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1334.理由は
「それじゃあ、俺達はこれで…」
ハルがそう言って俺に視線を向けた瞬間、屋台のおじさんが口を開いた。
「なあ、兄さん、ちょっとだけ気になる事があるんだが…聞いても良いか?時間はそう長くは取らないからさ」
「ああ。なんだ?」
ハルはすぐにおじさんに視線を戻した。
「兄さんとそっちの兄ちゃんは、今は大門前まで移動中…なんだよな?」
「ああそうだ。よく分かったな」
「大門前で出発式をする予定だと、昨日通達が回ってたからな」
今の時間帯にここにいるなら、そこに向かってるんだと思ったんだ。おじさんはさらりとそう続けた。
そこで俺はハッと気づいた。
あれ?ちょっと待って。もしかしてこれって…俺も遠征の参加者だと思われてない?
ハルは三人に軍服を見せたけど、俺はマントを開いてすらいない。俺のマントの下に着ているのが、軍服か礼服かなんて分かる筈が無いんだよね。
だからさっきから、たまにウルちゃんとネスくんのキラキラした目が俺にも向けられていたのか。
うわー、気づいたのにいつまでも誤解させたままっていうのはまずいよね。俺は慌てておじさんに視線を戻した。
あの、すみません。俺は参加者じゃないんです。
そう言いたい所なんだけど、真剣な表情でハルを見つめているおじさんの言葉を遮る勇気は俺には無かった。
「急いでいるだろうに、何故わざわざこのお守りを領主様に届けるなんて言ってくれたんだ?こどもたちは喜んでいるし、もちろん俺も嬉しい。すごく有難い申し出ではあるんだが、その理由が気になってな」
当然と言えば当然の疑問に、ハルは理由は単純だよと答えながら心から楽しそうに笑った。
俺はハルが不意に見せた、あまりにも無防備な笑顔に少しだけ驚いてしまった。
ハルって結構よく笑う人なんだけど、その笑顔にも色々な種類があるんだよね。
クスクスと面白そうに笑っている時もあれば、悪戯っぽくニヤリと笑っている時、楽しそうにニコニコと笑っている時、それに格好良くふわっと笑ってる時もあるかな。
でも今日の笑顔は、そのどれにも当てはまらない。比較的レア度が高い笑顔だ。
まるでこどものような無邪気なその笑い方は、初対面の相手には滅多に見せない種類のものだ。
伴侶候補である俺とか、ハルの家族の前、あとはレーブンさんとローガンさんの前ぐらいでしか見せてないと思うんだよね。
「あなたと同じだよ。俺も自分の家族が誉められたり、慕われたりしているのを聞くのは、嬉しいからな。そのお礼に届けたいと思っただけだ」
ああ、なるほど。ハルは父であるケイリーさんを褒められたのが嬉しかったから、お礼に届けてあげようと考えたのか。
優しいハルの事だから、もちろんお守りを作ったウルちゃんと、一緒に作ったのに届ける事ができなかったネスくんの気持ちも考えただろう。
でも最後の一押しになったのは、それだったって事だよね。
それならさっきの笑顔も、家族を褒められた嬉しさからのものって事になる。それなら俺も納得できるな。
ちらっとこちらを見たハルに、俺もうんうんと頷きを返しておいた。ケイリーさんの事を褒めてくれてるのを聞いて俺も嬉しくなったんだから、実の息子であるハルなら、嬉しいに決まってるよね。
明るい笑みを浮かべたハルの顔を、おじさんはぽかんと口を開いたまま数秒間見つめた。
「あなたはっ…ハロ…」
ハルからのヒントで、おじさんはすぐに答えに辿り着いたらしい。
もしかしたら、さっきの『かつてここの騎士団に所属していて、今は所属していない』って言ったのもヒントになったのかな。それとも俺がハルって普通に呼んでたからかもしれない。
「名前は、言わないでくれ」
ハルはさっと周りに視線を巡らせた。今はまばらにしかいない人たちも、誰一人としてこっちを気にした様子は無い。
でももし名前を呼ばれたら、領主一家の一員がここにいると知られたら、きっと大騒ぎになる。
「っ…そうだな。すまなかった。そして心からの感謝をあなたに」
急に言葉が固くなったおじさんを、ウルちゃんは不思議そうに見つめている。ネスくんは今は顔を真っ赤にして固まってるから、たぶんおじさんと同じくハルの正体に気づいたんだろうな。
「?あの、ありがとう、おにいちゃんたち」
「どういたしまして」
「大丈夫、ハルが届けてくれるからね」
「うん、またきてね」
ニッコリと笑って包みを差し出してくれるウルちゃんは、間違いなくここの屋台の看板娘だった。
ハルがそう言って俺に視線を向けた瞬間、屋台のおじさんが口を開いた。
「なあ、兄さん、ちょっとだけ気になる事があるんだが…聞いても良いか?時間はそう長くは取らないからさ」
「ああ。なんだ?」
ハルはすぐにおじさんに視線を戻した。
「兄さんとそっちの兄ちゃんは、今は大門前まで移動中…なんだよな?」
「ああそうだ。よく分かったな」
「大門前で出発式をする予定だと、昨日通達が回ってたからな」
今の時間帯にここにいるなら、そこに向かってるんだと思ったんだ。おじさんはさらりとそう続けた。
そこで俺はハッと気づいた。
あれ?ちょっと待って。もしかしてこれって…俺も遠征の参加者だと思われてない?
