生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1364.整列

「それじゃあ、ちょっと行ってくるね」

 穏やかに微笑みながらそう告げたハルに、俺とキースくんも笑顔で答える。

「うん、いってらっしゃい」
「いってらっしゃい、ハル兄」
「ああ、いってきます」

 まだ出発前に時間があるって教えてもらったから、かなりあっさりめなお別れの挨拶だ。まあ離れていくハルの背中は、キースくんと二人で手を振って見送ったんだけどね。見えないのは分かってるんだけど、何となくだ。

 ふと周りを見回してみると、動き出したのはハルだけじゃなかった。

 気づけば、他の人たちもみんなぞろぞろと移動し始めてたんだよね。

 ギリギリまで見送りの人と過ごしていた人たちも、座り込んでくつろいでいた人たちも、立ち話を楽しんでいた人たちも、みんな一斉に動き出したんだ。

 しかも特に集まれとかの号令があったわけでも無いんだから、本当にすごいよね。

 たぶんあの少しずつ近づいてくる歓声で、行進との距離を測ってるんだろうな。ハルにはできるだろうなとは思うけど、俺にはできない技だと思う。それをみんなやってるんだからすごいな。

「みんな、すごいね」

 思わずぽつりとそう呟いた俺に、キースくんはうんうんと何度も頷いて同意してくれた。

「すごいし、格好良いよね!」

 騎士も衛兵も使用人もみんな格好良いと頬を紅潮させて語るキースくんに、俺たちの周囲にいた見送りの人たちもニコニコ笑顔だ。

 うん、その気もちは分かるよ。キースくん可愛いもんね。

 あれこれと感想を言い合いながら人の動きを見守っていると、移動していた人たちは全員が大門の前に集まっていた。大門に向かって顔を向けて並ぶ形だ。

 集合はできたみたいだけど、あそこから一体どうなるんだろう。

 そう思って見つめていると、すぐに動き出した人たちは綺麗に整列し始めた。騎士は騎士、衛兵は衛兵、使用人は使用人と分かれているみたいなんだけど、所属も違う人たちがあんなに大勢集まっているのに、あんなに一瞬で並べるものなんだね。

 感心を通り越して、感動してきちゃったよ。

「あ、アキトくん、一番前にウィル兄とジルさんがいるよ」
「え?…あ、本当だね」

 整列している一番前の所に、二人だけ飛び出して並んでいる。

「あれ、でもハル兄がいないね?」

 不思議そうにぽつりとキースくんが呟いたのを聞いて、俺は視線だけでハルを探してみた。

 本当に不思議なんだけど、何故かハルだけはすぐに視界に飛び込んでくるんだよね。それだけ俺の中で特別だからなのか…それともハルが格好良すぎるからかな。

 あっさりと発見した自分に苦笑しながら、俺はキースくんに声をかけた。

「キースくん、あそこ。馬の世話係の人たちが集まってる辺りのすこし前の騎士さんたちが並んでる所にハルがいるよ」
「え…あ、本当だ!いた!」

 よく発見できたね、アキトくんすごいと手放しで褒めてくれるキースくんに、俺は笑いながら褒めてくれてありがとうと答えた。



 行進が近づいて来ると、その分歓声もどんどん大きくなってくる。ついに俺達がいる所からもケイリーさんとファーガスさん、マチルダさんの姿が見えてきた。

 そのまま大門を通って出てくるのかと思ってたんだけど、大門を通りぬける寸前で一団はぴたりと足を止めた。

 え?と思う間もなく、ファーガスさんとマチルダさんがゆっくりと大門をくぐる。続いてその後ろを進んでいた騎士たちも、どんどん大門をくぐってこちらへとやってくる。

 立ち止まったままで動かないケイリーさんを、器用に馬に乗ったまま避けながらだ。

 ケイリーさん以外の全員が大門をくぐり終えると、ケイリーさんはバッと馬ごと後ろを振り返った。

 途端に一際大きな歓声が沸き起こる。

「領主様ー!」
「ケイリー様ー!」
「格好良いー!」

 きちんと聞き分ける事はできないけど、きっとそんな声が何重にも重なっているんだろうな。

 ケイリーさんはそんな見送りの人たちをぐるりと見回してから、すうと大きく息を吸った。

「温かい見送りに感謝を!私たちは少しの間、遠征のために街を出る!」

 そう宣言したケイリーさんは、そこでニヤリと笑みを浮かべた。

「街の事は頼んだぞ!」
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