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1354.【ハル視点】屋台街から
普段から大勢の人で賑わっているウェルマ市場だが、今日はその普段と比べても明らかに人が多い。
今は朝食には遅く、昼食には早いという一番微妙な時間帯だ。ここまで混むような時間帯では無いんだが――理由はもちろん父さんたちの行進だ。
「なんか、混んでるね…?」
不思議そうなアキトに、俺はああと頷いた。
「ここからなら行進が見やすいから、知ってる人が集まってるんだ」
ほらと言いながら指差した方向に、アキトは素直に視線を向けた。
俺とアキトの視線の先には、たくさんの人が今まさに集まっている大通りが見えている。あそこにいるのは、行進が通るのをずっと待っている人たちだ。
たくさんの小型の屋台が並んでいるこの辺りには、周囲に大きな建物が存在していない。特に規則があるわけでも無いんだが、暗黙の了解というかどこも建てようとしないんだよな。
大通りからこの辺りの屋台街に向けて続いている道は、緩やかな登り坂になっているのも良い。傾斜のおかげで見通しが良いから、想像以上に大通りがよく見える。
穴場であるここに立ち止まっているのは、もちろん俺達だけじゃない。他の人たちも屋台や通行の邪魔にならない場所を選んでは、大通りの方を気にしている。
「何とか間に合ったみたいで良かったよ」
思わずそう呟けば、アキトはえっと驚いた顔をして俺を見上げてきた。
「最初からここが目的地だったの?」
「そうだよ。ここは意外にも見やすいからね」
「行進、ちゃんと見れるかな?」
「ああ。まだ通ってないみたいだから絶対に見れるよ」
間に合って良かったねと二人で笑い合いながら話していると、不意に大通りの方から領主様が来たぞーと叫ぶ大きな声が聞こえてきた。
その場にいた全員の視線がパッと大通りに向いた所で、数人向こうにいた女性が力強い声で叫び返した。かなり質の良い使い込んだ鎧を身に着けているから、おそらくは冒険者だろう。
「教えてくれたのは助かるよ!ありがとう!でも、来たぞじゃなくて来られたと言いなっ!領主様に失礼だろう!」
きちんとお礼の言葉を混ぜつつの文句に、周りのみんなが思わずといった様子で笑みを浮かべる。
そうだそうだと叫ぶ声、領主様はそんな事気にしねぇぞと笑う声、気にしなくても敬意を示せと叫ぶ声で一気に辺りは賑やかになった。
そんな事を気にしないという意見に、俺も同意だな。
「そうだな!俺が悪かった!領主様が来られたぞー!…これで良いかー?」
かなり距離はあるはずなんだが、最初に叫んだ男は大きな声でそう叫び返した。
「ああ、それで良いよー!」
さらにそう返した女性は、満足そうにうんうんと頷いた。
いきなり叫ぶから驚いたと周りから声をかけられたその女性は、ごめんねー知った声だったからさと笑って応えている。
なるほど。男の姿までは見えなかったが、おそらくあちらも冒険者で顔見知りだったりするんだろうな。
女性の周りの人たちも納得顔で笑っていて、雰囲気は悪くない。
あちこちから楽し気な会話や笑い声が聞こえてきていて、本当にみんなが行進を楽しみにしているのが伝わってくる。
そっと様子を伺ってみれば、アキトもワクワクした様子でじーっと大通りを見つめている。
無事に辿り着いて良かったなと噛み締めていると、次第に歓声が近づいてくる。大通りの辺りで待機している人たちが、口々に何かを叫ぶ声だ。
一番最初に見えたのは、行進の先頭を行く父さんの姿だった。
領主様だと叫ぶ声やぶんぶんと手を振る人たちに、父さんは薄っすらと笑みを浮かべて手を振り返している。領民たちが相手なら、父さんもあのぐらいの笑顔は見せられるんだよな。
そんな事を考えながら見守っているだけの俺とは違い、アキトは嬉しそうにぶんぶんと手を振っていた。
一瞬だけだが、父さんがこちらを見た気がした。いや、ばっちり視線が合っていたから、おそらくただの気のせいでは無いな。
おそらくだが、俺がどこからアキトに行進を見せるかと考えて、この辺りにいるかもと予想していたんだろう。
アキトが嬉しそうだったから文句は無いんだが。
父さんの姿が見えなくなると、今度は並んで馬を歩かせているファーガス兄さんとマティさんの姿が見えてくる。
ファーガス兄さんは表情こそあまり変わっていないが、歓声に優しく手を振り返している。その隣を行くマティさんは、美しい笑顔を浮かべて声かけに応えている。
「ファーガス様、格好良い!」
ファーガス兄さんにそう叫ぶ声は男女問わずなんだが、マティさんに対して美人だとか綺麗だとかそういう誉め言葉を叫ぶのは女性の声ばかりだ。
これもまあいつもの光景だな。
ファーガス兄さんの前で男性がマティさんを褒めると、思いっきり睨まれるからな。
女性から褒められるのは、マティさん本人が嬉しそうだからと邪魔しないだけで、きっちり嫉妬はしているらしいが。
それほど妬かれて面倒じゃないのかと思った事もあったが、マティさん本人はファーガス兄さんのそういう所も好きらしい。
