生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1335.【ハル視点】出発前の

 明後日には本隊が出発すると決まってからは、時間が過ぎていくのがとにかく早かった。

 ジルさんやマチルダさんが事前に準備を進めてくれていたから、本当ならここまで忙しくなる筈じゃなかったんだがな。

 先行部隊である俺達の報告を受けた父さんとファーガス兄さんが、もっと参加人数と備えを増やすべきだと急に主張し始めたからだ。

 隠れ家の中にいるのは盗賊なのか、それともそれ以外の誰かなのか。現時点ではまだその詳細は不明だ。俺達はあえてその中にまでは踏み入らなかったからな。中にいる奴らを刺激しない方を優先した。

「相手が誰であれダンジョン内にそんな場所を作る集団なら、もっと警戒すべきだ。その隠れ家の中にまた別の魔道具が設置されていて、さらに飛ばされる可能性だってあるだろう?」

 真剣な表情の父さんからそう言われてしまえば、俺達にできるのは確かにそうだなと頷いて、当初の予定のどこを変更するべきかを考える事ぐらいだ。

 その結果、当初の予定よりもぐんと参加人数が増える事となった。

 最初から参加予定だった騎士団の騎士たちや衛兵隊の衛兵たちの人数を増やし、さらにそこに使用人たちから選抜された参加者まで加える事になった。

 たしかにこの人数なら、例え隠れ家の中に罠や魔道具があったとしても、対処は容易くなるだろうな。



「という事で、使用人からも参加者を増やす事になったんだ」

 会議の内容を説明し終えると、アキトはぽかんと口を開いて固まった。

「え、使用人さんたちからも?」
「ああ、もちろん戦闘が得意な使用人たちからの選抜だよ。戦闘が苦手な人を無理に連れていく訳じゃない」

 そもそも戦闘が苦手な人の方が少ないんだけどな。とりあえず安心してもらおうとそう声をかければ、アキトは少し考えてから口を開いた。

「俺とキースくんを助けに来てくれた時みたいな感じかな?」

 あの時来てくれた人たちも、たしか戦闘が得意な人だったよね?と尋ねてきたアキトに、俺はそうそうと何度も頷きを返した。

 実際、今回の本隊への参加者の中には、あの時の使用人も何人か混ざっているからな。

「もしあの時に取り逃した盗賊なら、キース様とアキト様を攫った奴らです。絶対に容赦はしません」
「例えそうでなかったとしても、勝手に我がウェルマール領の所有するダンジョンを改造した犯罪者です。その罰は絶対に受けさせます」

 参加が決まった使用人たちが、凄みのある笑顔でそう言っていたのが印象的なんだが―――うん、これはアキトには伝えなくて良いな。

 優しい人ばっかりで嬉しいと普段から言っているアキトに、実は血の気が多い使用人が多いんだとは言い難いからな。

 いや、だがアキトなら、例えそんな姿を知ったとしても、笑って受け入れそうな気もする。

「うちの使用人の中には、ギュームみたいに騎士になって欲しいと言われて断ったなんて人も、普通に混ざっているからな」

 心配はしなくて大丈夫だよと言えば、アキトはホッとした顔で笑ってくれた。



 ギュームと言えば、昨日の午前中に大騒動を引き起こしたばかりだ。

 シュリから教わった馬に会うためにと非番の騎士たちを連れて森に飛び出していったギュームが、二頭の馬をつれて帰って来たんだ。その時のギュームの表情は、それはもう見た事がないぐらいの満面の笑みだったらしい。

 ギュームがウマ二頭と共に帰ってきた。

 そんな一報を受けた時、アキトと俺はちょうどウィル兄さんの執務室にいた。ちょうど打合せのために一緒にいたクレットは、驚きすぎたのか大きく目を見開きながら呆然と呟いた。

「まさか…こんなに早く帰って来るとは、思いませんでした…」
「俺もびっくりしてます」

 アキトがそう答えれば、クレットは真顔のままで、ですよねと答えた。

「あー、まあ数日経てば一度は補給のために帰ってくるだろうと思っていたんだが…きっちり二頭とも連れて帰ってくるんだからすごいな」

 呆れ半分、感心半分でそう感想を口にした俺に、ウィル兄は笑って答えた。

「まあギュームだからねー」

 そうだな。まあギュームだからな。

「ギュームさんの気持ちが馬にも通じたのかもしれないね」

 アキトは嬉しそうに笑っているんだが、こればっかりは同意できないな。

「いやー…どちらかというとギュームの執念じゃないか?」

 思わずそう返した俺に、クレットとウィル兄もすぐさま同意を返してくれた。
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