生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1363.キースくんと一緒に

 結構な距離があったと思うんだけど、キースくんはたたたーっとこちらに向かって一直線に駆け寄ってきた。さすがウェルマール一家の一員だなって思うぐらいの、すごい速度だったよ。

 息も切らさずにこちらに近づいてきたキースくんは、俺の後ろに立っているハルに気付くと、パァァッとさらに嬉しそうな笑顔になった。

「あー、ハル兄もいる!」
「ああ、いるよ。…なんでだ?」

 不思議そうにそう返したハルに、キースくんはごめんね変な意味じゃないんだよと慌てて続けた。
 
「参加者さんたちはあっちの方に集まってるから、ここにいるのはアキトくんだけだと思ってたんだ」

 そう言われて周りを見てみれば、確かにこの辺りにいるのは軍服でも無ければ武器や防具も身につけていない人が多い。

 たぶんこの辺りには見送りに来た伴侶や伴侶候補、または家族が集まってるんだと思う。

「なるほど、そういう意味か。俺もあちらに行かないと駄目だが、アキトと一緒にたった今着いた所だからな」

 優しく笑って答えたハルに、キースくんはそうなんだーと言いながらニコニコと笑っている。嬉しすぎて我慢できないと言わんばかりに、その場でぴょんぴょんと小さく飛び跳ねているのが、すごく微笑ましいし可愛らしい。

 会えて嬉しいって、全身を使って伝えてくれてる感じなんだよね。

 周りの人たちも微笑ましそうにキースくんを見てるもんな。分かるよ、すごく癒されるもんね。

 俺なんて思わずそっと手を伸ばして、頭を撫でちゃったよね。キースくんは嫌がるでも照れるでも無く、ただ嬉しそうに目を細めてされるがままになってくれた。

 うん、今日もキースくんは可愛いな。

「そういえば、キースくんは行進は見ずに先に来てたんだね?」
「うん、そうなんだ。僕も…できれば行進は見たかったんだけどね」

 少し悔しそうな表情になったキースくんによると、行進が始まってしまってからだと人が増えるからまだこどものキースくんには危険だって言われたんだって。

 表情は明らかに悔しそうなのに、そう言われたからって諦めたんだからキースくんは偉いよね。俺がキースくんぐらいの年齢だったら、嫌だー見るーって駄々をこねたかもしれない。

「キースくんは我慢できてえらいね」
「え…?そ、そうかな?」

 まさか褒められるとは思っていなかったのか、キースくんはきょとんとこちらを見てから照れくさそうに笑った。

「ウィル兄とジルさんと来たのか?」
「ううん、二人は準備があるからって大急ぎで大門に向かったから一緒には来れなかったんだ」
「じゃあここまでは、誰と一緒に来たの?」

 キースくんもハルみたいに道案内は得意だけど、さすがにキースくん一人で行かせるなんて事は無いと思うんだ。護衛の人とかが一緒だったのかなと思って尋ねてみれば、キースくんはあっさりと答えてくれた。

「えっとね、使用人のみんなと一緒に来たんだ」

 あれ、そういえば使用人の人たちは、さっき見た時はいなかったような?

 そう思って周りをよくよく観察してみれば、騎士さんたちが集まっている所に何人か見慣れた顔の使用人さんの姿があった。

 服が軍服だから混ざってしまうと分かり難いんだな。

「そうか、それなら安心だな」
「うん、みんなのお勧めのお店とか教えてもらったんだ」

 キースくんは楽しそうに、本屋さんとお菓子のお店、あと屋台も教えてもらったよと報告してくれた。

「くわしい話しを聞きたい所だけど、そろそろ行かないと駄目そうだな」

 ハルがそう口にした瞬間、大門の方から爆発でも起きたのかと思うぐらいの大歓声が聞こえてきた。

 どうやらケイリーさんたちの行進が、徐々に大門に近づいてきているみたいだ。

「遠征が終わったら話すね」
「ああ、そうしてくれ」

 ニコッと笑って歩きだそうとしたハルを、咄嗟に呼び止めた。

「あ、ハル!出発式が終わってからも…少しぐらいは話せるの?」

 もしもう話す時間は無いって言われたら、気を付けて行ってきてねと言いたいからね。

「ああ、見送りの人たちに挨拶をするための時間があるから」
「そっか。それじゃあキースくんと一緒に待ってるね」
「そうしてくれ」
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