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序『WORLD NOVA』
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「何てこった!!!」
備え付けの鏡台に手をついて項垂れたまま俺は叫んだ。どうして今ここで。このタイミングで。もうあと1日、いや半日でも早ければ……。
―――俺、加賀見貴一……もとい、エルシュカ・アーレイドは、成人向けBLゲームの世界に転生してしまった!
平凡な日本人男性として生きた記憶を、忌むべき事にこんなタイミングで思い出す。前世の最期はどんな感じだったんだったか。確か事故に巻き込まれたか何だか、そんな感じだ。青信号を待ちながらスマホを触ってたのが最期の記憶だけど、そんな事は今どうだっていい。
転生した事も今は置いておこう。一番の大問題は、ここが成人向けのBLゲーム『WORLD NOVA』の世界だという事、そして俺がエルシュカ・アーレイドであるという事だ。
WORLD NOVA、それはゲームのタイトルでもあり、この世界で最も有名なとある大会の名前でもある。前世の俺はこのゲームを妹からそれはもう強く勧められ、BLに特に抵抗もなかったのでとありあえず始めてみて……見事にハマった。いや、エロゲなんだけど。すぐ濡れ場になるんだけど。
だがそれにも理由がある。ここ、WORLD NOVAの世界では『共鳴力』と呼ばれるエネルギーが存在する。それはこの世界にとって必須エネルギーで、これが枯渇すると土地は痩せ命は枯れ、病と飢えが蔓延し世界は滅びてしまう。人々が生活する上で決して欠かせない力だ。
そんな共鳴力は、『鳴力』を持って生まれた男性が性的接触を行う事で生産される。つまり、鳴力を持つ男性が性的な事をするのは全世界にとって必要不可欠な善行であり、生命線とも言えるわけだ。
そして、その共鳴力を産み出す行為自体をもっと広めるためにと10年前から開催されるようになった大会こそ、『WORLD NOVA』。鳴力を持つ男性同士がユニットを組み、様々な方法で共鳴力を生み出す様子を1年かけて世界中に発信し―――最も魅力的で、人気のあるユニットはどこか。その頂点を決める大会だ。そこで優勝すれば、絶対的な地位と富が約束される。この世界で鳴力を持って生まれた以上、目指さない奴はいないと言われている。
ここで話をゲームに戻そう。俺が前世でプレイしたゲームも、WORLD NOVAという名前から分かる通り大会での優勝を目指すゲームだった。主人公は高い鳴力を持って生まれた男の子。当然ユニットを組み大会での優勝を目指すが、大会のエントリー直前で何かの手違いにより組むはずだったユニットが無くなってしまう。
消沈する主人公に、とある男が声をかける―――「俺達のユニットに入らないか」と。
そのメンバー達と共鳴力を生み出し……つまり色んなエロい事をしながら、国民からの人気を集めていく、というのが主なあらすじだ。
……その主人公こそ、エルシュカ・アーレイド。『オーロラ』という名の5人組ユニットに属し、他の4人からエロい事をされまくる。要は総受けだ。……自分で言ってげんなりしてきた。
ゲームをプレイするのはいい。大歓迎だ。濡れ場だってどんとこい。だけど自分がやるのはまた話が違ってくる。俺は男とそういう事をした事もないし、したいと思った事もない。ゲームをやってて喘ぎまくる主人公を見て「エロいな」と思った事はあるけども。
目の前の鏡に映った自分の姿は、ゲームで見た通りの艶やかな黒髪に白銀の目。名前も同じ、そしてこうして前世の記憶を思い出すまでエルシュカとして生きた記憶もある。そう、ついさっき、ユニット『オーロラ』のリーダーに「俺達のユニットに入らないか」と誘われて、これでやっと大会にエントリー出来ると大喜びで頷いた記憶も。どうしてこのタイミングで前世を思い出したんだと項垂れた理由がこれだ。あと半日でも早く思い出せてれば俺はこのエントリー会場に近付きすらしなかったし、最悪全部終わった後で思い出せていれば終わった事だと諦める事も出来た。
「……今更やっぱりやめるだなんて言えるわけがない……」
絶対的な地位と富に興味がないわけではないけれど、全世界に自分の痴態を晒してまで欲しいとは思わない。この世界にとってそれが恥ずかしい事でも何でもなく、むしろ望まれて必要とされている事だとは理解していても日本人として生きた記憶が邪魔をする。この世界にとってユニットは最早神聖視すらされている存在だ。扱いとしては前世でいうところのアイドルに近いだろうか。テレビで見ない日はなく、街中に行けば必ず視界に広告やら何やらが入り、ライブや公演なんてある日にはもう、鑑賞を理由に仕事を休む事が国から認められている。大会なんてもう、国事だ。いや、国を通り越してるから世界事か、ははは。
笑ってる場合じゃない。そんな大会に、オーロラの一員として俺はエントリーしてしまったんだ。駄々をこねて今更降りてしまえば、他のメンバーにもとんでもない迷惑がかかる。元々オーロラは俺が入らずとも5人組ユニットのはずだった。それが急にメンバーの1人が何も言わずに失踪。欠員が出てしまったオーロラはこのままじゃ正式なエントリーが出来ない、となってしまったところに偶然俺が居合わせた。つまり俺が抜けてしまうとオーロラのエントリー自体が無効になってしまうというわけだ。そんなの出来るわけがない。
つまり、やるしかない。
「はーーー…………。……っしゃ。腹くくろ……」
おうおう、やってやろうじゃん。俺のエロさに腰ぬかすなよ全国民どもよ……マジで……温かい目で見守ってくれよな……。
備え付けの鏡台に手をついて項垂れたまま俺は叫んだ。どうして今ここで。このタイミングで。もうあと1日、いや半日でも早ければ……。
―――俺、加賀見貴一……もとい、エルシュカ・アーレイドは、成人向けBLゲームの世界に転生してしまった!
