生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1365.出発式

 野性味あふれる笑顔と共に告げられたケイリーさんの言葉に、たぶん今日一番だろうなと思うような爆発的な歓声が沸き起こった。

 キャーキャーと叫んでいるみんなの声の圧だけで、建物や大門までビリビリと振動しているように感じるぐらいの大騒ぎだ。

「か、かっこいいーっ!」

 隣にいたキースくんも、思わずといった様子で力いっぱいそう叫んでいた。

「かっこいいねー!」

 もちろん俺も、キースくんと一緒になって叫んだよ。

 歓声が落ち着いてきても、キースくんはたまらない気持ちなのか、その場で何度もぴょんぴょんと飛び跳ねている。

 今気づいたんだけど、キースくんが飛び跳ねるようになったのってもしかしてシュリくんがよく飛び跳ねてるから――なのかな?

 仲良しだから仕草がうつっちゃった?そう考えると、更に可愛く見えてしまったよね。



 まだ興奮冷めやらない見送りの人たちへとケイリーさんが手を振っている間に、行進に参加していた人たちはひらりと馬から飛び降りて列を作り始めていた。

 騎士さんたちは馬と一緒に列の端に整列していて、ファーガスさんとマチルダさんは並んで列の一番前へと立った。

 ハルも見たいし、ファーガスさんとマチルダさんも見たいし、綺麗に並んでいる馬も見たい。目が足りないよねなんて考えながら、俺は周囲をきょろきょろと見回していた。

 きちんと列が出来た所で、ケイリーさんはくるりと馬の向きを変えた。騎乗したまま大門をくぐると、ゆっくりと近づいてくる。

 集まっている人たち全員からまじまじと見つめられている状況なんだけど、ケイリーさんは視線を気にした様子も無く軽々と馬から飛び降りてみせた。

 あれだけ注目されてたら俺なら降りるのも失敗しそうなんだけど、さすがケイリーさんだな。人前に立つのに慣れてるというか、余裕があるのが分かる。

 堂々とみんなの前に立ったケイリーさんは、その場に並んでいる全員をぐるりと見回した。ただそれだけの動きで、その場の空気がピリッと引き締まったのが分かった。

 張り詰めた空気の中、最初に動いたのはファーガスさんだった。

「これより、本日の出発式を開始する!」
「一同、敬礼!」

 マチルダさんがそう声を張ると、その場に並んでいる全員が一斉に礼を取った。

 ぴったり揃った敬礼はやっぱりすごくて圧倒されちゃうんだけど、それ以上にハルの敬礼姿が格好良すぎるんだよね。

 俺の目は、ずっとハルに釘付けだったよ。

「本日より、我々は遠征へと向かう。その期間の領主代行にはマチルダ・ウェルマールを、その補佐役にはジル・ウェルマールを任命する」

 ケイリーさんからの言葉に、マチルダさんとジルさんは謹んでお受けしますと声を揃えた。多分事前に決まっていたやりとりなんだろうな。

 大門の向こう側からは、マチルダさんなら安心だとか、ジルさんなら頼りになるとかそういう好意的な声がちらほらと聞こえてきている。

 二人とも領民さんたちからも信頼されてるんだなと、何だか嬉しくなってしまう。

「今回の遠征の目的は個々の能力の向上と、組織の枠を超えた連携を取れるようにする事だ」

 出発式の進行役はどうやらファーガスさんらしい。いつもなら執事長のボルトさんがやってくれてるけど、今日はここにはいないもんね。

「そのために今回の遠征部隊には、騎士と衛兵、それに領主城の使用人も参加している。現地では、さらに数組の冒険者とも合流する予定だ」

 ファーガスさんの言葉に、俺はなるほどと頷いた。

 さっきから、冒険者の人たちがいないような?って気になってたんだよね。冒険者は現地で集合なのか。

 自分も冒険者だけど…騎士さんたちと並んで整列してる冒険者の姿なんて想像できないもんな。冒険者は自由だから、綺麗に整列とかは苦手だと思う。

 遅刻じゃなくて良かったななんて考えていると、ファーガスさんが口を開いた。

「続いて、我らが領主、ケイリー・ウェルマールから一言いただこう」

 その場にいる全員の目が、ぱっとケイリーさんに集まった。 

「急な遠征の要請だったが、こうして集まってくれた事に感謝する。ファーガス騎士団団長も言っていたが、今回の目的はそれそれの能力の向上と、組織の枠を超えた連携の確立だ」

 そう言いながら、ケイリーさんは並んでいる人たちの顔を順番に見つめてから口を開いた。

「我々の剣は、我々の盾は、我々の弓矢は、我々の魔法は――!」

 徐々に大きくなっていく声に、周囲はしんと静まり返った。

「心優しい領民たちを守り!襲い来る魔物たちを狩り!悪意を持つ者どもを倒すためにある!今回の遠征を通じて更に己を鍛え上げ、更なる高みを目指せ!」

 俺に向かって言われてるわけじゃないって分かってるのに、それでもどんどん気分が高揚していくのが分かる。

「我が領の誇るべき精鋭たちよ!」
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