見てもリファが彼に劣っているとは思えない。それどころか、かなり優れているはずだった。
 過大評価されている。それなのにその事に周りも気付かず、本人もそれが当たり前のように受け取っている。
 それがリファ達には堪らなくコウが嫌いな理由だ。
 しかし、今はコウばかりを睨みつけても居られない。このままでは転校生は会長を殴ったとして風紀に連れて行かれてしまうかもしれないのだ。
 どう見ても会長が悪いのにそれは可哀想だ。そして、そう思ったのはリファだけじゃないらしい。

「レイがいきなり転校生にキスをして、怒った彼に殴られた。それだけだよ」

説明したのは今まで欠伸をして静観していたリヒトだ。やっと役に立つことをしてくれた。

「それはお前が悪いな」
「うるせーよ鳥野郎! フン、俺様の顔を思いっきり殴りやがって……歓迎会覚えてろよ? お前は俺が絶対に捕まえてやる」

会長は捨て台詞のように転校生にそう告げると、再び風紀委員長に向かって言った。

「騒動の原因はわかっただろ。風紀はあっちに行きな」
「そうはいかない。彼にはちょっと用事があってね」
「俺に?」
「そう。転校生の君に」

ガーネットの言葉にレイもリファ達も首を傾げた。何の用があるんだろう。

「最近、魔の森に行かなかったか?」
「まのもり? 俺、この辺の地理はさっぱりなんだけど……」
「そうか。じゃあ、精霊と契約はしている?」
「そもそも契約の仕方を知らないよ」
「一体なんの尋問だこれは?」
「さっきから何わからないことを訊ねているんです?」

委員長の意図がわからないものだからレイもサーシャも苛立っている。

「なんでもない。変な事を聞いてすまないが、これで最後にするから答えて欲しい……君の属性はなんだ?」
「俺の属性……」

その質問をした途端、何故か転校生の隣に座っていた寮監督生の顔が強張った。

 そして大勢の生徒の視線が転校生に向けられる。

「わからない……」
「わからない? 属性が?」
「誰も教えてくれなかった。俺自身、魔法が使えるなんてついこの間まで知らなかった……けれど、今は使える魔法が一つだけある。それに属性があるかなんて俺にはわからないけど……もし、あなたに解るなら見て欲しい」
「わかった。その魔法を是非見せてくれ」

緊張した様子でぎゅっと胸の前で握りしめた転校生は、ガーネットの言葉を受けて顔をあげた。


「あらゆる闇を祓い、我を守りたまえ! ホーリー・シールド!」


それは輝く光の結晶だった。眩い光で前が一瞬見えなくなるほどだ。
 暫し見惚れた。その光の美しさに、誰もが酔いしれた。そして、皆すぐに彼の『属性』が何なのか悟った。

「うっ……!」
「フェン!?」

その光を浴びた途端、苦しそうに蹲ったフェン。焦ったようにコウが彼の名前を呼んだ。

「っ!? すぐにその魔法を解け!」
「えっ!? わ、わかった」

ガーネットの迫力に転校生が驚きながら魔法を消した。倒れこみそうになっていたフェンは何とか踏みとどまったが、額には脂汗が滲んでいた。

「大丈夫か?」
「ッ、大丈夫です……」
「コウ……以前、あなたが見たのはこれですか?」
「あぁ、間違いない」
「……これではっきりしたな」

闇属性のフェンを苦しめた眩い光。

 まさかと思ったけれど、これはもしかしなくても全滅したと言われている……。


「光属性……」


リヒトが驚いたように呟いた。もう彼の顔は眠たそうにしていない。
 誰もが転校生を見つめて呆然していた。一人、彼はわかっていない様子でビクビクしながら周りを見ている。

「お、俺なんか悪い事しちゃったのか?」
「とんでもない! ライト……君は救世主だ」
「へっ!?」

サーシャが言った事はあながち間違っていない。もう、長く失われていた『光』。


 それが再び人類の手にわたって来たのだから。


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