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1342.【ハル視点】食事会
あれこれと色んな事を話したり笑い合ったりしながら、俺達は料理人たちが腕を振るった美味い食事を堪能した。
特に事前に打ち合わせをしたというわけでも無いんだが、食事中は誰一人として今日の遠征の事については触れなかった。
久しぶりにここにいる家族全員で過ごせる、楽しい時間だ。そんな時に遠征なんて緊張感のある話題で、この和やかな空気を壊したくは無い。
――これはあくまでも俺の考えだが、きっと俺以外の皆も同じような事を考えていたんだと思う。
遠征についての話題を避けるとなると、会話の内容は自然と日常の話や、料理の感想などになってくる。
「これ、すっごく美味しいよ」
「あ、こっちのスープ、キースは絶対好きだと思う」
「それなら、こっちのお肉はハル兄の好みだと思うなー」
「ファグ兄さんはこれでしょー?」
「マティさん、こちらのサラダは食べましたか?」
そんな風に、好みに合う物を勧め合ったりするのも楽しかったな。お互いの好みを知っているからできる事だ。
アキトにも皆から色々なものがお勧めされていたが、俺が勧めた卵料理が一番美味しかったらしく目がキラキラしていた。家族に張り合っても仕方ないと分かっているんだが、ついつい張り合ってしまうんだよな。
「そういえば、ラスに教わって作ったっていうハルのための手料理って、いったいどんな料理だったのー?」
唐突にそう尋ねてきたのは、ウィル兄だった。
ジルさんはすこし慌てた様子でバッとアキトの方を見たけど、アキトは照れくさそうに笑っているだけだ。
触れて欲しくない話題では無いと分かったのか、ジルさんは何も言わずにすっと視線を戻した。ジルさんのこういう細やかな気づかいは、本当にありがたいな。
アキトの反応を見て安心したらしい他の皆からも、あれこれと質問をされる事になったが、アキトは嫌がるどころか嬉しそうに答えていた。
作った料理の種類について。その料理に使った食材について。
中でも一番時間を取っていたのは、どれだけラスの指導がすごかったかという話だった。
嬉しそうにニコニコしながら説明するアキトの様子は、孫が祖父の自慢をしているかのように見えてくる。
その微笑ましい姿に、皆も楽しそうに笑いながら聞いていた。
「それにしても、伴侶候補に作ってもらう初めての手料理か…それは嬉しかっただろう?ハル」
父さんからの問いかけに、俺は笑顔で答えた。
「ああ、もちろん。嬉しいを通り越して、まるで夢のような時間だったよ」
「…うん、その気持ちは分かるよ。私もファグが初めて私のために料理を作ってくれた時は、本当に嬉しかったから」
誰よりも先に同意を返してくれたのが、マティさんだったのは正直に言って驚いた。ファーガス兄さんが、手料理を振る舞ったのか。
言われたファーガス兄さんは、本当かマティ!と嬉しそうにしていたのが印象的だった。
そうして全員の食事が終わると、真剣な表情の父さんが全員をぐるりと見回してから口を開いた。視線だけで、場の空気を変えられるのはさすがだと思う。
「今回の遠征では、ムレングダンジョン内に隠し部屋があるという事、魔道具が使われているという事以外は――何も明確にされていない。それはみんなも知っていると思う」
その言葉に、全員がこくりと頷きを返す。
「相手が盗賊であるという確証すらないという現状だが、私達はどんな事態にも対応できるほどの万全の準備をしている。そうだな、ファーガス」
「ああ、これ以上はないというぐらい、完璧な物資の準備がされていたよ。それぞれに食料やポーションの入った魔導収納鞄を持たせるという策も、きちんと実行されている」
ファーガス兄さんの返答を聞いた父さんは、マティさんとジルさんに視線を向けて備品の準備に対する尽力に感謝の言葉を口にした。二人はそのお言葉は部下たちにも伝えます、お役に立てて何よりですと笑顔で答えた。
今の父さんは、領主として話しているからな。返答も自然と改まったものになる。
「普段の遠征とは比べものにならないほど参加者も多くしたし、相手が誰であれ遅れは取らない」
はっきりとそう言いきった父さんを、アキトは尊敬の眼差しで見つめている。あ、キースも同じ目だな。
「私とファーガス、ウィリアム、ハルは全員本隊に参加する。私たちが留守の間は、領主城、そしてウェルマール領で起きた事は領主代理であるマチルダに全ての判断を委ねる」
「は、私におまかせください」
即座に頷いたマティさんの表情は、今から戦闘に赴く騎士のように凛々しかった。先頭に立って動く事に慣れた人だからな。マティさんがいれば安心だ。
「ジルとキース、そしてアキトにはその補佐を頼みたい」
「はい、承りました」
「僕にも役目をくれてありがとうございます、頑張ります」
ジルさんとキースの答えに、アキトも続いて口を開く。
「俺も何ができるかは分かりませんが、全力を尽くします」
「ああ、ありがとう、みんな」
よろしく頼むよとふわっと笑った父さんは、家族にしか見せない穏やかな表情を見せていた。