平凡な日本人男性として生きた記憶を、忌むべき事にこんなタイミングで思い出す。前世の最期はどんな感じだったんだったか。確か事故に巻き込まれたか何だか、そんな感じだ。青信号を待ちながらスマホを触ってたのが最期の記憶だけど、そんな事は今どうだっていい。
転生した事も今は置いておこう。一番の大問題は、ここが成人向けのBLゲーム『WORLD NOVA』の世界だという事、そして俺がエルシュカ・アーレイドであるという事だ。
WORLD NOVA、それはゲームのタイトルでもあり、この世界で最も有名なとある大会の名前でもある。前世の俺はこのゲームを妹からそれはもう強く勧められ、BLに特に抵抗もなかったのでとありあえず始めてみて……見事にハマった。いや、エロゲなんだけど。すぐ濡れ場になるんだけど。
だがそれにも理由がある。ここ、WORLD NOVAの世界では『共鳴力』と呼ばれるエネルギーが存在する。それはこの世界にとって必須エネルギーで、これが枯渇すると土地は痩せ命は枯れ、病と飢えが蔓延し世界は滅びてしまう。人々が生活する上で決して欠かせない力だ。
そんな共鳴力は、『鳴力』を持って生まれた男性が性的接触を行う事で生産される。つまり、鳴力を持つ男性が性的な事をするのは全世界にとって必要不可欠な善行であり、生命線とも言えるわけだ。
そして、その共鳴力を産み出す行為自体をもっと広めるためにと10年前から開催されるようになった大会こそ、『WORLD NOVA』。鳴力を持つ男性同士がユニットを組み、様々な方法で共鳴力を生み出す様子を1年かけて世界中に発信し―――最も魅力的で、人気のあるユニットはどこか。その頂点を決める大会だ。そこで優勝すれば、絶対的な地位と富が約束される。この世界で鳴力を持って生まれた以上、目指さない奴はいないと言われている。
ここで話をゲームに戻そう。俺が前世でプレイしたゲームも、WORLD NOVAという名前から分かる通り大会での優勝を目指すゲームだった。主人公は高い鳴力を持って生まれた男の子。当然ユニットを組み大会での優勝を目指すが、大会のエントリー直前で何かの手違いにより組むはずだったユニットが無くなってしまう。
消沈する主人公に、とある男が声をかける―――「俺達のユニットに入らないか」と。
そのメンバー達と共鳴力を生み出し……つまり色んなエロい事をしながら、国民からの人気を集めていく、というのが主なあらすじだ。
……その主人公こそ、エルシュカ・アーレイド。『オーロラ』という名の5人組ユニットに属し、他の4人からエロい事をされまくる。要は総受けだ。……自分で言ってげんなりしてきた。
ゲームをプレイするのはいい。大歓迎だ。濡れ場だってどんとこい。だけど自分がやるのはまた話が違ってくる。俺は男とそういう事をした事もないし、したいと思った事もない。ゲームをやってて喘ぎまくる主人公を見て「エロいな」と思った事はあるけども。
目の前の鏡に映った自分の姿は、ゲームで見た通りの艶やかな黒髪に白銀の目。名前も同じ、そしてこうして前世の記憶を思い出すまでエルシュカとして生きた記憶もある。そう、ついさっき、ユニット『オーロラ』のリーダーに「俺達のユニットに入らないか」と誘われて、これでやっと大会にエントリー出来ると大喜びで頷いた記憶も。どうしてこのタイミングで前世を思い出したんだと項垂れた理由がこれだ。あと半日でも早く思い出せてれば俺はこのエントリー会場に近付きすらしなかったし、最悪全部終わった後で思い出せていれば終わった事だと諦める事も出来た。
「……今更やっぱりやめるだなんて言えるわけがない……」
絶対的な地位と富に興味がないわけではないけれど、全世界に自分の痴態を晒してまで欲しいとは思わない。この世界にとってそれが恥ずかしい事でも何でもなく、むしろ望まれて必要とされている事だとは理解していても日本人として生きた記憶が邪魔をする。この世界にとってユニットは最早神聖視すらされている存在だ。扱いとしては前世でいうところのアイドルに近いだろうか。テレビで見ない日はなく、街中に行けば必ず視界に広告やら何やらが入り、ライブや公演なんてある日にはもう、鑑賞を理由に仕事を休む事が国から認められている。大会なんてもう、国事だ。いや、国を通り越してるから世界事か、ははは。
笑ってる場合じゃない。そんな大会に、オーロラの一員として俺はエントリーしてしまったんだ。駄々をこねて今更降りてしまえば、他のメンバーにもとんでもない迷惑がかかる。元々オーロラは俺が入らずとも5人組ユニットのはずだった。それが急にメンバーの1人が何も言わずに失踪。欠員が出てしまったオーロラはこのままじゃ正式なエントリーが出来ない、となってしまったところに偶然俺が居合わせた。つまり俺が抜けてしまうとオーロラのエントリー自体が無効になってしまうというわけだ。そんなの出来るわけがない。
つまり、やるしかない。
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