生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1355.【ハル視点】騎士達の行進

 ファーガス兄さんとマティさんが通り過ぎると、今度は行進に参加している騎士たちが登場する。

 父さんとファーガス兄さん、マティさんへの反応は、基本的に格好良いとか綺麗だとかの褒め言葉が多い。あとは近くで見れた事が嬉しいんだろうなと伝わってくるような、分かりやすい歓声も多いか。

 それと比べて騎士たちに向かってかけられる声は、すこしだけ方向性が違っている。

「今回も頼りにしてるぞ!」
「街のためにも思いっきり腕を磨いてきてくれー!」
「遠征を楽しんできてくれよ!」
「領主様たちを頼んだぞー」

 大通りに集まっている人たちは、口々にそう声をかけている。

 何故か騎士相手となると誉め言葉や歓声ではなく、自然と鼓舞や応援の声が多くなるんだよな。

 まあ行進に参加している騎士たちは、それを領民たちからのの期待の現れだと思って受け取っているから、あれはあれで気が引き締まるんだが。

 大通りを進む騎士たちは、領主城を出発した時と変わらずに堂々と胸を張ったまま行進を続けている。だが周りの声に、一切の反応をしないわけでは無い。

 特に反応を返してはいけないなんて、くだらない規則も無いからな。

「遠征、頑張ってくださーい!」
「ありがとうございます!頑張ります!」

 かけられた声に、普通に返事を返す騎士。

「こっちにも手を振ってくれー!」
「見送りありがとうございます!」

 声をかけてきた人に向かって、笑顔で手を振る騎士。

「こ、これもらってください!お守りです」
「良いんですか?ありがとうございます」

 差し出された花や木彫りのお守りを、腕を伸ばして大事そうに受け取る騎士。

 それぞれが自由に行動してはいるが、それでも隊列だけは一切乱れない。

 途中でポツリとすごいねと呟いたアキトは、キラキラした目で楽しそうに行進を見つめていた。

 最後の騎士が通り過ぎると、周囲の人たちは一斉にふうーと息を吐いた。

 無意識のうちに力が入っていたんだろうな。アキトも同じタイミングで、ふうと息を吐いていたのが何だか微笑ましかった。

 アキトが落ち着くのを少しだけ待ってから、俺はそっと声をかける。

「アキト、どうだった?」
「参加している人はみんなすっごく格好良かったし、あの歓声にも動じない馬たちもすごかった!見れて良かったよ!ありがとう、ハル」
「そこでウマの感想まで出てくるのが、アキトらしいな」

 きっとアキトならそう言うだろうなとある程度予想はしていたんだが、予想が外れなかったことが嬉しい。

 クスクスと笑いながら、俺はアキトの手をそっと握りなおした。

「行こうか?」
「うん、行こう」

 行進はちゃんと見れたから、後は出発式にさえ遅れなければ良い。

「時間は大丈夫そう?」
「ああ、ここから先はさらに人が増えるから、まだまだ時間の余裕はあるよ」

 人が増えた分、父さんたちが大門前に着くのは確実に遅くなる。その分俺達の時間は増えるという事だ。

 俺達は手を繋いだまま、ゆっくりと市場の中を歩き出した。

 行進が通り過ぎるまではあんなに大勢の人がいたのに、今はもうかなり人が減っている。見物していた領民たちは、既にそれぞれの目的地へと散っていった後のようだ。

「この前の遠征の時も、こんな感じだったの?」

 すっかり歩きやすくなった市場の中をゆっくりと移動していると、不意にアキトがそう尋ねてきた。この前の遠征というのは、アキトとキースを助けに行った時の事だろうな。

「ああ、そうだよ」

 その行進には俺も参加してたよ――とは、さすがにここでは口に出す事はできなかったんだが、アキトはすぐに察してくれた。

「俺も見たかったなー」

 あの時は攫われてしまった二人の事で頭がいっぱいだったから、行進中の事なんて正直に言えば全く覚えていない。

 こうして無事に帰ってきてくれて、本当に良かった。噛み締めるようにそんな事を考えていると、不意に知らない声がアキトに答えた。

「なんだ、兄ちゃんは前回のは見逃したのか?」

 真横にある屋台に店員の男がいたのには気づいていたが、まさかこうして会話に入ってくるは思っていなかったな。

 そんな事を考えながら振り返った俺は、声をかけてきた男のあまりにも予想外の恰好に驚いて思わず黙り込んでしまった。

「……あ、はい。見逃しました」

 アキトも絶対に驚いていると思うんだが、何とかそう答えを返してみせた。すごいな、アキト。

「そいつは残念だったなー!だが今回は前回いなかった領主様も参加されているからな。今日のが見れて良かったと思う方が良いぞ」

 男の声には、アキトへの気づかいが溢れていた。なるほど、見逃したと嘆いているアキトを慰めるためだけに、さっき声をかけてきたのか。

 良い人じゃないか―――服装はともかく。
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