特に事前に打ち合わせをしたというわけでも無いんだが、食事中は誰一人として今日の遠征の事については触れなかった。
久しぶりにここにいる家族全員で過ごせる、楽しい時間だ。そんな時に遠征なんて緊張感のある話題で、この和やかな空気を壊したくは無い。
――これはあくまでも俺の考えだが、きっと俺以外の皆も同じような事を考えていたんだと思う。
遠征についての話題を避けるとなると、会話の内容は自然と日常の話や、料理の感想などになってくる。
「これ、すっごく美味しいよ」
「あ、こっちのスープ、キースは絶対好きだと思う」
「それなら、こっちのお肉はハル兄の好みだと思うなー」
「ファグ兄さんはこれでしょー?」
「マティさん、こちらのサラダは食べましたか?」
そんな風に、好みに合う物を勧め合ったりするのも楽しかったな。お互いの好みを知っているからできる事だ。
アキトにも皆から色々なものがお勧めされていたが、俺が勧めた卵料理が一番美味しかったらしく目がキラキラしていた。家族に張り合っても仕方ないと分かっているんだが、ついつい張り合ってしまうんだよな。
「そういえば、ラスに教わって作ったっていうハルのための手料理って、いったいどんな料理だったのー?」
唐突にそう尋ねてきたのは、ウィル兄だった。
ジルさんはすこし慌てた様子でバッとアキトの方を見たけど、アキトは照れくさそうに笑っているだけだ。
触れて欲しくない話題では無いと分かったのか、ジルさんは何も言わずにすっと視線を戻した。ジルさんのこういう細やかな気づかいは、本当にありがたいな。
アキトの反応を見て安心したらしい他の皆からも、あれこれと質問をされる事になったが、アキトは嫌がるどころか嬉しそうに答えていた。
作った料理の種類について。その料理に使った食材について。
中でも一番時間を取っていたのは、どれだけラスの指導がすごかったかという話だった。
嬉しそうにニコニコしながら説明するアキトの様子は、孫が祖父の自慢をしているかのように見えてくる。
その微笑ましい姿に、皆も楽しそうに笑いながら聞いていた。
「それにしても、伴侶候補に作ってもらう初めての手料理か…それは嬉しかっただろう?ハル」
父さんからの問いかけに、俺は笑顔で答えた。
「ああ、もちろん。嬉しいを通り越して、まるで夢のような時間だったよ」
「…うん、その気持ちは分かるよ。私もファグが初めて私のために料理を作ってくれた時は、本当に嬉しかったから」
誰よりも先に同意を返してくれたのが、マティさんだったのは正直に言って驚いた。ファーガス兄さんが、手料理を振る舞ったのか。
言われたファーガス兄さんは、本当かマティ!と嬉しそうにしていたのが印象的だった。
そうして全員の食事が終わると、真剣な表情の父さんが全員をぐるりと見回してから口を開いた。視線だけで、場の空気を変えられるのはさすがだと思う。
「今回の遠征では、ムレングダンジョン内に隠し部屋があるという事、魔道具が使われているという事以外は――何も明確にされていない。それはみんなも知っていると思う」
その言葉に、全員がこくりと頷きを返す。
「相手が盗賊であるという確証すらないという現状だが、私達はどんな事態にも対応できるほどの万全の準備をしている。そうだな、ファーガス」
「ああ、これ以上はないというぐらい、完璧な物資の準備がされていたよ。それぞれに食料やポーションの入った魔導収納鞄を持たせるという策も、きちんと実行されている」
ファーガス兄さんの返答を聞いた父さんは、マティさんとジルさんに視線を向けて備品の準備に対する尽力に感謝の言葉を口にした。二人はそのお言葉は部下たちにも伝えます、お役に立てて何よりですと笑顔で答えた。
今の父さんは、領主として話しているからな。返答も自然と改まったものになる。
「普段の遠征とは比べものにならないほど参加者も多くしたし、相手が誰であれ遅れは取らない」
はっきりとそう言いきった父さんを、アキトは尊敬の眼差しで見つめている。あ、キースも同じ目だな。
「私とファーガス、ウィリアム、ハルは全員本隊に参加する。私たちが留守の間は、領主城、そしてウェルマール領で起きた事は領主代理であるマチルダに全ての判断を委ねる」
「は、私におまかせください」
即座に頷いたマティさんの表情は、今から戦闘に赴く騎士のように凛々しかった。先頭に立って動く事に慣れた人だからな。マティさんがいれば安心だ。
「ジルとキース、そしてアキトにはその補佐を頼みたい」
「はい、承りました」
「僕にも役目をくれてありがとうございます、頑張ります」
ジルさんとキースの答えに、アキトも続いて口を開く。
「俺も何ができるかは分かりませんが、全力を尽くします」
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よろしく頼むよとふわっと笑った父さんは、家族にしか見せない穏やかな表情を見せていた。
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