ハルは三人に軍服を見せたけど、俺はマントを開いてすらいない。俺のマントの下に着ているのが、軍服か礼服かなんて分かる筈が無いんだよね。
だからさっきから、たまにウルちゃんとネスくんのキラキラした目が俺にも向けられていたのか。
うわー、気づいたのにいつまでも誤解させたままっていうのはまずいよね。俺は慌てておじさんに視線を戻した。
あの、すみません。俺は参加者じゃないんです。
そう言いたい所なんだけど、真剣な表情でハルを見つめているおじさんの言葉を遮る勇気は俺には無かった。
「急いでいるだろうに、何故わざわざこのお守りを領主様に届けるなんて言ってくれたんだ?こどもたちは喜んでいるし、もちろん俺も嬉しい。すごく有難い申し出ではあるんだが、その理由が気になってな」
当然と言えば当然の疑問に、ハルは理由は単純だよと答えながら心から楽しそうに笑った。
俺はハルが不意に見せた、あまりにも無防備な笑顔に少しだけ驚いてしまった。
ハルって結構よく笑う人なんだけど、その笑顔にも色々な種類があるんだよね。
クスクスと面白そうに笑っている時もあれば、悪戯っぽくニヤリと笑っている時、楽しそうにニコニコと笑っている時、それに格好良くふわっと笑ってる時もあるかな。
でも今日の笑顔は、そのどれにも当てはまらない。比較的レア度が高い笑顔だ。
まるでこどものような無邪気なその笑い方は、初対面の相手には滅多に見せない種類のものだ。
伴侶候補である俺とか、ハルの家族の前、あとはレーブンさんとローガンさんの前ぐらいでしか見せてないと思うんだよね。
「あなたと同じだよ。俺も自分の家族が誉められたり、慕われたりしているのを聞くのは、嬉しいからな。そのお礼に届けたいと思っただけだ」
ああ、なるほど。ハルは父であるケイリーさんを褒められたのが嬉しかったから、お礼に届けてあげようと考えたのか。
優しいハルの事だから、もちろんお守りを作ったウルちゃんと、一緒に作ったのに届ける事ができなかったネスくんの気持ちも考えただろう。
でも最後の一押しになったのは、それだったって事だよね。
それならさっきの笑顔も、家族を褒められた嬉しさからのものって事になる。それなら俺も納得できるな。
ちらっとこちらを見たハルに、俺もうんうんと頷きを返しておいた。ケイリーさんの事を褒めてくれてるのを聞いて俺も嬉しくなったんだから、実の息子であるハルなら、嬉しいに決まってるよね。
明るい笑みを浮かべたハルの顔を、おじさんはぽかんと口を開いたまま数秒間見つめた。
「あなたはっ…ハロ…」
ハルからのヒントで、おじさんはすぐに答えに辿り着いたらしい。
もしかしたら、さっきの『かつてここの騎士団に所属していて、今は所属していない』って言ったのもヒントになったのかな。それとも俺がハルって普通に呼んでたからかもしれない。
「名前は、言わないでくれ」
ハルはさっと周りに視線を巡らせた。今はまばらにしかいない人たちも、誰一人としてこっちを気にした様子は無い。
でももし名前を呼ばれたら、領主一家の一員がここにいると知られたら、きっと大騒ぎになる。
「っ…そうだな。すまなかった。そして心からの感謝をあなたに」
急に言葉が固くなったおじさんを、ウルちゃんは不思議そうに見つめている。ネスくんは今は顔を真っ赤にして固まってるから、たぶんおじさんと同じくハルの正体に気づいたんだろうな。
「?あの、ありがとう、おにいちゃんたち」
「どういたしまして」
「大丈夫、ハルが届けてくれるからね」
「うん、またきてね」
ニッコリと笑って包みを差し出してくれるウルちゃんは、間違いなくここの屋台の看板娘だった。
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