潜魔窟物語

番外編『潜魔窟を彩る人々』

書房二月の主人

潜魔窟に挑む者達が、まず最初に目指す目標であるのが、狭間の街トインである。

そのトインの片隅にひっそりと建っているのが『書房二月(ふたつき)』だ。

書房二月の主人は、誰にでも「小僧」と呼び掛ける『ラギ·キサ』という名で、幽体召喚などの陰術系の魔術を得意とする魔術師であるが、基本的には蹴りを主体に肉弾戦を展開するという。

そんな主人、昔は勿論仲間達と潜魔窟に挑んでいた冒険者だった。

ただ、極度の方向音痴であり、仲間達がいないとすぐに迷子になってしまう。

トインに腰を据えることになったのも、強大な魔物に襲われ、なんとかトインまで逃げたものの仲間とはぐれ、地上まで帰る術を失ってしまったからである。

そんな主人だが、潜魔窟に挑む冒険者にとって有難い存在であり、得意の陰術を利用した転送割符を販売しており、これを使えば地上からトインまですぐに転送することができるのだ。

ただし、主人は誰にでも販売するわけではなく、礼を欠いた態度で接するとどんなに大金を積んでも入手できないので気を付けたほうがいいだろう。

潜魔窟に挑む者であり、トインまで到達できる腕前の冒険者は寄ってみるとよいだろう。