何というか…お似合いの二人だな。
今は朝食には遅く、昼食には早いという一番微妙な時間帯だ。ここまで混むような時間帯では無いんだが――理由はもちろん父さんたちの行進だ。
「なんか、混んでるね…?」
不思議そうなアキトに、俺はああと頷いた。
「ここからなら行進が見やすいから、知ってる人が集まってるんだ」
ほらと言いながら指差した方向に、アキトは素直に視線を向けた。
俺とアキトの視線の先には、たくさんの人が今まさに集まっている大通りが見えている。あそこにいるのは、行進が通るのをずっと待っている人たちだ。
たくさんの小型の屋台が並んでいるこの辺りには、周囲に大きな建物が存在していない。特に規則があるわけでも無いんだが、暗黙の了解というかどこも建てようとしないんだよな。
大通りからこの辺りの屋台街に向けて続いている道は、緩やかな登り坂になっているのも良い。傾斜のおかげで見通しが良いから、想像以上に大通りがよく見える。
穴場であるここに立ち止まっているのは、もちろん俺達だけじゃない。他の人たちも屋台や通行の邪魔にならない場所を選んでは、大通りの方を気にしている。
「何とか間に合ったみたいで良かったよ」
思わずそう呟けば、アキトはえっと驚いた顔をして俺を見上げてきた。
「最初からここが目的地だったの?」
「そうだよ。ここは意外にも見やすいからね」
「行進、ちゃんと見れるかな?」
「ああ。まだ通ってないみたいだから絶対に見れるよ」
間に合って良かったねと二人で笑い合いながら話していると、不意に大通りの方から領主様が来たぞーと叫ぶ大きな声が聞こえてきた。
その場にいた全員の視線がパッと大通りに向いた所で、数人向こうにいた女性が力強い声で叫び返した。かなり質の良い使い込んだ鎧を身に着けているから、おそらくは冒険者だろう。
「教えてくれたのは助かるよ!ありがとう!でも、来たぞじゃなくて来られたと言いなっ!領主様に失礼だろう!」
きちんとお礼の言葉を混ぜつつの文句に、周りのみんなが思わずといった様子で笑みを浮かべる。
そうだそうだと叫ぶ声、領主様はそんな事気にしねぇぞと笑う声、気にしなくても敬意を示せと叫ぶ声で一気に辺りは賑やかになった。
そんな事を気にしないという意見に、俺も同意だな。
「そうだな!俺が悪かった!領主様が来られたぞー!…これで良いかー?」
かなり距離はあるはずなんだが、最初に叫んだ男は大きな声でそう叫び返した。
「ああ、それで良いよー!」
さらにそう返した女性は、満足そうにうんうんと頷いた。
いきなり叫ぶから驚いたと周りから声をかけられたその女性は、ごめんねー知った声だったからさと笑って応えている。
なるほど。男の姿までは見えなかったが、おそらくあちらも冒険者で顔見知りだったりするんだろうな。
女性の周りの人たちも納得顔で笑っていて、雰囲気は悪くない。
あちこちから楽し気な会話や笑い声が聞こえてきていて、本当にみんなが行進を楽しみにしているのが伝わってくる。
そっと様子を伺ってみれば、アキトもワクワクした様子でじーっと大通りを見つめている。
無事に辿り着いて良かったなと噛み締めていると、次第に歓声が近づいてくる。大通りの辺りで待機している人たちが、口々に何かを叫ぶ声だ。
一番最初に見えたのは、行進の先頭を行く父さんの姿だった。
領主様だと叫ぶ声やぶんぶんと手を振る人たちに、父さんは薄っすらと笑みを浮かべて手を振り返している。領民たちが相手なら、父さんもあのぐらいの笑顔は見せられるんだよな。
そんな事を考えながら見守っているだけの俺とは違い、アキトは嬉しそうにぶんぶんと手を振っていた。
一瞬だけだが、父さんがこちらを見た気がした。いや、ばっちり視線が合っていたから、おそらくただの気のせいでは無いな。
おそらくだが、俺がどこからアキトに行進を見せるかと考えて、この辺りにいるかもと予想していたんだろう。
アキトが嬉しそうだったから文句は無いんだが。
父さんの姿が見えなくなると、今度は並んで馬を歩かせているファーガス兄さんとマティさんの姿が見えてくる。
ファーガス兄さんは表情こそあまり変わっていないが、歓声に優しく手を振り返している。その隣を行くマティさんは、美しい笑顔を浮かべて声かけに応えている。
「ファーガス様、格好良い!」
ファーガス兄さんにそう叫ぶ声は男女問わずなんだが、マティさんに対して美人だとか綺麗だとかそういう誉め言葉を叫ぶのは女性の声ばかりだ。
これもまあいつもの光景だな。
ファーガス兄さんの前で男性がマティさんを褒めると、思いっきり睨まれるからな。
女性から褒められるのは、マティさん本人が嬉しそうだからと邪魔しないだけで、きっちり嫉妬はしているらしいが。
それほど妬かれて面倒じゃないのかと思った事もあったが、マティさん本人はファーガス兄さんのそういう所も好きらしい。
何というか…お似合いの二人だな。
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