生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1362.大門の向こう側

 ようやく見えてきた大門は今日も大きく開かれたままだったんだけど、その前にはまるでバリケードみたいに衛兵さんたちがずらりと並んでいた。

 今の時間帯にこの門から出れるのは、出発式に参加する人かあとは見送りの人だけって言ってたもんね。

 うーん。それにしても、並んでいる衛兵さんたちの威圧感がすごいな。

 辺境領の衛兵さんたちって、普段は普通に笑顔を見せてくれるし、目が合ったりしたら手を振りながら見送ってくれたりもするんだ。

 ハルに聞いた話だと、衛兵は任務中は感情を一切見せてはいけない――なんて規則のある領もあるらしいよ。そういう所だと、笑顔はもちろんだけど怒った顔を見せたりするのも、罰則の対象になるんだって。厳しいよね。

 まあ辺境領は、特にそういう規則も無いらしいけどね。だからあんな風にいつも親し気にしてくれるんだろうけど。

 でもそんな衛兵さんたちも、今は真剣な表情をして並んでる。勝手に通ろうとする人を警戒しているのか、その視線はかなり鋭い。

「行くよ、アキト」
「…うん」

 行かないという選択肢は無いからね。周りに手を振りつつ進んでいくハルと一緒に、道をまっすぐ進んでいく。

 ある程度の距離まで近づくと、その場にいた全員がバッとこちらを見た。

 見送りに来ている領民さんたちに見られるのとは段違いの圧力に、俺は思わずビクッと体を揺らした。

 その場で立ち止まりたいぐらいの動揺だったけど、ハルは無造作にスタスタと近づいていくんだよね。当然、手を繋いでいる俺も連れて行かれるんだ。

 衛兵さんたちのすこし手前まで辿り着いたハルは、その場でぴたりと立ち止まった。すっと一人だけ前に出てきた衛兵さんは、多分隊長とかの役職持ちなんだろうな。

「出発式に参加するために来た。俺は遠征の参加者で、こちらは俺の伴侶候補だ」

 さらりとそう説明したハルに、衛兵さんはお待ちしておりましたと答えるとすぐに道を開けてくれた。

 これだけの厳戒態勢だから、もっとちゃんと身分確認とかをされるんだろうなと思ってちょっと緊張してたんだ。でも俺が想像してたよりも、意外と簡単に通してくれたな。

「遠征頑張ってくれー!」
「気をつけてなー!」
「無事に帰ってきてくださーい!」

 そんな背後からの歓声に背中を押される形で、俺達は二人揃って無事に大門を通り抜けた。

「何か…思ってたよりもあっさり通してくれたね」
「そうだね。まあ顔と名前を知られていない若手の騎士とかは、かなり丁寧に確認されるんだけどね」

 ああ、なるほど。ハルの顔と名前を知ってるから、あんなにあっさり通して貰えたのか。

 まあ、それはそうだよね。だってハルは領主様一家の一員なんだから。俺は多分ハルが伴侶候補だって言ったから、あんなにあっさり通して貰えたんだろうな。

 そんな事を考えながら街の外へと出ていくと、そこには既にたくさんの人たちが集まっていた。

 ケイリーさんたちの行進が始まるよりも前に大門に向かって出発していた騎士さんたちは、大門近くの右側に集まっているみたいだ。でもまだ特に整列とかはしていなくて、普通に談笑中みたいだ。

 視線を中央にずらせば、目に飛び込んでくるのは、たくさんの馬たちとその世話をしている人たちの姿だ。どうやら衛兵隊の馬とその世話係の人たちも混ざっているみたいで、見覚えの無い馬もたくさんいるね。

 最近は魔力をあげるために毎日シュリくんに会いに行ってるから、領主城の馬の事はだいぶ覚えてきたんだよね。

 大門の左側に集まっているのは、揃いの制服の上に防具を重ねている衛兵さんたちだ。

 こちらはどうやら思い思いに過ごしているみたいで、話し込んでいる人もいれば、武器を構えて訓練をしている人、街道を行ったり来たりして走り込みをしている人までいるみたいだ。ちょっとの待機時間も無駄にしないとか、すごいな。尊敬する。

 ふと、一人の衛兵さんがこちらを向いているのに気が付いた。

「あ、ハルのお師匠さんもいるね」
「ああ、きっと師匠も参加するんだろうな」

 いるとは思ってたよと笑ったハルは、こちらに気づいたお師匠さんにゆるりと手を振った。俺も一緒になって手を振ったんだけど、楽し気に手を振り返してくれたよ。

「あ、アキトくんだー!」

 そんな呼びかけに、俺はハッと顔をあげた。

 遠くから駆け寄ってくるのは、嬉しそうな笑顔のキースくんだった。
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