生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1352.【ハル視点】二人の男

 アキトは俺の行動に、驚いた表情を見せた。

「そうやって探ってるんだ…?」
「ああ、これだけ人が集まっていると、さすがに気配探知で探るのは面倒だからな」

 本気を出して気配だけを探れば、これだけの人の中でも父さんたちの気配を辿る事は不可能では無いだろう。

 だが、その間は俺が無防備になってしまう。アキトにも迷惑をかける事になるのが分かっているから、余程の非常事態以外にやるつもりは無い。

 アキトは感心した様子で、さすがハルはすごいねと褒めてくれた。

 うん。アキトに褒められるのが、他の誰に褒められるよりも一番嬉しいんだよな。あまりの嬉しさに、ついつい自然と笑顔になってしまう。

 間違いなくにやけた顔になっているだろう表情を隠すために、俺はアキトの手を引きながらどんどん裏通りを進んで行く。

 行進を見るために集まって来ている人が多いから、今日は裏通りもそれなりに混んでいる。仕方なく速度を落として歩いて行けば、さっき大騒ぎしていた男たちの姿が近づいてくる。

 どうやらアキトもさっきの男たちの姿を見ていたらしく、途中でこっそりと小声で尋ねられた。

「あそこからなら、大通りも見えるって事だよね?」
「ああ、あの高さからならしっかり見えるだろうな。まあ木箱が崩れたら危険だから、もし近くに衛兵がいたら注意ぐらいはされるだろうが…」

 俺は苦笑しながらもそう答えた。

 せめてもっとしっかりとした作りの物を使っているなら、きっと衛兵も見逃してくれるだろう。領主様が見たかったなら仕方ないと、衛兵たちも笑って終わらせてくれると思う。

 だがあの無造作に木箱を積み上げただけの状態は、かなり危険だ。一応は建物の壁で支えるようにしてはいるようだが、急いでいる誰かがぶつかれば間違いなく崩れるだろう。

 周囲を巻き込む可能性があると判断されれば、注意だけでは済まないかもな。もしかしたら衛兵詰所に引っ張って行かれて、一晩ぐらいは捕まる可能性もあるかもしれない。

 そんな事を考えつつ男たちの方を見ながら歩いていると、不意にその二人が木箱から飛び降りたのが見えた。

 思わずさっと周囲の人の位置関係を確認してしまったが、どうやらきちんと危険のないタイミングを見計らっていたらしい。少なくとも巻き込まれる人はいなさそうだと確認した次の瞬間には、二人の男は既に地面に降り立っていた。

 予想外の行動に反射的に呼吸を止めていたらしいアキトは、ホッと安堵の息を吐いた。

「あーびっくりした…」

 思わず漏れたらしいアキトの呟きに、俺もたしかにとすぐに頷いた。まさかあの高さから、二人揃って飛び降りるとは思っていなかったからな。ちょうど周囲を移動していた人たちも、驚きと恐怖、そして咎めるような視線で男たちを見ている。

 そんな視線を向けられている事にも気づかず、男たちは積み上げていた木箱を魔導収納鞄へとしまい始めた。

「よし、渡すぞ」
「ああ、受け取った」
「次、行くぞ」
「もう待ってる」
「そりゃあ失礼」

 男たちはそんな事を笑いまじりの軽い声で言い合いながら、二人は息の合った動きを見せている。その軽快なやりとりを、アキトは楽し気に眺めながら歩いている。

 この手慣れた感じは、おそらく毎回やっているんだろうな。

 衛兵ももちろんだが、騎士にもこういう場所に出くわしたら注意をする権限はある。

 どうしようかと考えたのは一瞬だけだった。折角隠れてきたのにここで目立ちたくは無いし、何よりアキトが嬉しそうに見ているからな。

 注意はしなくて良いかと考えていると、男たちは同時に口を開いた。 

「なあ、すごかったよな」
「ああ、すごかったよな」
「あの鎧」
「あの剣」

 同時にそう続けた二人は、大きく目を見開いたままお互いをまじまじと見つめている。

「俺は剣は見てなかったぞ」
「俺は鎧は見てなかったな」

 二人はまたしても同時にそう言い放った。あまりにも息が合っているなと驚きながら、アキトと俺は思わず目を見合わせた。

「待て待て、あの鎧すごかっただろ?領主様の装備してるあの鎧、性能がすごすぎて逆に笑えてくるぐらいの上質な物だっただろうが!」
「え?防具屋のお前がそこまで言うぐらいのものだったのか?」
「あれよりも領主様にふさわしい鎧は無いだろう!」

 なるほど、あっちの男は防具屋か。

「それなら腰に装備していたあの剣もすごかったぞ!あれは確実にダンジョン産だろうな。一度で良いから研がせて欲しいってぐらいの上物だ」
「なんだと…武器屋のお前が言うぐらいか?」
「あれよりも領主様にふさわしい剣は無いだろう!」

 それでこっちの男は武器屋らしい。

 その情報だけでも、あとでこの男たちの身元が特定できそうだな。
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